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過去12シーズンの順位からJ2順位のジンクスを探る

 こんにちは、キリーです。今回はタイトルにある通り、J2が22チーム制になってからの12シーズン分の成績から24シーズンに通ずるジンクスを探っていきます。頑張って12シーズン分のデータ収集したので、最後まで読んでいただけると幸いです。それでは始めます。


きっかけ ~仙台は松本、大宮と同じ道を辿るのか?~

 まずは何故こんなことを調べてみようかと思ったのは、23シーズンの仙台の不甲斐なさがきっかけです。一時はまさかのJ3降格圏さえも危ぶまれた時もありましたが、大事なところで勝点を稼ぎよもやの事態にはなりませんでした。しかし、あれだけ期待されたシーズン当初を裏切り、結果は16位での終戦。
 その事実が告げられたホーム最終戦のセレモニーを見届けつつ、ふと思いました。
「このままJ2下位で甘んずるままのチームになったりしないよね?」
 
みなさんうっすらと感じているとは思いますが、J2は明らかにJ1昇格を狙うチームとJ3降格を阻止するのに必死なクラブの2パターンに分かれます。どのチームもシーズン開始前には口を揃えて「J1昇格!」「昇格プレーオフ進出!」と言いますが、4か月後には現実的な目標(J2残留)に切り替えるチームが現れ始めます。そして目標が達成できず、残念ながらJ3に降格してしまうチームが2チーム現れます。
 そしてそのチームが意外な時があります。ここ5年以内であれば、21年の松本山雅、そして23年の大宮でしょう。どちらもチームとしての弱体化は見えてはいましたが、降格するほどではと予想していた人が多いでしょう。
 どんなチームでも降格する時は降格する。と、すると次はベガのことが心配になります。ここ数年の順位の低下傾向、ブレブレの方向性、サポとフロントの不穏など取り巻く環境は悪いと感じるものが多すぎです。(J1からの選手の引き抜きが無いのも「仙台には魅力ある選手がいない」と言われているようで辛いものがあります。) 悪化の一途を辿れば、その先はJ3降格。まして24シーズンから降格枠が3枠になるので、降格する可能性は高まっている気がする。少しでも、何でもいいから安心する材料がほしい!ということでJ2過去12シーズンのチームごとの順位推移をデータ化しました。
 このデータを集めて確認したいことは以下の点です。
・J2は上位(昇格を狙うクラブ)と下位(降格回避を狙うクラブ)に分かれるのか
・ベガのようにJ2下位に沈んでも翌年に復活することはあるのか
・J2下位から昇格を勝ち取ったチームはあるのか
以上3点について、調査を行いました。また調べて面白そうだと思ったことについても取り上げていきます。

調査結果 ~順位推移のとりまとめ~

 表1は23シーズンにJ2に参戦したクラブの過去12シーズン分(2012~2023)の順位推移です。また表2はその12シーズンの間にJ2に在籍したクラブをまとめたものです。
 順位については次のように色分けしています。
J2上位→赤色 J2下位→青色 J1→白色 J3→緑色 JFL他→薄橙
肝心のJ2上位と下位の識別についてですが、調査対象のシーズンは全て22チーム制なので11位以上をJ2上位といてカウントしていきます。 

