Joyful Days 001

以前アップした「哀捨て iN THE DARK」のボイスドラマです。

どうか勇気を出して、スタートボタンを押してみてくださいませ!

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【登場人物】
邨岬當(ムラサキアタル)⇔Joybells→Joybell(ジョイベル):26歳
呉内陽(クレナイヒカリ)⇔Diva(ディーバ):23歳
窪沖育(アオキハグクム)⇔Shower(ショウワァ):20歳
咲来渚(サクライナギサ)⇔Misfortune→Miss Fortune(ミス・フォーチュ
 ン):29歳
樹実(キミ):育の恋人:20歳
喫茶店のマスター:渚の想い人:26歳
清(サヤ):當の元恋人:24歳

【登場しない人物】
烈(ツヨシ):陽の元恋人:25歳


○暗闇の中
   声が聞こえて来る。
   その声に合わせ、画面に台詞の字幕が流れる。
(當)「今日の日を惜しむかのように、沈み行く太陽が、空を真っ紅に染め
 ていた」
(陽)「その光の中、時を同じくして、四人の男女がそれぞれの愛を失くし
 た」
(育)「そして、四人は哀しみの今日をさすらい、さまよい続けた」
(渚)「どのくらいの時が過ぎたのだろう…」
(當)「四人は歩き疲れ、いつしか闇夜の海にたどり着いた」
(陽)「砂浜に座り、ぼんやりと真っ黒な海を見つめていた」
(育)「そこへ、風が吹いて来た」
   SE:ものすごい風の音。
   紫、紅、青、桜色の服を着た四人の人間が、風に飛ばされて来る。
(渚)「ものすごい風が、四人を吹き飛ばした」
(當)「高く、高く吹き上げられ、遠く、遠くへと飛ばされた」

○暗闇の中に
   邨崎當(26)、呉内陽(23)、窪沖育(20)、咲来渚(29)
   の顔が現れる。
   音楽1『まっくらやみ』イン。

○クロマキー合成
   四人、宇宙空間の中で歌う。

ここはどこ? ねぇここはどこ?
いったいここはどこなの?
まわりのけしきは見えないし
風に聴いてもわからない
自分がいるのか いないのか
見えない わからない
まっくら闇

ここにいる! ねぇここにいる!
ぜったいここにいるから!
行くべき道は見えないけど
風に聴いてもこたえない
だけどここにいる! どこにいる?
やっぱりわからない
まっくら闇

○暗闇の中に
   四人の顔が浮かび上がる。
當「ていうか誰? 誰かいるのか?」
育「真っ暗で、何も見えないよ!?」
渚「あなた方は誰? ここはどこ? 一体、何人の人がここにいるの?」
當「俺は、ムラサキアタル。みんなも名乗ってくれ」
陽「私は、クレナイヒカリ」
育「僕は、アオキハグクム」
渚「私は、サクライナギサ」
   ほんの少しの間。
當「これで全員か?」
   ほんの少しの間。
陽「ていうことは、ここにいるのは四人ってことね」
育「男と女が二人ずつってことだよね?」
渚「そうね。でも、一体ここはどこなの?」
當「なぁ、俺が声を出すから、みんなで集まろう。そして考えよう。ここが
 どこで、どうすればいいのかを」
陽「そうね」
育「了解」
渚「そうするしかなさそうね」
當「よし。じゃあ、耳を澄まして俺の声を聞いてくれ。お~い! お~
 い!」
   紫色の服を着た當の身体がぼんやりと現れる。
(陽)「アタルは、何度も何度も叫んだ」
   紅色の服を着た陽の身体がぼんやりと現れる。
(育)「真っ暗闇の中、その声を頼りに、他の三人がアタルのところへ集ま
 って来た」
   青色の服を着た育の身体がぼんやりと現れる。
(渚)「しかし、お互いの顔は見えず、触れることも出来ない」
   桜色の服を着た渚の身体がぼんやりと現れる。

○画面いっぱいに
   台詞の字幕。
(當)「そう、ここは、ファンタジィワールド」
(陽)「空想夢想の幻想的な世界」
(育)「ゆえに、何が起こるかわからない」
(渚)「というより、何かを起こすのは、あなた方自身の心」
(當)「その心が、どこに向かっているかによって、自ずと結末が変わって
 来る」

○暗闇の中に
   紫、紅、青、桜色の服を着た四人。
陽「さっきから誰の声? ふざけるのはやめて!」
育「僕じゃないよ」
當「俺でもない」
渚「私も、何も言ってないわ」
陽「じゃあ、誰なの? もう一人いるの?」

