短編小説【狐のぬいぐるみ】
── 推しの姿をかたどったぬいぐるみを作る。
そんな人間の文化を、どこからどう知ったかは定かではない。
だが先日から針1本、糸1本、生地1枚と枕元に謎に増えてきた理由が分かった。今日になって狐の耳のページに付箋が張られた「推しぬいの作り方」という本も置いてある。
これは我が家の庭にある、お稲荷様が送ってきたらしい。お稲荷様も、自分のぬいぐるみが欲しいみたいだ。
私はもらった針と糸、そして生地を使って狐のぬいぐるみを作った。
「お稲荷様、お納めください」
次の日。
枕元に美味しそうなお菓子とともに、小さなメッセージカードが置かれていた。
「むりさせて ごめんなさい」
お稲荷様も謝ることがあるんだな。
手順通りに作ったのに、目が3つ、耳が4つに何故か増えた狐のぬいぐるみを思い出しながら私はおやつを頂くのだった。
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