表1 23シーズンのJ2チーム順位推移
表2 過去J2在籍経験チームの順位推移

考察① ~J2は2極化している~ 

 まず「J2は上位(昇格を狙うクラブ)と下位(降格回避を狙うクラブ)に分かれるのか」について見ていきます。表1をみると赤や白が11位以上に多く、12以下に青や緑が多いことが伺えます。また表2を見るとその傾向がさらに極端になっていることが伺えます。
 ここでJ2のチームが2パターンに分かれるのかを検証するために「昇格を狙うクラブ」と「降格回避を狙うクラブ」をより明確に区別していきます。表2の23シーズンでJ1に在籍しているクラブのうち、検証期間にJ2に在籍していたチームをご覧ください。このクラブを「昇格を狙うクラブ、そしてその目標を達成したクラブ」=「上位進出が当たり前のクラブ」にしようとしました。そしてそのクラブのうちアビスパ福岡を基準にしようと考えました。何故福岡かというと、福岡は対象クラブのうち、J2上位以上(J1もしくはJ2上位)にいたシーズンの割合が最も低い、言い換えるならばJ2下位も経験したのに現在J1(今年はタイトルも獲得)にいるクラブだからです。福岡以上の割合で上位にいるクラブに橙色、そうでないクラブは白枠のままです。また公平を期すために「JFL他」のカテゴリにいたシーズンは除外してこのJ2上位以上の割合を計算しています。
 ただ例外が2クラブあります。東京ヴェルディ松本山雅です。この2クラブは上位と下位を分ける12位の成績があるためにJ2上位以上の割合が福岡未満になってしまいました。2クラブの12位を取った時の11位との勝点差は1、3、1です。また11位と12の差が4以上離れた年(1試合の結果で順位変動が無い)は19年と23年のみです。ここから「綺麗に2分割できるから11位までがJ2上位」とする考えには無理があったのが分かるかと思います。しかしどこまで許容するか考えていると、様々なことを考慮しなければなりません。なので「11位までが上位」というカウント方法は変えず、東京ヴェルディと松本山雅は「勝点差を考慮した分け方をすると福岡と同等以上の割合で上位」という例外的J2上位以上常連チームと解釈してください。この2クラブは薄橙で色付けしました。
 橙色(薄橙)と白色の2色に分けた後の表1を見るとことごとく橙色のチームが上位、白色のチームが下位に分かれていることが分かります。これより「J2は上位(昇格を狙うクラブ)と下位(降格回避を狙うクラブ)に分かれるのか」というのは順位推移をみると「分かれている」と言えるでしょう。

考察② ~復活は往々にしてあるが油断大敵~

 考察①でJ2は2極化していると結論付けました。その結論と反することが23シーズンは起きました。J2上位とされなかった町田ゼルビアの昇格とザスパクサツ群馬の躍進です。昇格なしは11位以上は橙枠のチームで埋め尽くされてもおかしくないのにそうはならなかった。また町田と群馬とは逆に徳島ヴォルティスベガルタ仙台、そして大宮アルディージャは橙枠にも関わらずJ2下位となってしまいました。このようなパターン、つまり「白枠チームの上位躍進」と「橙枠チームの下位陥落」がどの程度の頻度であるのかを見ていきます。

表3 白枠上位と橙枠下位のまとめ

 表3は白枠チームの上位進出数と橙枠チームの下位陥落数、およびその年にJ2参戦したそれぞれの色に対するそのチーム数の割合です。平均すると白枠チーム、つまり今回の調査ではJ2下位クラブとなってしまったが上位の結果を残したチームは約2チームでてきています。反対に橙枠チーム、つまりJ2上位クラブで下位の結果を残してしまったチームは約3チームでてきています。これより上位だから常に昇格を狙える、または下位だから降格回避を常に考えなければならないというわけでないのが分かります。
 白枠チームの成績上昇は他所からみても安心できますが、橙枠チームの成績降下は近い将来が不安になってしまいます。そこで「J2下位に沈んでも翌年に復活することはあるのか」ということを調査していきます。

表4 23シーズンのJ2在籍チームの成績降下の視覚化
表5 過去J2在籍経験チームの成績降下の視覚化

 表4、5は過去12シーズンにJ2に在籍したチームの中で、「J2上位→J2下位→J2下位」のように好成績を残した後に成績が2年連続で下降したままのところに色を残したものになります。色で言うと「白(J1)→赤→赤」「白(J1)→赤→青」「赤→青→青」「赤→青→緑」「青→緑→緑」のパターンです。表5の松本山雅やギラヴァンツ北九州を見ると、この成績降下パターンが重複しているチームがあることも分かります。表4、5の全体を見ると、橙枠か白枠かはあまり相関性が無いように見え、万遍なくどのチームにも起こりうることが伺えます。
 この調査のパターン、3年連続したシーズンの成績推移はJFL他のカテゴリでの成績を除くと全部で406パターンありました。そして先程示した成績降下の色が残されたパターンは全部で44パターンありました。割合で言うと10.84%でした。2年連続で成績が降下したままになってしまう確率が約10%というとさほど高くないように感じます。また橙(薄橙)枠のクラブに限ってみます。橙枠全体が239パターン、色を残したパターンが11パターンで割合でいうと9.21%でした。上位と言われるクラブが成績下降したままになるのは、データ上では低いと言えるでしょう。
 この調査で確認したいことの1つである「J2下位に沈んでも翌年に復活することはあるのか」という問いについては「成績降下したままのクラブが少ないから、復活する可能性が十分に高い」と言えると考えます。

