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「Hackney Diamonds」 ローリング・ストーンズ

2023年9月突如リリースされた「Hackney Diamonds」はローリング・ストーンズの18年ぶりの新作アルバムだった。サブスクが主流となり、アルバムが儲からない商売となって久しいが、果たしてロック・バンドの新作アルバムを発売当時に入手したことなど一体いつ以来だろうか。少なくとも私にとっては18年ぶりの体験だった。 ジミー・ファロンの司会による大々的なリリース発表はYoutubeで生配信され、発売直後のミニ・ライブにはレディ・ガガも参加するなど、本作は予想以上の盛り上が

    • 「Led Zeppelin Ⅳ」 レッド・ツェッペリン

      初めてこのアルバムを聴いたとき、かつてないほどの衝撃を受けたことを覚えている。その美と暴力を合わせ持った超自然的なサウンドは、我々が生きる日常をどこまで繰り返しても決して辿り着くことのない、まさに異世界の音楽だった。 レッド・ツェッペリンは1968年にジミー・ペイジ、ロバート・プラント、ジョン・ボーナム、ジョン・ポール・ジョーンズによって結成された4人組のバンドだ。しかし、後にハードロックと呼ばれるそのフォーマットは、ジェフ・ベックやキース・ムーンなど当時の様々な才能が集う

      • 「Voodoo Lounge」 ローリング・ストーンズ

        このアルバムが発売されたのは1994年であり、前作「Steel Wheels」から5年後のことだった。すでに30年の月日が流れたことに、驚きを感じざるを得ない。このとき貧乏学生だった私はバイト代をかき集めて発売当日にこのアルバムを入手し、安物のCDラジカセで聴き始めた。"CD"というものについて説明しなければならないかもしれない。これは光学ディスクにさまざまなデータをデジタル、すなわち0と1の集合として記録する媒体であり、1980年代後半に一般に普及したものだ。CDは主に音楽

        • 「Bitches Brew」 マイルス・デイヴィス

          ジャズの帝王マイルス・デイヴィスは、ロック音楽の興隆によってジャズが急速にマイナー化してゆく60年代末期、エレキ楽器とアフロ・ビートそしてフリー・ジャズを融合させたような未曾有の音楽絵巻を完成させた。それがこの1970年にリリースされた「Bitches Brew」だ。この2枚組アルバムによって、エレクトリック・マイルスの時代が幕を開け、伝統的なジャズがポピュラー音楽としての役割を終えたと言われている。 2人のドラムにパーカッションまで加わった打楽器陣は野蛮で複雑なリズムを叩き

        「Hackney Diamonds」 ローリング・ストーンズ

          「Live in Japan 1973, Live in London 1974 」 ベック・ボガート&アピス

          日本が世界に誇れるものとはなんだろう。実直で勤勉な国民性だろうか? すでにレガシーな技術力だろうか? "外国人が驚愕した○○"のような涙ぐましいYoutubeを見て悲しい気持ちになっているかも知れない。しかし、50年前にベック・ボガート&アピスの唯一の公式ライブ・アルバムが作成されたのがこの国であることは間違いなく日本が世界に誇るべき偉業である。 ジェフ・ベックはあまりライブ・アルバムに前向きではなく、それゆえこの傑作も長年日本でしかリリースされていなかった。それがロンドンで

          「Live in Japan 1973, Live in London 1974 」 ベック・ボガート&アピス

          「Live at the Ritz」 ロニー・ウッド & ボ・ディドリー

          ローリング・ストーンズにおけるロニー・ウッドのギターは非常に雑だ。ソロを取れば断片的なフレーズを脈絡もなく繰り返し、伴奏においても弾いたり弾かなかったりまるで気まぐれだ。リズムは大きく前後にずれ、音量もろくに聞こえなかったと思うと急に爆音になったり不安定極まりない。 無邪気な笑顔でステージ上を練り歩きながら、バンドサウンド全体を崩壊させんばかりに乱雑にギターをかき鳴らす姿には狂気すら感じられる。ミックやキースは本当にこの男をコントロールできているのだろうか? 元々ロニー・ウ

          「Live at the Ritz」 ロニー・ウッド & ボ・ディドリー

          「Four & More」 マイルス・デイビス

          土砂降りのように降り注ぐシンバル、ブンブンと唸るベース、天翔るホーンと深く響くピアノ、それが多くの人が思い描くジャズというものだろう。1966年にリリースされたマイルス・デイビスの「Four & More」はまさにそんなジャズの魅力が詰まったライブ・アルバムだ。 このアルバムは1964年2月にニューヨークのフィルハーモニック・ホールで行われたコンサートを収録している。公式サイトによると、これはアメリカ公民権運動の高まりを受けて3つの運動支持団体の後援によって行われたチャリテ

          「Four & More」 マイルス・デイビス

          「At Fillmore East」 オールマン・ブラザーズ・バンド

          サザン・ロックとは非常に多様な音楽であり、ひとつのジャンルとして括るのはやや無理がある。だが、いずれのバンドや作品も、泥臭い・男臭い・酒臭いという共通点があり、そのアルコール度数の高さゆえ、未成年には販売できない音楽なのだ。 アメリカ南部州でドサ回りをしていたローカル・バンドが全国区に成長し、このシーンを築いたのだが、母集団がそれなりに大きくなると突然変異的に突出した能力を持つ者が現れる。それがデュアンとグレッグのオールマン兄弟を中心に結成されたオールマン・ブラザーズ・バンド

