光山キム

あさ目覚めた時から言葉が頭を埋め尽くす。 え、なに? ふむふむ、そうか。うわっ、もぉー…

光山キム

あさ目覚めた時から言葉が頭を埋め尽くす。 え、なに? ふむふむ、そうか。うわっ、もぉーっ! じわ~ん。 はっとして、ぐっときた話。なんなのさーっと、いらっときた話。 それでもみな生きている。死ぬまで生きるのだ。ということをあれこれ綴ります。

最近の記事

【手紙文】手放せないもの

むかーしむかし どろぼうにあいました バックパックひとつで 旅したさきで いっさいがっさい盗られました 現金、旅行小切手、航空券、パスポート、 すっからかんになりました 旅日記、出会った人たちの住所録、 何度も読み返したエアメール、 盗んだひとには何の価値もない それらの喪失が一番の痛手でした 腹が立ち、 悔しみ、 悲しみました でもそのあとで 心地良い風が吹きました もうこれからは 重い荷を背負わなくて済む 失うことを怖れなくて済む 周りを敵だと思わなくて済む

    • 詠み人は父の友

       娘が生まれたとき、娘の父親が出て行ったとき、母を見送ったとき、俳句や短歌を詠む才能があったらならばと強く思った。才能とまではいかなくとも、せめて、創作の習慣があったらなと。その喜びの大きさを、その喪失の深さを、その悲しみが幸福に転化する瞬間を切り取ることができたろうにと。そして、永遠の世界の片隅に据え置き、わたしとあなたが交わることもあったかもしれない。  20数年前に他界した父の遺品のなかにあったおじさんの遺稿集を繰るまでには時間を要した。娘が巣立ったあとの空虚を埋める

      • 治安の良さだけの安心にすがらない  

         たしかに私も財布が入ったかばんを躊躇なく椅子に置き、席を立つことがままある。ときに、ノートPCをテーブルに置いたまま、トイレに行くことも。まさか席に戻ったときに、忽然と消えているなんて悪夢が霞むこともなく、だ。これは海外からの訪日客から見ると驚愕することらしい。  もっとも日本の友人のなかに「(荷物を)見ててあげるから先に行って来ていいよ」という慎重派もいるので、誰でもが当り前にやっている芸当ではない。  はじめにことわっておこう。日本の治安の良さは世界に誇れるものだし、

        • 【映像シナリオ】華子の一歩

          あらすじ  片岡蓮(亨年64) は遅咲きの知る人ぞ知る劇作家であった。癌との5年に及ぶ闘病の末、再発治療をした病院で家族の到着を前に逝った。  娘の華子(26) は作家志望だが父親へのコンプレックスもあり、身内にも本心を語れず、しがないフリーライターに甘んじていた。長兄のテレビディレクター、次兄の弁護士の影で、自分の取り柄は性格の明るさだけだと思っている。  父の死に接しても悲しみを内に秘め、自由に生きた父の最後を形式にとらわれずに見送りたい、その一心で動いている。お義理で

        【手紙文】手放せないもの

          【詩《うた》う】ハンドメイド

          もの そのもの    と つくったひとの  ものがたり きかねば わからぬ  くふう や ぎじゅつ かくしたいけど  しってもほしい きぎょうひみつは  ございません あかしたところで  つくれません さいせいかのうの  なさ が よさ ひとつひとつ てにとって  しみじみ ながめる    もののかお さいふは すぐには  ゆるまぬけれど   ぴたりんこ     と   あえば ほら きょうから それは  あなたからの   ものがたり  つないで つづく  

          【詩《うた》う】ハンドメイド

          【詩《うた》う】悩む

          悩む  時間があれば悩む いまは朝から晩まで悩んでいる 時間があるからだ 悩むのは しんどい 出口がないのだもの ではもとから入り込まねばよい 雑事に忙殺されれば 悩む時間はない 一件落着 というわけにはいかぬ 悩みの種はそちらこちらに落ちている 拾わずとも 通り過ぎても 芽は出るよ ならばいっそ せっせと水やりして 大事に大事に育てましょうぞ 大きく、大きく、大きくなーれ 寄らば大樹の陰 となるかもね 話が違うぞ あーた いつも思い出すは むかし観た

          【詩《うた》う】悩む

          ムーの助言・その2「エンジョイユアセルフ」

           乗り越えられない壁はないだとか、明けぬ夜はないだとか。そんななぐさめはいらない。いや、そもそもなぐさめにもなっていない。時間が解決してくれるという不確かな未来予測より、いま、いま、いまのこの状況をなんとかしたい、その手だてを教えてほしいのだ。  ボルダリングならトライのしようがある。ひとつひとつ慎重に目の前のことに取り組めばいい。ながーい梯子があれば、勇気を出して足ふるわせながらも、ひたすら上を見てのぼればいい。しかし、いま目の前にあるのは、叩いてもびくともしない果てしなく

          ムーの助言・その2「エンジョイユアセルフ」

          早起きは三文の徳だった話

           表題を「犬も歩けば棒に当たる」(もともとの意味ではない方のそれ)としても良い最近のできごと。  それまでも目覚まし時計をかけて起床するという習慣はなかったけれど、いまの住まいに越してきて数年、向かいに遮る建物がない東向きの寝室に寝起きしてからは、季節の日の出に合わせて目覚めるようになった。起きた瞬間に、いま何時だなと分単位で心のなかで思うと、果たして3分のずれなくあたっている。秘かな自慢。  「開いて閉じて開いて閉じて」の箇所にくると、いつものように階下の住人を気にしつ

