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「動物のお医者さん」01(○○学実習)

「動物のお医者さん」

大学時代にこのマンガに出会い、マンガの連載中に獣医学部の学生だったこともあり、親近感を感じていました。
当時の獣医学部の大学生活についても織り交ぜながら、「動物のお医者さん」の思い出を振り返ってみたいと思います。


前回はこちら


動物のお医者さんの単行本1巻の冒頭で、ハムテルと二階堂が地下鉄の駅まで近道をするシーンがあります。

獣医学部の敷地内の中を通り抜ける道を・・・

その道の傍らにある解剖学教室実習室で、夜な夜な「スプラッタな光景」が行われているというのです!

「動物のお医者さん」1巻より


一般の人にとっては気味が悪いですよねぇ。

でもですよ、
私たち獣医学部の学生も最初は一般の人と同じだったんです。
解剖なんて初めてだし・・・😭

学部に入って間もないころにその洗礼(!?)、いや、実習が始まりました。

そう、

「解剖学実習」


実習初日

私たちも初めての経験。
気分が悪くなる学生や、その日のお昼御飯が食べられなくなる学生もいました。

解剖学の実習より一足先に講義は始まっていまして、

骨の名前
筋肉の名前
血管の名前
それも動物種別に何種類も

などなど、いっぱい覚えました。・・・ウソです

あまりにも数が多すぎて頭はパンク状態。
本来はしっかり覚えないといけないのですが・・・

元々あきらめることに関しては自信があった私達数人の学生は、覚えることから早々に離脱。

これが後々の試験で痛い目を見る事になるのです・・・
当たり前ですよねぇ。

単行本2巻に試験に苦しむ学生が描かれています。
試験内容や試験の方法は、ほぼマンガと同じです。
佐々木倫子先生の取材力、すごいです。 

まあ、そんなことはさておき、
実習では教科書で得た知識を実際に体験しながら学ばせていただくのです。

実際のウシ1頭に供(きょう)してもらい、体の各部位を観察します。
最初はその体の大きさに圧倒されました。

まずは、ウシさんには皮を一枚脱いでもらいます。
(ごめんなさい、本当は剥がさせていただきます)

そうすると筋肉が観察できる状態になります。

血管には色を付けた特別な液体が注入されます。
そうすることで動脈静脈が区別できるようになり、筋肉と同時にどのように血管がはり巡らされているのかも分かるのです。

血管とは別にリンパ液が流れているリンパ管にも色を付けていたような・・・
かなり古い記憶なのでうろ覚えで・・・

このように動脈が赤静脈が青だったように思います


学生は何組かのグループに分かれて各部位の筋肉、血管に加えて神経の走行もスケッチします。

そう、スケッチをして覚えるのです!

さらに、その絵にそれぞれ筋肉や血管、神経の名前を書き入れていきます。
解剖学の教科書とにらめっこしながら。

まぁ、これが大変!
というのも、

日本語だけではないのです!!

ラテン語
でも書かなければいけなかったような。
英語でも書いたような書かなかったような?
(うろ覚え炸裂で申し訳ありません・・・)

こうしてスケッチには膨大な量の名前が書き込まれていくのでした。
ごちゃごちゃしすぎで益々覚える気力が・・・

悪戦苦闘し、その日の実習時間が終わるとウシの大きな体はクレーンで吊り下げられます。
天井に取り付けられているレールに沿って冷蔵室へ移動してもらうために。

こんな感じのやつです


実習は一日では到底終わらないので、3週間程かけてしっかり学ばせていただくのです。
そのために、一日の実習が終わった後は冷蔵室に移動してもらいます。

実習は初日以外は午後から始まるので、終わる頃には日は暮れていて、ハムテルが遭遇したように、

夜な夜なスプラッタな光景が・・・

なんてことになるんですよねぇ。


実習が終盤に差し掛かる頃には熟成したお肉の香りというか、何というか独特の香りがしてきます。
おそらく服にもしみ込んでいたに違いありません。

地下鉄に乗ったら変な顔をされましたから。


聞いた話によると、昔の大先輩たちはそのお肉もおいしく(!?)いただいたそうです。

「食べてあげるまでが実習だ!」

と言っておられたとか、おられなかったとか・・・。

私たちの頃は禁止されていましたので、実習が終わったら感謝してお別れ・・・


・・・ではないのです。

それではウシさんに申し訳ありません

お肉(筋肉)は時間の流れには勝てませんが、「」って長時間残りますよね。

そうです。
骨になってもらい、さらに学ばせていただくのです。

「骨格標本」

として、私達の教材になっていただきます。

骨格標本になっていただく為に、さらなる工程が始まります。

まず、お肉をできるだけそぎ落とします。

獣医学部には、大きな動物達でも焼いてあげることができる施設があります。
そぎ落とした肉はそこで焼いてお役目を終わっていただきます。

解剖学実習が終盤に差し掛かかった頃に、学部の敷地内に大きな穴が掘られ始めます。

お手伝いしてくれるのは嬉しいんだけど・・・


もちろん、学生たちが一緒に連れてきているワンちゃんたちが掘るわけではなく・・・

私たちが実習室にこもっている間に、解剖学教室の先輩方が掘ってくださるのです。

骨はその穴に埋めるのです。

半年くらい埋めておいたのではないかと・・・
(またまたあやふやな記憶)

その間、地中の微生物君たちがせっせと頑張ってくれます。

私たちにお任せあれ!


微生物君たちの頑張りもあって、土の中でほぼ骨だけになるのであります。

意外と原始的な方法でびっくりしました?

それにしても、自然の力ってすごいですよね。

つづく

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