考察③ ~ジンクス的にはやや追い風?~

 それでは最後に「J2下位から昇格を勝ち取ったチームはあるのか」ということについて調査していきます。

表6 23シーズンのJ2在籍チームの成績下位からの昇格例
表7 過去J2在籍経験チームの成績下位からの昇格例

 表6、7は過去12シーズンにJ2に在籍したチームの中で「J2下位→昇格」のパターンのみ色を残し、赤枠で囲ったものになります。皆無というわけではなく、約2年に1回のペースで発生しています。うち2例が福岡なのは興味深いところです。
 それでは24シーズンのベガルタに期待して良いかというと、少し違うのかなと思います。まず確率的にいうとこれまで調査対象の期間で昇格したチームはのべ31チームありますが、この「J2下位→昇格」のパターンで昇格したチームはのべ7チームのみ。母数が少ないですが約22.6%の割合です。1/4にも届かない割合を信じるのはいささか心許ないです。
 またジンクス的にいうならば22チーム制以降の成績でいうと15位の成績を残したクラブが昇格しています。このジンクスに乗っ取るならば24シーズン期待して良いのは徳島ということになります。また表7を見ると16位でも昇格しているじゃないかと思うかもしれませんが、そのパターンで昇格しているのが福岡のみです。福岡のみ通じてベガに通じないはずがない!というのならばそれまでですが、あまり声高に「昇格のジンクスがある」とは言えないと思います。
 「J2下位から昇格を勝ち取ったチームはあるのか」という調査の結果は、「あるにはあるが過度な期待はしない方が良い」「16位という成績から昇格したこともあるが福岡のみである」ということが分かりました。

まとめ ~昇格プレーオフ進出という目標でも良い~

 23シーズンの低迷に危機を感じ、過去シーズンの結果を元に順位推移のジンクスは無いか探ってきました。判明したのは

・「J2は上位(昇格を狙うクラブ)と下位(降格回避を狙うクラブ)に分かれている」
・「J2下位に沈んでも翌年に復活する可能性は十分に高い」
・「J2下位から昇格を勝ち取ったチームはあるにはあるが過度な期待はしない方が良い」

ということでした。
 その年に各クラブに何があったのかを言及せず、順位のみで判断してきました。しかし12年間というJ2リーグの歴史の半分近い年数での調査なので、それなりの信頼感はあるかと思います。
 24シーズンからは「20チーム制、昇降格各3チームずつ」という入れ替わりの激しいリーグになります。なので今回の調査より割合のズレ、特に表3で示した割合のズレが大きいシーズンになるでしょう。どのJ2上位と言われるチームも崩れる可能性は大いにあります。そして傾向を見るに、それが1クラブだけではないというのが歴史が証明しています。
 ベガとしてはもちろん昇格できれば1番良いですが、育成クラブへの転身を標榜しそれに沿った新指揮官を招聘しています。クラブの姿勢を顕著にしてからの昇格でも遅くはないと思うので、24シーズンの目標が昇格プレーオフ進出でも決して低くない目標だと私は考えます。実際これまで昇格プレーオフにさえ進出できていないですし、クラブ全体として変わる途中なので半端な状態で昇格するよりかは良いと思います。プレーオフ以上の争いが出来れば、23シーズンがこのままではいけないということが分かった痛みを伴う年で良かったと言えるようになるでしょう。ベガがより魅力あるチームへと変貌するための1年となれるように期待しましょう。

 以上、「過去12シーズンの順位からJ2順位のジンクスを探る」でした。ここまで読んでくださってありがとうございます。大学時代の論文を思い出してしまい予想以上に長い文章になってしまいました。結局、選手監督を信じることしかサポーターにはできないので、最高のパフォーマンスができるだけの環境を24シーズンも届けましょう!
 次回から「てきとーシーズンプレビュー」を始めていくのでお楽しみに。
それではまた、良いお年を。

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