子どもの日 🥷16:55【シロクマ文芸部】
(子どもの日に施設の子どもたちにも作ってあげようかな)
渋谷のハチ公前広場で行われているバルーンアートフェスに紛れるため、バルーンアートの練習を重ねた結果、一通り作れるようになっていた。施設の子どもたちにプードルやクマなど作ってあげたら、きっと喜ぶことだろう。
(そろそろ準備を始めるか)
いよいよ地球上に悪い人間がいないユートピアをつくるときがやってきた。
先ほど『ユーザーミーツ』から液体の毒物を受け取った。地球上から悪い人間に消えてもらうため、毒物をペットボトルロケットに移し替えてスクランブル交差点に向かって発射するのが今回の計画だった。
とくに悪い人間によるゲリラライブが17時に始まる。みんなの視線がゲリラライブに向いたところで後方から打ち上げるのだ。
ペットボトルロケットの噴射口はプロペラ状に細工されており、広範囲に毒物をばら撒く仕組みになっていた。
ペットボトルロケットに空気を入れるため、バルーンアートで使っていた空気入れを取ろうとしたとき、手元が滑って落としてしまった。慌てて拾おうとした反動で空気入れを踏んでしまった。
(ちくしょー。落ち着け)
空気入れを拾って、ペットボトルロケットに空気を入れ始めた。
『スカッ、スカッ』
あれ?おかしい?空気が全く入らない。どうやら空気入れが壊れてしまったようだ。まずい、どうする。100均に行って買ってくるか。いや、それでは間に合わない。
ふと、顔を上げると道路の柵に駐輪された自転車に目がとまった。フレームに空気入れが備え付けられている。迷っている暇はなかった。自転車に近づき空気入れを取り外そうとした。
「すみません。何をされているんですか?」
振り向くと警察官が立っていた。
「あんた、その自転車の持ち主と違う人だねー」
京王井の頭線の高架下いたバス案内係が大きな声で叫ぶ。
「いや、違うんです…」
慌てたはずみで、自転車のフレームに空気入れと一緒に備え付けられていた水筒が外れて、道路に転がった。
◆この作品はフィクションです◆
ショートショート?をつなげて連載中です。毎週金曜日に投稿予定です。
目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
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