○画面いっぱいに
   台詞字幕。
(當)「私はあなた、あなたは私。そして、私はあなた方自身の声です」
(陽)「この闇は、あなた方自身が創り出しているものです」
(育)「暗黒の闇から脱け出したいのなら、あなた方の心を染めている哀し
 みから、逃げずに戦うことです」
(渚)「闇は、すべてを否定し、拒否します」
(當)「ここにいるかぎり、あなた方は生きることも、死ぬことも出来ませ
 ん」
(陽)「再び輝く光が見たいのなら、その哀しみと戦いなさい」
(育)「そして、この闇を消し去りなさい。あなた方自身の手で!」
   音楽2『光ある場所へ』イン。

○四つの
   スポットライトが射し、一人ずつその中に現れ、歌う。

独りの寂しさは恐い
ましてこの闇の深さは厳しくて
でもこの闇を脱けなければ
この闇を脱け出せなければ
暖かい春を迎えられない

何故こんなところに僕は
こんな闇のド真ん中に 留(とど)まって
何故脱け出せないでいるのか!?
この闇を脱け出せなければ
緑萌える春に廻(めぐ)り逢えない

何もかも 塗り潰す
この闇を脱け出せなければ
いつまでも いつまでも
萌える春の日に廻り逢えない

まだ光は見えて来ない
私…この闇の深さに震えてる

寒さに凍えてしまう前に
この闇を脱けてしまわなきゃ
漆黒に覆われてしまうから
染まる前に 埋もれる前に
この闇を脱けてしまわなきゃ
いつまでも ここにいたら
暗黒に覆われてしまうから

今にも闇に呑まれそうな
暗い空を 低い空を見上げては
ため息ばかりをついている
この闇を脱けて行かなくちゃ
暗黒に覆われてしまうから

何もかも 塗り潰す
この闇を脱け出せなければ
いつまでも いつまでも
この闇を脱け出せなければ

暖かい 春の日を
永遠に迎えられないし
その先の 夏の日に
決して廻り逢うことが出来ない

超えて行こう この闇を
緑萌える春に逢うために
超えなくちゃ その先の
光ある場所へ たどり着けないから

○暗闇の中に
   紫、紅、青、桜色の服を着た四人。
當「なんだかわからないけど、この闇を創り出しているのは、俺たち自身っ
 てことらしい。とにかく、この闇を脱け出さないと、二度と輝く太陽の光
 を浴びることが出来ないってことだ!」
陽「私たちが創り出してるって、どういうこと?」
育「僕たち自身に問題があるってことですか?」
當「俺にも、よくわからないよ。ナギサさんは、どう思いますか?」
渚「なんで私には、さん付けなの?」
當「いや、声の感じから一番年上かなと思って」
渚「失礼ね! とはいえ、たぶんそうでしょうね。それで、私の次はアタル
 くんかな?」
當「ええ。その次は、クレナイヒカリ」
陽「どうして私は呼び捨てなのよ? しかもフルネームで!」
當「なんとなく」
陽「あ、そ。ていうことは、一番下はハグクムくんね」
育「ハグでいいですよ。ハグクムって言いづらいでしょ!?」
當「そうだな。じゃあ、ハグ、クレナイヒカリ、俺、ナギサさんってこと
 か。でも、クレナイヒカリと俺は逆なんじゃないのか?」
陽「さっきから失礼な人ね!? 私が下に決まってるでしょ!」
當「どうだかわからないよ。なにしろ顔が見えないんだからね」
育「そういえばそうですねぇ」
育「ハグまで何よ! ムカツク男たちね!」
渚「年なんかどうでもいいじゃない。それより、どうすればこの闇から脱け
 出せるかってことを考えなくちゃ。そもそも、なんで私たちこんなところ
 にいるのかしら? これは現実なの? 四人が同じ夢を見てるんじゃな
 い?」
育「みんなで、ほっぺたをつねってみましょうか?」
陽「やってみてよ」
育「え、僕だけですか?」
陽「いいから、早く」
育「わかりました。やりますよ。せ~の! (自分の頬を思いっきりつね
 る)イッテェー!!」
陽「真っ暗闇のままじゃない!」
渚「何も変わらないわねぇ」
當「なァ、みんな! 俺たちが、この闇に覆われたのは何故なのか? そこ
 を考えてみればいいんじゃないかな」
渚「そうか! 哀しみから逃げずに戦えって、あのカタルシスは、そのこと
 を言ったのね」
育「だから、何と戦うんですか?」
陽「哀しみとよ」
育「どうやって?」
陽「そうね。どうやって戦うの?」
當「哀しみを捨てちゃえばいいんじゃないかな」
渚「人に話すことによって、怒りや哀しみは半分になるっていうわよね」
育「そっか。そういうことか」
陽「じゃあ、ハグから試してみてよ」
育「また僕ですか!?」
渚「吐き出しちゃいなさい、哀しみなんて! 楽になるわよ」
育「ナギサさんまで!? こうゆうとき、年下って損だよなァ。わかりまし
 た。やってみますよ」
陽「ハグ、ガンバレ!」
當「頼むぞ!」
渚「お願いね、ハグ!」
育「はい! (立ち上がる)」

