小説『Feel Flows』⑪
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(十一)
Mからの電話に出た。
声をなるべく高く出して応答しようと思った。今の状態で自然に声を出せば、落ち込んだ低い声に聞こえてしまうと思った。なるべく、心配をかけたくなかった。
「もしもし。ごめんね。電話してもらっちゃって!」
「全然いいよ。
で、何があったの?
今話したくなければ、また話せるときでいいよ。実はこっちも話したいことあったから、その話をすることにしてもOKと思って電話したんだ」
Mもいつもの通りの明るい声だった。そのことが、妙に優しさを強調させた。
きっと、僕は声の高さなんて気にする必要はなかった。
たとえ僕の声がどんなに落ち込んだ声に聞こえても、Mはそれだけで結論を見出すひとではない。このひとは、僕の話を最後まで聞いてくれるひとだ。僕に示されたこの複雑なあやとりを解く一手目一緒に考えてくれるはずだ。
そんな風に思って、僕は自分の身に起きていることを順を追ってすべてを話した。なるべく、主観は入れないようにした。正しい解決方法を考えるにあたり、主観はきっと邪魔なものになると思った。
とはいえ、今回僕の身に起こった事は、自分が生きる上での最優先事項と表現しても過言とは思えないことに関係している。
きっと、どんなに努めたとしても主観が混じっていたのではと思う。それは気にしていられなかった。
恥ずかしくなるほど自分では自分が、よくみえていない。
この"自分で自分のことがよくわかっていない"ことが今回のことの原因につながっているのかもしれない。そして、だからこそ僕は友人と思うMに相談したいと思った。その経緯を反芻していた。
話し終えたあと、Mは次のように返事をくれた。
「うん、状況がよくわかったよ。つらいよね。
で、もしも完全には前の通りにはならなくても、今よりも少し前進することができるなら、それってどう思うかな。
そうする方法があるなら、やってみたいと思わない?」
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