マガジンのカバー画像

クレナリアと本の魔法

3
≪青薔薇≫と称えられる、賢く美しき公爵令嬢クレナリアは、次期王妃として厳しい教育を受ける日々を送っていた。しかし古くから交流のある辺境伯の三女であるヴェレーナだけは、クレナリアに… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

クレナリアと本の魔法(3)

クレナリアと本の魔法(3)

 午後の授業のうち、1時間だけ私とクレナリア様は違う授業を受ける。クレナリア様が受けるのは王学、これは男子生徒が受けることを前提としている授業で、女子では彼女しか受けていない。……いや、学園側が、受けないように仕組んだというべきか。
 現に、私もクレナリア様と同じカリキュラムを申請したが、学園側が『定員』という理由で断ってきたため、古歴史学を取得している。クレナリア様には、そのことを伝えないように

もっとみる

クレナリアと本の魔法(2)

──それはまだ、クレナリア王妃が、女学生の1人であったころの話だ。

 白に近い銀色の目。ぷるんとした唇。あどけなさが残る顔立ちに、品の良い薄化粧。ほっそり、という言葉がふさわしい体は、たいていの男性どころか、女性だって抱き上げることができそう。
 そんな、可愛らしい、私──クレナリアの友人。ヴェレーナが、不安そうに私を見つめている。

「大丈夫ですか、クレナリア様」
「もう、学園の中なんだから、

もっとみる

クレナリアと本の魔法(1)

「王妃、また、書籍に関する法律ですか」

呆れた声で、大臣の1人が問いかけた。しかしクレナリア王妃は美しく微笑み、その美声で言う。

「もちろん。これは国民にとって今ではかけがえのない書物を、より安価で、より多くの国民が、それこそ毎日でも新しいものが読めるようにするための法律です。皆さま書面をご覧になってくださいまし」

皆が目を落としたところで、クレナリア王妃は畳みかける。

「これは毎日、国の

もっとみる