小説『Feel Flows』⑫

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(十二)
Mが続ける。
「少し厳しく聞こえるかもしれない意見と、普通の意見どっちが聞きたい?」

僕は、
「厳しい方をお願い」と答えた。きっと、解決の核心に触れる方を厳しい意見と表現してくれていると思ったから。

「OK。じゃあ、そうだな。
もしも、今話してくれた話を逆に私から君に言っていた話だったとしたとしよう。君は私にどうアドバイスする?」

ハッとした。
そうか、自分のことは自分では見えにくい。でも、他人のことであるかと思えば見えてくるものがあるかもしれない。

「そうだね、もしMがそうなっていたとしたとして、その悩みを本気で解決したいと相談されたら。
うーん。
悩みの中心になっているところに踏み込んで、なぜそうなってしまったかを確かめてもらう。
もしかしたらこの悩みはMが思っているだけで、本当は悩むことじゃないかもしれないし」

「そう、そうだよ!
私もおんなじことを考えてた。じゃあ、そのアドバイスに従ってこのあと君ができることってどんなこと?」

「この状況が本当に起こっていることなのかの事実を確認する。もしかしたら、僕の思い込みで悩んでるだけかもしれないからね」

「うんうん」

Mはそう言って少し黙った。もしかしたら、その先の言葉も僕が言うのを待ってくれていたのかもしれない。
だけど、僕にはそれ以上のことをいうのをためらってしまい、少しの間沈黙の時間が流れた。
なぜなら、何をすべきかはわかっていても、どうやってそれをやればよいかが思い浮かばなかったためだ。

静寂を破ることが申し訳ないと思っているかのように、ゆっくりとした口調でMが続けた。

「私だったら、こうするかなぁ?
相手に、直接確認してみる。どう?」

うん。そうだ。それしかないのかも。
そのひとと間でのことは、そのひとのいないところでは解決はしない。
ただ、それをどうやって行うのかが大切ではとも思った。

場合によってはそうすることで状況が悪化するかもしれない。アプローチをすること自体が許されていないのかもしれない、という不安があるのだ。

「もしかして、連絡はもうしちゃいけないって言われた?それなら、今のは違うかもしれない」

「いや、言われてはいないよ」

「うんうん。じゃあ、言われてはいないけど、その可能性はあるかもしれないと思っているわけだよね。それなら、そう思ってるかどうかを確かめるアプローチにしたらよいのかも?」

まるで僕の心を読んでいるかのように、周到に進められるMの提案。
正直なところ、解決に向かうにはその方法しかない気がしていた。

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