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8万円の航空券がただの紙切れになった日

スペイン・バルセロナに滞在していた時。

ちょっとくせのある関西出身のおじちゃんが営む宿に泊まっていた。

手料理をたくさん振る舞っていただき、久しぶりの炊きたての白米に心安らいだ記憶がある。

本場スペインのパエリアも堪能し、日本のパエリアとは比べ物にならないほどオイリーでおいしかった。

外出先でスペイン料理をたらふく食べ、宿ではおじちゃんの手料理を食べるという、胃袋がはちきれそうな数日間を過ごした。


バルセロナの次なる目的地はペルー。

ペルー・リマ行きのチケットを事前に買っていた。

旅をした中で、もっとも高額となった航空券。

8万円弱もした。



バルセロナ滞在、最終日。

余裕を持って宿を出たつもりだった。

空港に到着すると、予約していたフライトの搭乗時刻は過ぎている。

なんとか、飛行機に乗れないか窓口にたずねたが、ダメだという返答しか帰ってこない。

あっけにとられた。

8万円もしたのに。

これが1万円もしなかったら、あきらめがついただろう。

しかし、今回は旅一で最も高額な航空券。

1か月分の食費よりも高い。

家賃よりも高い。

スタジオで57回分もドラムの練習ができる金額。

一生分のドラムスティックが買える金額。


心底落胆した。

もう、別の航空券を買うしかなかった。


当日のペルー行きの飛行機はもうない。

なくなく翌日のフライトを窓口で購入。

チケット代10万円。

1回の飛行機代で約1か月分の給料分を使ってしまった。

考えても仕方ないお金の計算をしている場合ではない。

旅をする気力もすっかり失せていた。

想定外の出来事にバルセロナ滞在が一日伸びた。

宿を探す気にもなれない。

友達はというと、おじちゃんの宿に引き返すと言い出し、空港をあとにした。

どこに行く気にもなれず、私は一人空港にとどまることに。

ベンチに座り行きかう人々をただただ観察した。

たまにぶらぶら歩いてみたり。


半日以上空港にいただろうか。

夜も空港の硬いベンチで過ごした。

荷物のことも心配だし、リラックスして入眠できるはずがない。

こういう時、持ち前の忍耐強さが発揮される。

ただただ目を閉じ、硬いベンチの上に寝そべる。

じっとしていられないタイプの友達とは正反対。

同じ場所にずっといられるタイプだ。

しかしながら、やっぱり宿に戻ればよかったと、後悔の念がめぐっていた。

ちゃんとしたベッドで休みたかった。


翌日。

おじちゃん手作りのカレーを持参した友達が空港にやってきた。

一日ぶりの再会。

タッパーに入ったカレーを差し出され、その場でほうばる。

冷めたカレーだったけれど、あたたかく胃袋に染みた。

バルセロナの思い出の味。

最後の最後までおじちゃんの手料理にお世話になったなと。


無事、ペルー行きの飛行機に乗り、リマに到着したころ、おじちゃんからメールが届いていた。

「乗り遅れは精神的にも予讃的にも可成りな痛手ですが考えようによってはいい経験。

出張旅行でなし命ある限り希望と勇気さえ失くさなければ旅=人生何とかなると。

何時か微笑みをもって振り返れますように!

Os deseo a vosotros Buen viaje ! 」



おじちゃん、まだバルセロナにいるのだろうか。


あの時は、すごく落ち込んで旅どころではなかったけれど、おじちゃんの言葉とカレーに救われたよ。

そう伝えたい。

当時、完成まであと10年だったサグラダファミリア
完成まであと10年だったサグラダファミリアの中


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