          「At Fillmore East」 オールマン・ブラザーズ・バンド

          「Beggars Banquet」 ローリング・ストーンズ

          1968年にリリースされたこの「Beggars Banquet」を究極の名作だと賞賛して止まないファンがいる。言うまでもないことだが私もその一人だ。まさにこのアルバムをもってローリング・ストーンズの全盛期が幕をあけ、1970年代前半まで、"傑作の森"と言えるような名作を次々に作り上げてゆく。この「Beggars Banquet」の素晴らしさを語り継ぐことは人類の義務と言っても過言ではないだろう。 1曲目の「Sympathy For The Devil」は"自己紹介させてくだ

          「Beggars Banquet」 ローリング・ストーンズ

          「Primitive Cool」 ミック・ジャガー

          1987年にリリースされたミック・ジャガーのソロ2作目である。ローリング・ストーンズ内の対立が激しくなる中リリースされたこともあり、この作品に良い印象を持っている人は少ない。私自身ミック・ジャガーのソロの最高傑作は次作の「Wandering Spirit」だと思っている。しかし、本作とこの前作の「She's The Boss」には、莫大な金を垂れ流しながら、不安定な環境の中で不確かな未来を掴み取ろうとする危うさと未完成さに溢れており、それが魅力なのだ。 1曲目の「Throw

          「Primitive Cool」 ミック・ジャガー

          「Live European Tour 1973」 ビリー・プレストン

          ローリング・ストーンズの1973年ヨーロッパ・ツアーは、彼らの歴史において傑出したパフォーマンスだった。なぜこのツアーだけがこれほどハイ・クオリティでハイ・テンションだったのか長年の謎だった。ミック・テイラーを擁するフォーメーションはこのときまでに4年に及ぶライブやレコーディングを立て続けに行っており、バンドとしての習熟度が高かったのは間違いない。しかし、直前のオーストラリア・ツアーではここまで神がかった演奏ではなかった。何があったのだろうか。麻薬の影響という人もいるが、もち

          「Live European Tour 1973」 ビリー・プレストン

          「Brussels Affair」 ローリング・ストーンズ

          ライブバンドとしてのローリング・ストーンズの黄金期がいつかという議論には事実上結論が出ていると言って良いだろう。もちろん好みの違いはあれど、ある程度彼らのライブ作品を聴き込んだファンであれば、結局のところ1973年のヨーロッパツアーがその頂点であるという見解に落ち着く。そしてこの絶頂期のライブ・パフォーマンスを捉えたものが「Brussels Affair」だ。 なお、ここで紹介したいのは2010年にオフィシャルでリリースされた「The Brussels Affair 73'

          「Brussels Affair」 ローリング・ストーンズ

          「Bridges to Babylon」 ローリング・ストーンズ

          「Bridges to Babylon」は1997年にリリースされた、ローリング・ストーンズとしては20世紀最後のオリジナル・アルバムである。1989年に「Steel Wheels」で復活したローリング・ストーンズは、その後も「Voodoo Lounge」をリリースし、ワールド・ツアーを敢行してきた。この「Bridges to Babylon」は彼らのキャリアの中で比較的安定した時期にリリースされたゆえか話題性に乏しく、著しく存在感が薄い。しかも、当時の音楽チャートは激動の最

          「Bridges to Babylon」 ローリング・ストーンズ

          「地獄の猟犬が追ってくる」 ロバート・ジョンソン

          リーマンショックの直後ぐらいに、私は仕事で200人ほどが参画するプロジェクトに携わっていたことがある。そこには多くの下請けが入っており、私は中堅業者の管理者として10人ほどのチームを率いて参画していた。毎日の勤務時間は朝9:00から夜0:00までであり、休日は年に3日ほどだった。 日中の業務内容は、延々と続く会議で顧客や元請企業への進捗報告であり、実際に作業をして進捗させる時間はない。翌朝、再び遅延の原因と改善策を報告させられる日々だった。チームの中には心を病むものも多く、毎

          「地獄の猟犬が追ってくる」 ロバート・ジョンソン

          「Brown Sugar」 ローリング・ストーンズ

          1971年の「スティッキー・フィンガーズ」のオープニングを飾るこの曲は、ローリング・ストーンズの代表曲の一つだ。軽快なノリと終盤のコール&レスポンスは長らくライブにおけるハイライトであった。しかし2019年を最後にこの曲はコンサートで演奏されなくなっている。 本作はキース・リチャーズのギター・リフを中心に構成されているが、アコースティック・ギターやマラカスも鳴り響き、全体としてあまりエレキ色は強くない。むしろカリブ海のリゾートを思わせるなごやかな雰囲気さえ漂っている。しかし

          「Brown Sugar」 ローリング・ストーンズ

          「The Star-Spangled Banner」 ホイットニー・ヒューストン

          アメリカのフットボール決勝戦はスーパーボウルという大規模なスポーツイベントとして開催される。そしてその開会式では、その年に活躍したトップアーティストによって国歌斉唱が行われるが、これまでビリー・ジョエルやマライア・キャリーなどの有名アーティストがその舞台に立っている。しかし、歴代のアーティストの中でも最高の名演と言われているのが、1991年のホイットニー・ヒューストンによるパフォーマンスだ。というかアメリカ建国以来、この国の国家である「The Star-Spangled Ba

          「The Star-Spangled Banner」 ホイットニー・ヒューストン