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AIと人間の学習曲線と新規事業

大規模言語モデルにおける能力獲得

まるで人間のような受け答えのみならず、数々の能力を発揮して巷を賑わせているOpenAI社のChatGPTですが、その元となる大規模言語モデルであるGPT(Generative Pretrained Transformer)や他の大規模言語系のAIモデル(LaMDA,Gopher,Chinchilla,PaLMなど)では、学習の量が一定の閾値を超えた途端に急激に能力が伸びる現象が確認されています。

一段ずつ階段を着実に登っていたら気づいたら随分高いところまで、、、というわけではなく、ひたすら歩き続けていたらある日突然たった一歩でそれまでの五十段分を急速に登れるようになった感じですね。

人間の学習曲線

人間の能力獲得も似たようなものがあって、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)などが提唱した「学習曲線」と呼ばれるものが有名です。学習時間と学習成果は比例の関係にはなく、反復して学習する量が蓄積していくと、反応時間(成果)が短くなっていくので、ある時から習熟度が一気に伸びるといわれています。

学習曲線のイメージ図

「ある日英語が急に聞き取れるようになった」とか「ベテラン刑事の勘」、あるいは「あるスポーツ選手が急激に伸びる」といったものも、反復学習の成果が急激にあらわれるような現象なのかもしれません。

私自身、学習曲線などは意識したことはありませんでしたが、振り返ってみれば、長年続けてきたこと(仕事、サッカー、習慣化していることなど)では似たような経験をしています。一方で、たまにしか使わない英語や幼少期で練習をやめてしまったピアノなどは、まだその領域に届いていない気がします。

当たり前のことではありますが、学習(能力獲得)において大事なことは、
すぐに成果が出なくても信じて続けていくこと
なんですね。もちろん正しいやり方でという前提はあると思いますが。

とりあえず子供にはAIの話を引き合いにこの学習曲線のことを教えて、勉強も他のこともすぐに成果が出なくても続けて頑張ってねと伝えました。

それにしてもAIと人間が同じような学習曲線を描くとは面白いですね。
今後のAI研究を通して、人間への理解がもっともっと進むかもしれません。

新規事業の見極め

さて、AIと人間の学習曲線をみていてふと、新規事業も似たような曲線を描くのかもしれないと思いました。新規事業は確立された既存の事業とは違い、顧客基盤も無ければ、新領域の知識や経験値、人材も少なく、まさにほぼまっさらな状態から学習しながら事業を作っていくようなものです。

当初計画通りにいかない事業進捗、次から次へと出てくる諸問題への対応をしながらも、地道に積み重ねる営業活動やサービス開発、様々な顧客と対話を積み重ねる。そんな時間の中で、改良を重ねたサービスと顧客からの評価の積み上げに加えて、ふとした閃きや偶然の出会い、口コミなどがブレイクポイントとなり、一気に突破口が開けて成功する、、、前に資金が尽きるか、当初計画通りの利益水準や市場拡大が見込めず撤退する、といった事が大半なのかもしれません。

グラフと違って現実世界では、急速に伸びるブレイクポイントに近づいているかどうかすら目に見えないですし、新規事業では”前例”はあまり参考になりません。いつ来るともしれないブレイクポイントを信じて、正しいかどうかもわからない道を進むのは不安との戦いでもありますが、それも含めて全て学習プロセスと考えれば少しは気が楽になるかも、と思いました。

まずは目の前の事業を成功させて「あの時がこの事業のブレイクポイントだった」と語れるようになりたいものです。

とにかく今は信じて前に進むだけ。

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