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日本精神は何処に-エバーグリーン張栄発氏

張栄発氏

多くの日本人はこの方を知りません。
生前、張氏がどれだけ日本に支援の手を差し伸べてくださったか、メディアで取り上げられることも、話題になることもほとんどありません。

張氏は昭和2年(1927年)当時日本が統治していた台湾に生まれました。

少年の頃から海運会社で働き、夜学で学びながら用務員、船員、船長となり、30代前半で海運会社を設立しています。その後も苦労を重ねながら事業を拡大して、現在張氏の海運会社長栄海運は、現在コンテナ輸送では世界第4位の規模となりました。
後に設立した航空会社エバー航空は、今では世界40都市に就航しています。
張氏は一代で世界的な企業であるエバーグリーン・グループを作り上げたのです。

張氏は東日本大震災の時、個人で10億円という義援金を寄付し、グループ企業は毛布などの救援物資を提供、被災地までの輸送と搬送もしています。さらに各国政府や国際援助組織の物資まで、エバー航空の機材を使用して無償で日本に運んでいます。

なぜ張氏はここまで日本に支援の手を差し伸べてくれたのでしょうか。

張氏は創業間もない頃、総合商社の丸紅から多大な支援を受けています。またエバー航空設立時には全日空から乗務員などの教育援助を受けています。
また日本の港湾への進出に苦労していた時、神戸港と仙台港が受け入れてくれたというようなこともありました。

氏は自伝の中で、「受けた恩は10倍にして返さなくてはならない。」と語っています。
日本から受けた恩、そして仙台から受けた恩、それに報いたいという強い気持ちがあったことだと思います。

張氏は日本語による日本の教育を受けた、いわゆる日本語世代です。
この世代の方々の心にしっかりと刻み込まれているのが「日本精神」(リップンチェンシン)です。

日本精神とは、戦前・戦中に日本の軍部が国粋的な意味で使った「にっぽんせいしん」ではありません。
台湾における「リップンチェンシン」とは、日本語世代の方々が受けた道徳教育、すなわち正直・誠実・清潔・公正・勤勉・責任感・規律遵守・信頼といった高貴な生き方のことで、戦後日本の統治が終わった後に、日本語世代の方を中心に台湾の方が自ら使い出した言葉です。

日本語世代である張氏が、日本へ多大な支援をしてくださった背景には、このリップンチェンシンがあったものと思われます。
日本精神(リップンチェンシン)を持って生きてこられた張氏にとって、国難にあえぎ恩義ある日本に対して支援することは、当然であり、当たり前と思っておられたと思います。

日本に恩義を感じて最大限の支援をしてくださった張栄発氏。
一方で多大な支援を受けながら、大国の顔色をうかがって無視するかのような対応しかできない我国日本。

日本精神がどちらにあるかは明々白々です。

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