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コスパに目がくらんで焼死しかけた話

親元を離れて一人暮らしをすると、行動と考え方に変化が起こります。
その最たるものが家計、とりわけ光熱水費への意識変化でしょう。

親元で暮らしているときに当たり前のように使いまくっていたお風呂や冷暖房、それが翌月には光熱水費として家計にのしかかってくるのです。
少しでも節約しようという気持ちが出てくるのではないでしょうか。

私は婚活を始めてすぐに家を出て、10年ぶりに一人暮らしを始めました。
婚活のウケを良くするという目的もありましたが、職場に近いところに住みたいなという気持ちもあったのです。
しかし職場近くを賃貸情報サイトで検索すると、出てくるのは家族向けの物件ばかり……
郊外で土地も余っているのか、都会によくあるワンルームタイプの物件は皆無でした。

まあ大は小を兼ねるというし、婚活がうまくイケばそのままそこで同居を始めればいいかと考えて、独り身なのに3DKのアパートに入居を決めました。(当然というかなんというか、そのアパートで単身者は私一人だけでした……)

一人暮らしをしつつ、婚活も行うのでお金は出ていく一方です。
勤務先から家賃補助が出るのですが、家賃の3~4割程度。
切り詰められるところは切り詰めようと節約志向になるのは必然だったのかもしれません。
しかし、ある程度のことは我慢や節約でなんとかなるのですが、問題は暑さ寒さ対策です。
特に冬の寒さは辛いものがあります。
夏の暑さはなんとか我慢できるけど、冬の寒さは絶対無理!!
って人も多いんじゃないでしょうか。

私はアパートの一番狭い部屋で電気毛布を使ってなんとか冬を乗り切ろうと思っていました。しかし田舎の冬は容赦なくアパートを冷やします。
部屋には備え付けのエアコンがあるにはあるのですが、明らかに旧式で燃費が悪そうです。毎日使おうものならば来月の電気代にかなりの数値として反映されるでしょう。

寒さに耐えて歯をガチガチ言わせながらAmazonで暖房を検索すると、安い電気ストーブを見つけました。節電節約を高らかにPRしており、レビューの概ね好評だったのでポチりました。

届いた電気ストーブは、高価な暖房には大きく及ばないものの、足に近づけるとじんわり温まります。
同じ椅子に座り、じっとパソコンを眺めるような余暇時間を過ごす私にはそれなりに合っていたと思います。

さらに節約のため、パソコンを使っていた一番狭い部屋に布団も搬入し、そこで寝起きするようにもなりました。3DK生活なのに最も狭い1部屋しか使わないという歪んだ生活を送っていたわけですね。

そんなある冬の朝、少し早く起きてしまった私は二度寝をすることにしました。
出勤時に早く起きられるように、電気ストーブのスイッチを入れて布団の方に向けて設置してから夢の中に戻りました。

異臭がしました。
何かが焦げたような、妙な匂いです。
夢の中で、【電気ストーブ+布団=異臭】という数式が完成した瞬間、私は体を捻って飛び起きました。
悪い予感は的中しており、ストーブ側の布団の一部が燃えていて、中には炎も見えます。

そこからの私は驚くほど冷静でした。

電気ストーブのスイッチを切りながら洗面所へ駆け出し、
水道を全開にして壁にかかったタオルを濡らして部屋に舞い戻り、燃え始めた布団へかぶせて消火をしました。
洗面所と部屋を往復し、水浸しのフェイスタオルやバスタオルを布団にかけました。
そして煙が充満し始めていた部屋を窓を全開にして換気をします。
頭が冴えていて、寒さは全く気になりませんでした。

それから5分ほど、何枚ものタオルをかぶせた布団を凝視していました。
幸い、火は消えたように思います。
しかし火が布団の中でくすぶっているかもしれないのですから油断はできません。
トドメとばかりに水を張った浴槽に布団を入れ、水浸しにしてようやく一呼吸つくことが出来たのです。

当然ですが、実家から持ってきた羽毛布団(3万円したらしい)は処分することになりました。
しかし被害らしい被害はこれだけで済んで本当に良かったと思います。
起きるのがあと数分遅れていたならば、消火は不可能になっていてアパート火災になっていたでしょう。
他の住人を巻き込む火災を起こしてしまえば一生償いをしなければならず、結婚することも絶対になかったでしょう。
起きるのがあと5分遅れていたならば煙を吸い込んでしまい、焼死していたかもしれません。


安物買いの銭失いということわざがこれほど身にしみた経験はありません。
以上、コスパと節約に血道を上げて危うく焼死しかけたお話でした。


追記

電気ストーブはその日のうちに処分しました。
ちなみに発火時はストーブと布団は触れてはおらず、強設定にしたストーブと布団の距離は50cmはあったと思います。それで燃えました。
同じような使い方をされている人は是非気をつけてください。

私はそれからストーブ類は二度と使うまいと心に決めて、いくら電気代が高くなってもエアコンを使うことにしています。