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あこがれこがれ

僕が生まれてはじめて憧れを抱いたのはカブトムシだ。

仮面ライダーでもウルトラマンでもなくカブトムシだった。

煌びやかな羽、見るからに丈夫な体には逞しい角が生えていてある意味僕にないものを兼ね備えていたんだよな。馬鹿らしい話だが幼稚園の卒園アルバムの将来の夢はカブトムシだ。捕まえたり、眺めているだけでちょっぴり強くなれたような気がしたもんだ。

そんな憧れはやがて好きになって、いつの間にかただのちょっとかっこいい生き物になった。

憧れってのはそんなものなのかもしれない。
当然と言えば当然だ。

「憧れる」の語源は平安時代に遡るらしい。
元は「あくがる」で「事」や「所」を意味する「あく」とそこから「離れる」を意味する「がる(かる)」から成り立つ言葉だ。それが鎌倉時代になる頃には「心が体を離れる」という意味になり、現代のような「対象に心が惹かれる」ような意味になったらしい。

思えばみんな離れてたなア。
カブトムシもピッペンも松井常松も隣のクラスのAちゃんだって、押し並べてみんな離れてた。


浮き足立った気持ちはいつかちゃんと着地する。
それは慣れなのかもしれないし、失望なのかもしれない。

カブトムシは憧れだった。
僕にとってカブトムシは憧れだった。


だからちょっぴりカブトムシには優しくしたいとおもう。
それっぽい木があったら探すとおもう。
心の奥の奥で戦ってみたりするとおもう。

あの頃の、   憧れだったときのカブトムシが現れるかもしれないから。

今週も読んでくれてありがとうございます。
あなたの憧れはなんですか?

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