          早起きは三文の徳だった話

          【映像シナリオ・梗概】三条大橋の夕陽

          京都市内の大学生、速水史門(22歳)は、小さい頃から作家になる夢を持っていた。高校生時代に書いたものが教師に褒められ、得意になっていたが、現実主義者な父に抗えず、法学部に進路を変える。詩や小説がお金になるとは思っていなかった速水にとって、漫画を描く津田山誠(21歳)との出会いは、夢を現実に変えてくれるかもしれない機会を持たらせる。  そんな秋のある日のこと。京都地方裁判所の法廷に、ゼミの授業で訪れた速水とゼミ生たち。他の学生とは少し離れ、最前列で熱心にメモを取る速水の後ろ

          【映像シナリオ・梗概】三条大橋の夕陽

          【詩《うた》う】数字じゃないのよ人生は

          身長162センチ  体重53キロ 評定平均3.8 SNSの友だち75人 親友 2人 失恋経験3度 月収手取り24万円 住居の間取り1LDK 玄関に置いている靴の数5足 購読している新聞0 転居回数7回 所持金38,460円 アカペラで唄える曲 3つ 誕生日は2月29日 視力0.8 起業して14年 従業員9名 同居人1人 渡航回数30回以上 平均睡眠時間 5.5時間 年齢69歳 子ども2人孫4人 パート仕事週3日 外食月2回 マイホーム築38年 どこのだれか 顔が見え

          【詩《うた》う】数字じゃないのよ人生は

          母の声・その1「門限」

           またしても新シリーズができてしまった。  その1では収まり切れぬだろうし、表現者として生きた父と異なり、母のことは私が発しなければ誰にも届かない。まあ、普通は、何かに秀でた人が語る母親だから注目されるのであってーどんな育て方をしたらそんな立派な人に成長するのだろうとか、この母にしてこの人ありとか、そういった類ー、世に自慢できる実績などない無名の私が何をかいわんやではあるのだけれど。  彼女について美辞麗句で書き連ねても、それこそ鼻持ちならないと一蹴されてしまうだろうから

          母の声・その1「門限」

          「聞く耳を磨く」ことに耳を傾ける

           noteに駄文を書き連ねてはや3か月。書く内容がとっちらかっているので、種類分けというか、見やすくまとめたい気持ちがありながら、怠惰を理由に、また、あとで文章を精査して消去するかもしれないという理由で、棚上げにしている。そこに、もうひとつ理由があって、もしかしたらそれがためというのが一番なのかもしれないのだが、分類したらしたで、今度はそれに合わせた文章を書いてしまうようになるのではないかと危惧する。  逆説的にいうと、分類しないおかげで、前に書いたことから派生して、それに連

          「聞く耳を磨く」ことに耳を傾ける

          本が必要になるとき

           読書の習慣はあるし、活字を読むことは嫌いではない。しかし、系統立てて読みこんだり、ある作家を追いかけたり、マニアックな本を手に悦に浸ったりするタイプではない。他愛のない会話の中に著名な作家の言葉や小説の一節が出て来ると、どぎまぎしてしまう。知ったかぶりをするのも恥ずかしいし、知らないことを露呈するのはもっと恥ずかしい。ひいてはそんな見栄っ張りな性格、それ自体が一番嫌悪することでもある。  世に言われる読書家なる人は、圧倒的にこども時代から本が友だちであった人が多いように思う

          本が必要になるとき

          【詩《うた》う】オンザウェイがマイウェイ

          いつも道の途上  そしていつもそれが本番 ここじゃない何処か これじゃない何か あなたじゃない誰か を求めて来たわけじゃない いつだって いまいる場所で 目の前のことを 隣の人と やってきた なのになぜか 気づけば てん てん てんまり てん てまり てん てん てまりの てがそれて あいもかわらず 点が線に それが面に なっている気もせず迷走中 それでも底をよくよく見れば わたしだけの地図がある 山あり谷あり アスファルトや沼地 消えた足跡 わたしには見

          【詩《うた》う】オンザウェイがマイウェイ

          おもしろいということの民族性 -あるハルモニ(おばあさん)の思い出-

           日本で韓流ブームが起こる以前、ソウルに語学留学のため3か月滞在したことがある。喜怒哀楽の表出が日本人のそれとはあまりに違うので面食らうことも多かったが、その血が私にも流れているからか、そうではなかったとしても、人間の野生を想起させるからか、彼らの立ち振る舞いにどんどん惹きこまれていった。  なかでも持って生まれたと呼びたくなるような「笑い」のセンスは抜群で私のツボにはまった。とは言ってもジョークを連発するような、いかにもおもしろおかしい人たちが多いという意味ではない。日常の

          おもしろいということの民族性 -あるハルモニ(おばあさん)の思い出-

          【詩《うた》う】サジェスチョン

          こうせい ああせい しゃらくせい やってみなけりゃ はじまらん やってみたけど あかんやん 基本のきーはだいじでやんす なくてもよいのは 天才だけざんす どっちにしたって その道行くのはこのわたし こうするべきーではなしに こないするのはどないやろ ってなぐあいに言うてくれへん? ほなやったら リッスン リッスン するわいな ほいでもって レッスン レッスン はじまるかもね どっちにしたって 心に響くは控えめーな  そんな あんなの サジェスチョン そのうち な

          【詩《うた》う】サジェスチョン