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深煎り入学式【毎週ショートショートnote】

一浪の末、桜が咲いた。

体育館で入学式を終えたあと、各学科に別れて自己紹介を兼ねたガイダンスが行われることになっていた。

構内のメインストリートを歩いて501号室に向かった。200人は収容できる大きな講義室で真ん中辺りに座った。座る位置で特徴がわかる。最前列に座っているのは真面目な現役合格生達だ。コーヒーで例えると浅煎りだ。フレッシュだが若さゆえの酸っぱさがある。一浪の俺は中煎りか。

一通り集まったところで白髪交じりの男性が入ってきた。講壇に立つと挨拶が始まった。

「諸君、入学おめでとう。青春というのはあっという間に過ぎてしまう貴重な時間です。学業に励むとともに学業以外にも情熱を燃やしてください!」

さすが年季の入った深煎りだ。そのとき、白衣姿の貫禄がある、いかにも教授っぽい人が入ってきた。

「キミはなにをしてるんだ」

講壇で挨拶していた男性は慌てて最前列に座った。あとでわかったのだが、社会人コースで入学した新入生だった。

(410文字)



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