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選ばれなかった女たち:李佳(りか)


私は男になりたかった?


私はスーツが好きだ。
いつから始まったのかわからない。
オタクとして、アニメやゲームの推しキャラはずっと「メガネのスーツ優等生で生徒会の副会長」的な人だった。
スーツが似合う男性が好きかと思ってたら、自分もいつのまにか着るようになった。
男の鎧と言われてるスーツだが、男ではない自分にも案外と合ってる感じ。
シャツの第1ボタンまでしめて、ネクタイを結んで、ベストから革靴までバッチリスーツ姿する時、力が沸いてくるような感じがする。
 
そんな感じが好きです。
今は正々堂々とそれが言えるが、ずっとそうではなかった。

男子プロたちが女流が羨ましいと、女流だけのタイトル参加したいと言うところをたまに見かける。その気持ちわかるかも、とふっと昔の自分を思い出した。
 
小さい頃から、男の子が羨ましいだった。
 
女の子の子供服は鮮やかなピンク色やお花柄、幼稚園で用意されたおもちゃもバービー、髪の毛もみんな長く伸ばしてる。
 
そんな普通なことかもしれないけど私は嫌だった。
その時好きなのはテレビで流れたウルトラマンティガだった。アニメもデジモンが好きだった。
ごっこ遊びも男の子と一緒に地球防衛隊をやってた。
たまに女子でおままごとやったりする時も自分が常にお父さん役だった。
 
だがそれが問題視されてた。
当時は周りの理解はまだそんな高くなかった。
女の子らしくないからそういうのやめなさい!って大人たちに言われ続ける子供時代過ごした。
 
周りの子たちからも良いとされてなく、どこ行っても浮いている。
私はもう自分の好きなことを隠そうとして始めた。
同時に頭のどっかで芽生えたのは、
「自分が男だったらよかったのに」だった。
 
女子っぽくないから=男っぽいだろう。
じゃ私も男になれたら、それらを言われないように生きていけるじゃないか。
と、その時思い込んでしまった。
 
そう思い始めたらもう自分は何を欲しいのかわからなくなった。
青春だと言われた時期、葛藤もいっぱい。
私が男の子だったらそう悩まないかも…
 
とつい思ってたのが、ある日突然疑うようになった。
本当にそうなのか?
男の子だっていっぱい悩むし、別に男になっても男らしくないって言われるかもしれないし。
私は周りの評価を気になってるけど、隣に自分のような子がもし居たら悪いと思わない。
 
悪いことしてなければ、好きのままにして良いじゃないか!
私の人生はこのままじゃいやだ!私はかっこよく生きたいだ!
 
 
と、そのように思った。
文章にしたら厨二病のような感じするけど、当時の心境はそれ以上だった笑。
その勢いで、私は洗面所までダッシュして、テキトーに家にあるハサミをとった。
 
そうだ、そのまま鏡の前に自分の髪の毛を切ってた。
 
当時腰まで伸ばしていた髪だったが、
そんなのどうでもいんだ、俺は人生初にショートになりたいんだと目つぶって手を動かした。
 
その後戦場清掃をして、仕事帰りの母さんに泣きながら説明してた。
「怒られても私はもうやってただから!」
と叫んでた記憶あるが、母さんは怒ってなかった。
そうなんだ、わかった。と私を美容室に連れてきた。
自分が切ったやつを美容室の鏡で見るとアホほど馬鹿馬鹿しいだったけど、心は楽だった。
 
本当にバカなことやってたけど、
なんだかんだ気持ちはそんな重くなくなった。

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