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海外の記憶 ドバイ首長国

ドバイに出張したのは2008年の11月、リーマンショックのあとドバイやアラブ産油国の経済状況がどうなり、それが世界経済にどんな影響を与えるかを肌で感じる為の出張でした。ドバイ国際空港はエミレーツ航空の飛行機がずらっと並んでいて空港施設も彼らの為にあるように見えます。まだリーマンショックはエミレーツ航空に大きな影響を及ぼしてはいませんでしたが、それでもスリランカ航空の株式を売却するなど経営改革には手をつけざるを得ない状況でした。

2008年当時、ドバイの街はまだ建設ラッシュが続いていてちょうど世界最大のショッピングモールは完成したばかりでした。そこにはブランド店はもとより、水族館があり、アイスホッケーリンクまで備えた本当に巨大なモールでした。

アイスリンクをこの国で維持する為には普通の国の倍は電気代が掛かりそうです。

今ではドバイの象徴とも言えるブルジュ・ハリファもまだ建設中で、この時点ではブルジュ・ドバイと呼ばれていました。このビルを作ったのはエマールという政府系不動産会社でショッピングモールもこの会社が作ったものでした。この頃にはビルの高さが600メートルを超え、すでに世界一の高さになっていましたが、最終的には808メートルとなる予定でした。ただリーマンショック後には完成は高級化を目指す為、翌2009年まで延期されると発表されていました。その後、確かにアルマーニが住居部分の販売エージェントとなり、下層階にはアルマーニ・ホテルがオープンすることなど高級化路線が実現しています。しかし、実態は資金繰りが厳しくなっていて、翌年に同じく政府系不動産会社であるナキールが債務返済猶予を求めたことから起こったドバイ・ショックの影響で完全に行き詰まり、最終的にはアブダビからの資金援助で何とか完成しました。その為、ビルの名前もブルジュ・ドバイからアブダビ首長の名前をとってブルジュ・ハリファに変えられてしまいました。

我々の泊まったホテルはこんな感じでデズニーランドにでも来たようです。

そして辺りには多くのクレーンがビルの上に取り残されたまま工事が中断していました。

ドバイは1830年にアブダビのマクトゥーム家が移り住んで来たことから始まり、その後アブダビなどと一緒にイギリスの保護国となり、東インド会社への貿易中継地として成長します。他には真珠採取や漁業などの産業がある程度でしたが、1966年に海底油田が発見されたことでマクトゥーム家は社会資本の充実を図り、ドバイ港の浚渫などを行います。

ドバイが他の産油国と違うのは産油量が少なかったこともありますが、貿易中継地としての役割を重視し、他の国からの資本取り入れにも力を入れ、中東の金融センターになったことです。今では石油産業はGDPのたった2%に過ぎないのです。

他の国からは金だけでなく、人にも集まってもらうことに注力した結果、このような奇抜なビルもたくさん建てられました。上のツインビルはエミレーツ航空のビルです。

ただ中東の金融センターとして発展し、不動産ビジネスに過剰な投資を続けた結果、リーマンショックで負の部分が一気に表面化してしまいました。

工事は資金の枯渇とともに一気に止まってしまいます。

ドバイの不動産会社はこんな砂漠に我々を連れて行き、次はこの辺りを大きなコンテナヤードにすると自慢げに話すのです。この人たちは悲観するということを知らないのかとびっくりするばかりでした。

ドバイのもう一つの魅力は砂浜ということになっています。美しい砂浜を利用した別荘ビジネスも盛んでした。下の写真では砂浜の向こうに最高級ホテルのブルジュ・アル・アラブ・ジュメイラが遠くに見えます。

下のヤシの木のような別荘地はパーム・ジュメイラと呼ばれる人工島で債務返済猶予をしたナキールが使ったものです。ヤシの木のまわりにはリングがありますが、ヤシの木の先端の向こう側のリング中央にアトランティス・ザ・パームというホテルがあります。小さすぎて見えないですが、実はこのホテルはとても巨大なのです。全部でホテルは100以上、別荘は1400以上あり、別荘にはそれぞれ自分のクルーザーが停泊出来るようになっています。サッカーのベッカムも持っていると宣伝していましたが、多分、CM代でもらったものだと言われていました。

このパーム・ジュメイラの隣の海域にはザ・ワールドという世界地図を描いたような人工島が建設中で、6割は売却済みと言っていましたが、今はどれだけ売れたのでしょうか。

下の写真はヤシの木の芯の部分を走るモノレールで、このモノレールはヤシの木の先端からアトランティスホテルまで繋がっているのです。

そしてこれが豆粒大にしか見えなかったアトランティス・ザ・パームです。そういえばこのアトランティスホテルはバハマにもありました。形も一緒ですね。

理想的なリゾートのように設計された砂浜も含め全て人工島です。

ホテルのロビーにはこんな水族館があります。いや水族館というのは正確ではないです。この水槽はロビーそのものにあるのですから。

海に沈んだと言われる古代都市アトランティスが水槽の中に再現されているのがおわかりでしょか。

とにかくやることが日本人の感覚では全く理解出来ないくらい壮大なのです。自分で国そのものを作ってしまったマクトゥーム家が主導しているからこそ出来ることなのかも知れません。

ドバイは砂漠の国ですが、ゴルフ場もしっかり出来ていました。芝生を緑に保つ為には常に水が必要で、水路がいたるところにありました。

ドバイはUAE/アラブ首長国連邦の一員であり、自由諸国との窓口としての重要性は連邦の主導国であるアブダビもよく理解して決してドバイを見放しはしませんが、ドバイがどこまで飛び跳ねるのかは不明です。パーム・ジュメイラに次ぐザ・ワールドが完成した今、ザ・ユニバースという太陽系・銀河系を表す人工島が計画されているようなので、まだまだドバイの夢・真夏の夜の夢は続いて行くようです。


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