○と或る体育館のステージ
   ギターを抱えた育がいる。
育「たしかに、僕は音楽が大好きで、熱中し過ぎていたかもしれないけど、
 他の男にコクられたからって…」

○暗闇の中に
   紫の服の當と、紅色の服の陽。
當「コクられるって、なんだ?」
陽「告白されたってことよ。そんなことも知らないなんて、アタルこそ、ナ
 ギサさんより年上なんじゃないの?」
當「知ってるよ! ちょっと忘れただけだよ!」
陽「どーだかね~」
當「ムカツク女ね!」
陽「マネしないでよ!」
育「(声)あの~」
當「あ、悪い、悪い」
陽「ごめんね。続けて」
育「(声)はい」

○と或る体育館のステージ
   ギターを抱えた育がいる。
育「だから、なかなか逢えない寂しさはわかるけど、他の男に告白されたか
 らって、すぐに寝返らなくたっていいじゃないか! その寂しさは、僕だ
 って同じなのに!? 何故、もっと話してくれなかったんだよ! スマホが
 あるのに!? メールだって、LINEだっていいのに!」

○暗闇の中に
   紫色の服の當、紅色の服の陽、桜色の渚。
當「あれ、誰に話し掛けてるんだ?」
渚「フラレた相手によ!」
陽「バカね、黙って聞いてなさいよ!」
當「ムカツク!」
陽&渚「シー!!」
當「はい…」

○と或る体育館のステージ
   ギターを抱えた育がいる。
育「初めての恋じゃないし、別れも何度か経験したことがあるのに、なぜ僕
 の心は、こんなにもダメージを受けているんだろう? 自分でも不思議な
 くらいブルーに染められて、そして、僕はどんどん色を失くして行き、気
 がついたら闇に覆われていたんだ。だから、この闇から脱け出すにはどう
 すればいいかなんて、僕には全然わからない」
   音楽3『君と僕と愛と夢』イン。
   樹実、扉を開けて入って来て、一つ置かれた椅子に座る。
   育、歌う。

愛おしい君がいる
そんな君といつも一緒にいられたなら
どんなに楽しい日々だろう

叶えたい夢がある
それは僕がいつか必ず実現する
とってもすてきな夢だから

だから、僕は夢に向かっている
そして、君と向かい合っている
どちらも大切な かけがえのないもの
どちらもなくてはならないもの

愛おしい君が聞く
ねぇ私と夢とどっちが大事なの?
比べられるはずもないのに…

叶えたい夢を追う
君は寂しいと僕の胸にすがりつく
キツク抱きしめるしかない僕

君がいなくちゃ 僕は生きて行けない
夢を捨てたら 生きてる意味がない
どちらも大切で かけがえのないもの
どちらもなくてはいけないもの

僕はどうすればいい?
どうにも出来ない! もどかしい!
   樹実、立ち上がり、育に手を振り、去って行く。
君が、背中を向けた
引き戻そうとしても届かない
どんどん君の背中が小さくなり
そして、消えた…
   育、その場に立ち尽くす。
(渚)「アオキハグクムは、音楽に熱中しすぎて、恋人から『あなたのこと
 は大好きだけど、もっと一緒にいてくれる人がいい。私、寂しいのはイ
 ヤ!』と言われ、フラレてしまった」
(當)「まさか彼女から、そんな言葉を聞かされるとは思ってもいなかっ
 た。逢えない寂しさは、ハグクムも同じだった。『メジャーになりた
 い!』というその夢を、彼女も理解してくれていると思っていた」
(陽)「しかし彼女は、別の男からの告白を、悩みながらも受け入れてしま
 ったのだ。初めての経験に、ハグクムの心は激しく動揺し、どうすればい
 いのかわからなくなってしまった」

○暗闇の中に
   當、陽、育、渚がいる。
育「すみません。うまく話せませんでした」
陽「大丈夫よ! カタルシスも解説してくれてたから」
育「まぁ、そうですけど」
渚「それに、上を見て!」
當「あれは、光かな?」
陽「そうよ、青い光よ!」
育「いいえ、海空(カイクウ)の光です!」
陽「何、カイクウって!?」
育「海と空の青です」
陽「そんなに鮮明な青じゃないけど…」
當「ああ。青い光らしきものがあるっていうだけで、まだ真っ暗闇に変わり
 はないからな」
渚「そうね。でも、とにかくあの光を広げて、この闇を融かさなくちゃ!」
陽「そうですね」

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