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あえて「苦しさ」を見つめることでなりたい自分に近づいていく


【インタビュイープロフィール】

略歴:
(エッセイスト・ライター)
1976年生まれ。寺社仏閣、日本史、古いものが好きだったことから京都に憧れ、20歳のときに京都外国語大学に編入・卒業。卒業後は、専門学校の事務職員、大阪の出版社、京都の広告代理店でのデザイナー兼コピーライターを経て、2006年からフリーライターとして活動スタート。

自分の本当の気持ちは「苦しさ」の中に隠れている

私は満員電車が大の苦手です。今でこそフリーライター歴17年目となりましたが、社会人となって初めのころは会社勤めをしていた時期もあります。

会社員だった当時、京都から大阪へ電車通勤していたときのことです。職場は念願叶って勤め出した出版社でしたが、どうしても満員電車が嫌でたまらない。そこで、電車に乗ることを回避しようと京都の会社へ転職したものの、今度は苦手なたばこの煙に囲まれる環境になってしまい、たった4日で退職しました。このことが転機となり、フリーライターとして独立して今に至ります。

現在、自宅とは別に事務所を持っています。ある夏の日、好きな服装をしてビーチサンダルを履き、自転車に乗って職場へ出勤しました。そんな自分を見て、会社勤めではほぼありえない格好だなと思ったのです。同時に、「満員電車やたばこのある環境といった嫌なことを辞めていくと、最後には好きなことだけが残るのだな」と気がつきました。

当時は嫌なことから逃げたいがために転職したとは思っていませんでした、20代だった私は、「よりよい環境で働ける」とポジティブな思いで転職していったのです。そのため、独立してすぐに嫌なことをすべてやらなくなったわけではありませんでした。フリーライターとなってからも、切羽詰まった執筆スケジュールに無理をして合わせる、頼まれていないけれど相手のために担当外の業務も行うなどして消耗することがたびたびありました。

過去の私は、「多少嫌なことがあっても、自分さえ我慢すればうまく回ることがいっぱいある」という思考の持ち主。実際にはうまく回るどころか、そうやって消耗していった結果、5回も肺炎になり、入院するはめになってしまいました。そのときは、うまく回ったとしても、あとからツケが来てしまう。本当は嫌だと思っていることであっても、その渦中では「自分が我慢している状態」であることに気がつきにくいものだなと思います。

「嫌なことを我慢していた自分」に気づいたきっかけ

自分が嫌だと思うことが何か明確になったのは「自己分析ノート」に出会ってから。「自己分析ノート」とは、文具メーカー勤務後フリーライターとなったマツオカミキさんが制作したノート。全30ページにわたって「感情から探る」「経験から探る」「現状を整理する」「これからを描く」の4つのテーマに沿った質問が用意されています。これらが自分と向き合うヒントや考える切り口となり、回答していくと自分が本当にやりたいことを見つけられるようになっています。

このノートを知ったのはマツオカミキさんのTwitterでした。ライターを始めてしばらく経っていたころですが、ちょうど自分のやりたいことに悩んでいる時期だったので、すぐに購入しました。

昔から、私は自分の意見を言うのが苦手でした。自分の意見を言って、相手に嫌われたくないと考えていたからです。さらに、相手に好かれるためには役に立たないといけないとも思い込んでいました。持ち前の繊細な気質もあり、相手の望みを先読みして行動していたのです。しかし、ときにやってあげても喜ばれず、逆に嫌われてしまうことを何度も経験しました。

最初は「なんで?」「相手が悪い」とも思っていたのですが、自己分析ノートを書いていくと、相手が変わっても同じようなできごとが繰り返し起こっていると気がつきました。
そこでようやく、私が良かれと思ってやってあげることが、相手にとってやってほしいことではない場合もあると理解したのです。それまでは「出しゃばりすぎたのだろうな。でも、良かれと思ってやってあげたのに」と落ち込むだけで終わっていました。

ですが、失敗したできごとやその時の想いを文章にしてみると、冷静に事実を見つめ直すことができました。「自己分析ノート」で可視化したことで、自ら進んで我慢と嫌な思いを繰り返していることがわかったのです。

「苦しさ」を見つめることがヒントになる

我慢強い人は、自分がつぶれてしまうまでやってしまう人が多いなと感じます。また、過去の私がそうだったように、自分の気持ちに蓋をしていることにそもそも気がついていない場合も多いと思います。

なりたい自分になるためには、自分でその蓋をしていることに気づけることがヒントになるような気がしています。もし、今苦しい状態にあって抜け出したいと思うなら、私が自己分析ノートで辛かった経験を書きだしていったように、具体的な「苦しさ」に注目することが解決の糸口になるかもしれません。

「苦しいことをあえて見つめるなんて、ますます落ち込むだけなのでは?」と思われるかもしれません。ポイントは、これまでの苦しさを「解決するには?」という視点で見つめ直すこと。つい嫌な気持ちの方に目が向いてしまいそうになったら、どうしたらその苦しさから抜け出せるかという考え方をしてみると変わってくるのではないでしょうか。

幸せになるには、自分なりの幸せの定義を持つことが大切です。蓋をした自分の本当の気持ちに気がつけると、なりたい自分への一歩が踏み出せるのではないかなと思います。

取材・文/さとみ縁


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