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自転車と腰痛のはなし〜火野正平さん無理はしないでね

大好きな番組がストップしてしまった。
理由は、旅人・火野正平さんの腰痛だそうな。

毎回追っかけて見てるわけじゃないけど、いつ見てもすごく楽しくて、穏やかな気持ちになれる素敵な番組。

視聴者の「こころの風景」の美しさや、お便りに込められた思い。そしてその思いに寄り添う火野正平さんのあたたかさ。
自転車で巡るから分かる空気感。花鳥風月の美しさはもちろん、地域の人たちの声が心地良くて。

事故じゃなくて良かったけど、お身体は大事になさって欲しい。寂しいけど、勇退も致し方ないのかなぁと思ったり。
トップの写真は、番組で火野正平さんが被ってた帽子と同じ柄のシャツ。わたしのお気に入りです。

ということで、自転車好き鍼灸マッサージ師として、
「自転車と腰痛」をテーマに考えてみます。

腰痛と自転車の関係性は

リハビリにも用いられる自転車運動

自転車運動と聞いて、どんなイメージを持たれますか?ママチャリやロードバイク、マウンテンバイクにミニベロ、いろんな自転車があります。

自転車運動の大きな特徴は、「座った状態で運動すること」です。座ってする運動って、なかなか他にありません。転倒のおそれもありません。

リハビリに使うマシンにも種類があります。
よくあるエアロバイクだけでなく、リカンベント型といって、背もたれに身体を預けて自転車運動できるものがあります。

ダイヤルひとつでペダルの重さを調整できるのも、リハビリにはもってこいですね。

腰痛のリハビリにも

座ったままできるリハビリということで、歩行リハビリが困難な患者さんのリハビリに使われます。
とくに「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という症状の方にはオススメされます。
間欠性跛行は、腰椎すべり症、分離症、脊柱管狭窄症などの疾患に特徴的な症状です。

間欠性跛行(かんけつせいはこう)

間欠性:一定の時間をおいて、物事が起きたりなくなったりすること
跛行:正常な歩行ができない状態

ちょっと歩いたら痛みやしびれが出て歩けなくなって、休憩すればまたしばらく歩ける、という症状のことです。

間欠性跛行の症状は、座って休めば軽減することが多いので、座ったままリハビリできる自転車マシンは最適なのです。

自転車運動で期待できる効果

筋力アップと持久力アップ

運動で第一に目指す目標は、筋力アップでしょう。自転車マシンは、体力に合わせて負荷を調整出来ますので、筋力アップに最適です。
この場合の筋力というのは、足をグッと踏み込むような瞬間的な運動で発揮する筋力(瞬発力)です。
階段が登りにくい場合は、瞬発力的な筋力が足りないのかもしれません。

そして負荷を軽くすることで、長時間の運動も可能です。おしゃべりをしながら運動できるくらいの負荷で運動を行えば、有酸素運動になります。

有酸素運動はその名の通りエネルギー代謝に酸素が関わり、体内の脂肪分を燃やすことでエネルギーに変える運動です。
有酸素運動では瞬発力アップは期待できませんが、筋持久力のアップができます。

瞬発力と筋持久力の両方が鍛えられる、これは自転車運動の大きなメリットです。

心肺能力の向上と体脂肪の減少

有酸素運動のメリットそのままなんですが、心肺能力の向上と体脂肪の減少が期待できます。
おしゃべりをしながら運動できるくらいの負荷で、30分以上持続して運動をしましょう。
体脂肪がエネルギーとして消費されるまでに、30分程度の時間がかかるためです。

持続して運動することで、全身の筋肉細胞が酸素を必要とします。全身に酸素を届けるために、毛細血管を拡げる物質が放出され、血管が強化されたり毛細血管が増えたりします。

また心臓にも適度に負荷がかかることで、心筋細胞自体が強化されます。心筋細胞が強化されることで、一回の拍動で送れる血液量が増えるのです。

これらは有酸素運動の効果ですが、有酸素運動を転倒の危険なく行える自転車運動は、リハビリに最適なのです。

自転車運動の注意点

おすすめだけど、弱点もある

ここまで自転車運動のメリットを述べてきましたが、何ごともメリットにはデメリットがついてきます。

自転車運動のデメリットは、使う筋肉の偏りが起きることです。
どんなスポーツでも、1つの競技に打ち込んでいると偏りが起きるのは致し方ないことで、自転車も例外ではありません。

