「永遠の終わり」
「もう少し行くと、水をくれる所があるぞ」
すれ違いざまに男が言う。
灼熱の太陽。喉がカラカラだ。
何とかふらふらと歩き出し遠くにオアシスがぼんやり見え、水があり、
大きな魚が泳ぐ様が見えた。
あと少しだ。
しかし、行けども行けども水は永遠にない様に思える。
これが砂漠の蜃気楼なのか。
前からラクダに乗った身なりの良い男がやって来た。
「水がもらえる所があるぞ、直ぐそこの建物の中にキリスト様がいる」
「金と交換だがな」
金とは聞いてないな。慈悲深いお方と聞いていたが。
建物の前まで行ってみたが、棒で追い払われた。
「キリスト様は金が大好きなお方だ」
「貧乏はお断りなんだよ」
終わったか、俺の人生。
駆け巡る人生のモノローグは砂漠の砂嵐と共に
男に降り積もって行くのだった。
苦しい水を・・・。
自分の叫ぶ大きな声にふっと目が覚める。
目の前には紅茶用の砂時計が倒れている。
紅茶は冷めてしまっていた。
仕事の疲れで堕ちていたか。それにしてもリアルな夢だ。
腕は日に焼けかなり黒く汗で砂まみれになっている。
砂時計を立てながら自分の人生はこの中にある砂のひと粒に過ぎないのだなと思う。
気がつくと左手には古い文書をもっていた。
「死海文書」
神という存在すら成立しない三次元に身を置き二次元で生きてると言う訳か。
店員の女性が氷の音をカラカラさせながら水を持ってきた。
奪う様に受け取り、一気に飲み干した。
うまい!今まで飲んだ水の中で一番だった。
「すいません、紅茶もういっぱい頂けますか」
Fin
オリジナルストーリーNo.7
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