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2019年を振り返って

ありきたりのタイトルですが…結論から言うと、駆け抜けた一年でした。

kino storeは8年目に入り、世間的にもお店的にもいわゆる「焼き菓子トレンド」みたいな時期を越え、私自身もお客様自身も、とてもフラットな気持ちになったなぁと感じた一年でした。いくらとてつもなく好きなものでも、8年間と言う月日をずっと同じテンションでは保てない。人に対しても、ものに対しても、そう思います。それはもちろん、お客さまからの気持ちも同じだと思います。じゃあ、私はこれから何をしたいのか。kino storeはどこへ向かうのか。自問自答しながらお菓子に向き合う日々。そんな悶々としていた時に声をかけてくれたのが「OIST」(沖縄科学技術大学院大学)のSさんでした。


週3から週4営業へ

いつもお店を使ってくださっていたSさんから、初めて「OISTでお店のお菓子を売ってみませんか?」と声をかけていただいたのは、じつはもう2年くらい前の話になります。当時は諸処の事情で実現とはならず、今年の6月頃だったかな、再度お話をいただきました。私自身少し余裕が出てきた時期で、そろそろ週4日営業にしてみようかな?という気持ちもあったし、いつもの「これも何かだ!!」が発動して、即答でお願いをしました。その後は皆さまの力を借りてトントントンと。気がついたら、立っていましたOISTに。

小さな頃からいろんな国のお菓子に興味があって、自分なりの解釈でお菓子を焼いて、間違ったことも失敗したことも数知れず。いずれ仕事にすること自体すら想像できなかったなかで、こんなにも色々な国の方にいつかお菓子を食べてもらえる日が来るなんて。と。…嬉しかったです。


理想の焼き菓子スタイル

以前にもブログに書いたことがあったと記憶しているんだけど、ご存知のように私は「パティシエ」ではありません。娘が学校で「自分ちはお菓子やさん」と話したら「じゃあお母さんパティシエなんだねー!」と言われたそうで、娘は即答で「違うよ、お菓子を焼く人なだけ」と答えたと。大笑いしましたが、よく見てるな、と思いました。私にとってのお菓子は、決して「スイーツ」ではない。いつだって「お母さんが揚げるドーナッツ」であり、「遊びに行った友達の家のお母さんがおやつにオーブンで焼いてくれた焼きりんご」なのです。

作り手の温度が伝わるお菓子というのは、ときにはマイナスの感情さえも伝わってしまうこともあるのですが、それさえも受け止めてもらえるような鮮度を感じてもらえたら、一口食べたときに何かしら感動してもらえるんじゃないかなと思うんです。そのスタイルとして、OISTで、焼いたお菓子をガバッと手でつかんで目の前で立ち話をしながら食べてもらえる、というのは、じつは私にとってはかなりの理想形で。売り手と買い手のライブ感が限りなくイコールに近い。家に帰って、綺麗なお皿に並べて、お茶を入れて…ではなくてね、会社に遅刻しそうだからとりあえず紙袋にお菓子を放り込む、くらいの。OISTでの販売は、お菓子の販売を生業としてきたこの8年のなかで、一番憧れていたスタイルだったのだと思います。それが今年実現できたことは、私にとって大きな喜びでした。


ただお菓子を焼く人がしなければならないこと

とはいえ、です。経験なくして、温度を感じてもらえるお菓子は作り続けられない。さとうきびの揺れる音を日々聞いているだけではダメなのです。誰から習ったわけでもない、いわば「ただお菓子を焼く人」な私のお菓子は、長年の月日の中で「その場に身を置く」ことから生まれるものが多く、というよりは、それがすべてなのかもしれません。きっと一番遠回りで、経済的にも時間的にもとても効率の悪い勉強だな、といつも思います。それでも、私にはそれしかできないのもよくわかっていて、いろんなものを振り払って外へ赴かないといけないといつも思っています。この冬休み、久しぶりに年をまたいで遠出します。そして感じた何かをまた糧にして、ただお菓子を焼くだけの人が焼くお菓子を通して何かを伝えられたらいいな、とそう思っています。

今年も一年、kino storeをご贔屓にしてくださった皆さま、本当にありがとうございました!また来年も笑っていただけますように!!




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