また、軽い負荷で運動できるがゆえに、故障に気付きにくいことがあります。
だましだまし運動できてしまうので、知らず知らずのうちに悪化させてしまうわけです。

おかしいな?と思ったら、無理はしないことです。
健康になるための運動で不健康になっていたら、悲しすぎますよね。

股関節について

自転車に乗るとき、股関節は上下を繰り返しますが、専門的にいうと屈曲・伸展という動作です。

屈曲が太ももを持ち上げる動作です。
屈曲方向の可動域がせまい(脚が上がりにくい)と、最大屈曲時に腰の筋肉を引っ張ってしまうことになります。
ペダルを回すたびに負荷がかかるので、腰の筋肉に負荷が蓄積するおそれがあります。

股関節には、屈曲・伸展だけでなく、外転・内転、外旋・内旋と3種類の運動軸があります。
外転・内転は、太ももを開いたり閉じたりする動作です。
外旋・内旋は、太ももをねじって膝のお皿を外に向けたり内に向けたりする動作です。

自転車運動は、股関節を屈曲・伸展の繰り返しになります。
外転・内転および外旋・内旋方向の関節運動がないのです。外転・内転および外旋・内旋方向には固定された状態になるため、可動域が低下するおそれがあるのです。

股関節の可動域が低下すると、周辺の筋肉が引っ張られてしまい、腰などに悪影響を及ぼします。
股関節は人体で最も大きい関節で、筋力も強いため影響も大きいのです。
屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋それぞれの可動域を意識して確認しておくことが肝要です。

腰について

自転車に乗る姿をイメージしてください。
動かすのは脚だけに見えますが、実は腰も動いています。

太ももを上下させるのに連動するように、腰も上下するのです。坂道で踏み込むときをイメージしてもらえば、腰も動いていることは分かりますね。

それだけではありません。
脚を踏み込む際には、体幹に力を入れています。
体幹を固定することで、力強く踏み込むことができるのです。
踏み込む回数だけ、体幹にも負荷がかかります。
体幹を支える筋肉への負荷が蓄積してくると、骨や関節にも負荷がかかります。

骨や関節に継続的に負荷がかかると、骨の変形や関節の異常を来たし、場合によっては手術が必要になることもあります。

膝について

自転車といえば、膝のことも考えましょう。

高齢の方で、
「歩くと膝が痛いから自転車に乗る」という場合もあります。
自転車ならサドルで体重を支えられるので、膝関節にかかる力は小さくなります。
膝の曲げ伸ばしに痛みがある場合には不適ですが、長距離を歩けない方には、強い味方ですね。

男性に多いのですが、自転車に乗ると両ひざがガバッと開いてしまう方を見かけます。
これは股関節の外転と外旋が同時に起こっている姿勢で、股関節にも膝にも、あまりよろしくない姿勢です。
膝関節にねじれがかかってしまうのです。

膝関節は本来、少しだけ外側に反っています。
大腿骨は骨盤の横から出て、膝で左右が合わさって、膝から下はまっすぐになるので、角度が付いているんですね。
この角度を保って曲げ伸ばしするのが、膝の力を最大限に発揮する姿勢です。

事実、ツール・ド・フランスなど自転車ロードレースの選手は、膝を閉じてペダルを回しています。
競輪選手は競技の特性上、太ももの筋肉が太く発達するため、少し開く形になります。

自転車良いよね!楽しいよね!

歩くよりも早くて、風が気持ちよくて。
車よりは遅いけど、そのぶん色んな出会いがあって。
ガソリンも駐車場も気にしなくて良い自転車。
観光地でレンタサイクルなんてのも良いですよね。

私も自転車は大好きです。
FUJIのミニベロロードは手放しちゃったけど。

せっかくだから、自転車を楽しんで欲しい。
健康のための運動としても優秀です。
ちょっとした身体の使い方とケアで、自転車ライフはより良いものになります。

「人生下り坂、サイコー!!」
火野正平さんの名言です。

風薫る季節になります。
安全に健康に、楽しみましょう。
ヘルメットも忘れずに。


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