命乞いする蜘蛛【毎週ショートショートnote】
足元が滑る。踏ん張らないと立っていられない。
ここがどこであるかを知るために歩き回った。向こうに大きな穴が空いていた。底は暗闇で何も見えない。
突然、大量の水が落ちてきた。水は勢いよく大きな穴に吸い込まれていった。もし頭の上に水が落ちてきたら流されていただろう。
周りは壁で閉ざされていた。足元が滑って登ることができない。もう、あの穴に吸い込まれるしかないのか?
空から竜巻が伸びてきて地上とつながった。
「こっちきて」
「どうした?」
「洗面台に蜘蛛がいるのよ」
「うわっ!ほんとだ」
「わたし虫が苦手なのよ」
「俺だって」
「男でしょ。なんとかして」
「水で流しちゃおうか」
蛇口をひねった。
「止めて!」
「どうした?」
「蜘蛛と目があった、気がする…」
「気のせいだろ」
「なんだか命乞いしているみたい」
「蜘蛛がか?」
「ねぇ、助けてあげて」
「う〜ん?ティッシュ持ってる?」
「持ってるわ」
「それでこよりを作って」
こよりを受け取ると蜘蛛の前に垂らした。
(410文字)
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