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時々、DVDレンタル店員(1)

フリーランスで初めて映画を配給をすることになった年、同時にDVDレンタルショップの店員も始めた。公開直前の一番忙しかった時に、家の近くにオープンすることになった店の面接に出かけた。なぜそうしたのか、未だにはっきりとした理由がわからない。しかし、その時には自分にとって必要なことのように感じていた。人生初めての接客業、レジ打ち、シフト勤務。何より驚きなのは、5年以上経っても、細々とではあるが続けていることだ。

配給という仕事は、イベントを行なったり、劇場に行かない限り、お客さんとのリアルな接点はない。もちろん劇場で映画を観ることと、DVDをレンタルすることは異なるが、どんな人が、どんな映画を選ぶのか知りたかった。ちょっとカッコよく言い換えると、「人と映画が出会う場」に立ち会ってみたかった。また、わからないことは店員に聞いてください!を推奨している店なので、お客さんと話す機会も多い。設定だけを聞いてタイトルを探し出したり、「泣ける映画をオススメしてください」といったリクエストに応えるのも仕事のうちだ。これがものすごく楽しい。テーマを設定して特集棚をつくるのも、また楽しい。いつもは背表紙しか見えず、なかなか借りられることのないタイトルが、テーマで括ると急に借りられ始める。これもやはり「人と映画が出会う場」を作る楽しさだ。そして、自分が配給した映画を借りていくお客さんには握手したくなる衝動を必死で抑えている。

自分がDVDレンタルを利用しなくなって久しかったが、実際に働き出してから、まだまだ需要があることを知った。もちろん、配信サービスが台頭してきて、DVDレンタルが斜陽の一途なのは間違いない。配信サービスで探して見る方がずっと楽なはずなのに、わざわざ借りに来て、見たら返しに来るという行為を続けることには様々な理由があり、DVDレンタルショップの存在意義はそこに支えられていた。しかし、2018年辺りから徐々に雲行きが怪しくなった。いよいよ人々が配信サービスの便利さに気づいたのか(Amazonプライム会員に見放題パックがついたことも大きな要因として考えられる)、ぐっと客数が減った。近隣店舗の閉店も相次いだ。オープンから満5年を迎えた今年の年末年始は正念場だったが、いつものような喧騒もなく、落ち着いていた。これは本格的に行き詰まってきたのか、、、と思った時に思わぬことが起こった。新型コロナウィルスの感染拡大である。(つづく)

#映画 #DVDレンタル #人と映画が出会う場 #コロナ  

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