弱き海賊には薔薇の花がよく似合う
Bリーグ2023-2024シーズンのレギュラーシーズンも最終節を残すばかりとなった。残り2試合、ビーコルを一生懸命に応援したいと思う。
Bリーグを観るようになって好きなチームを無心に応援する楽しさを知った。いや、思い出した、といったほうが適切だろうか。思い出させてくれたのはB-ROSEだ。
◇ ◇ ◇ ◇
1978年4月、横浜に野球スタジアムができた。本拠地として使用するチームは横浜大洋ホエールズである。当時小学生だった私は地元にプロ野球チームが誕生したことに心を躍らせた。
国鉄の関内駅で今は亡き父と待ち合わせ、訪れた真新しい横浜スタジアム。今でも球場に足を踏み入れた時のなんともいえない高揚感を覚えている。
声を張り上げ応援し、大洋が得点した時には新聞紙を切り刻み仕込んできた紙吹雪をまき散らす――私のはじめてのライブでのスポーツ応援体験。この楽しい時間はずっと続くと思っていた。けれどもそうはならなかった・・・なぜなら
横浜大洋ホエールズがめちゃくちゃ弱かったからである
友達がかぶる巨人や阪神のキャップが眩しかった。皆が王や掛布の話題で盛り上がる中で「田代がさぁ」と切り出す勇気が当時の私にはなかった。
いつしか私はユニホームが好みでそれなりに強豪であった中日ドラゴンズへと鞍替えすこととなり、横浜スタジアムからは足が遠のいていった。
そんな日和見のようなスタンスでの応援は長続きしない。私は野球観戦自体の熱意を失い、以後、Bリーグを観るようになるまでは特定のスポーツチームを応援するといったこととは一切無縁であった。
時は流れ、ふとしたきっかっけで興味をもったBリーグ。自分でも驚くほど引き込まれた私は、当然地元・横浜のチームであるビーコルを応援しようと国プへと足を運んだ。そして数試合を見終えた私は長い階段を下りながら思った。
やべぇ、横浜ビー・コルセアーズめちゃくちゃ弱え・・・
40年ぶりくらいにフラッシュバックするあの感覚。地元チームを応援したいのはやまやまだが、大丈夫か?なんかヒョイと投げれば得点を決めるチート外国籍がいる川崎の方がいいのか?大正義のトヨタにしておくか?
そんな不埒な私の目に映ったのがB-ROSEの華麗で気高い「cheer」である。
連敗から脱出できないどん底のチーム状況にあって、決して笑顔を絶やすことなく、声を張り上げ選手を、そしてブースターを鼓舞するB-ROSE。
スポーツ観戦とは縁遠くチアリーダーのことをよく知らなかった私は、おおげさではなく感動した。「ああ、これが応援するってことなんだ」と。強さを誇るのではなく、弱さを叱咤するのではなく、ただただ純粋に鼓舞し背中を押す。
なんとも清々しいじゃないか。横浜の気高き薔薇。
さて。薔薇は美しさの象徴である一方で、時に退廃の暗喩にも用いられる。
類まれなる才能でアメリカのミュージックシーンを席巻するも、薬物により27歳の若さでこの世を去ったジャニス・ジョプリン。彼女をモデルにしたとされるのが映画「The Rose」で、同名の主題歌を主演のベッド・ミドラーが歌っている。
人々が愛を口にするとき、その陰にはいくつもの「弱さ」がある。
躍進した作シーズンから一転、今シーズンのビーコルはいろいろと辛かった。挫けるのを恐れて、覚めるのを恐れて、与えようとせず、ブースターたちは崩壊するチームの終焉を恐れ、目前の試合を楽しめないでいたことも多かったことだろう。
弱いビーコル
古くからのブースターは「ああ、またか」と嘆き、昨年の躍進からファンになった人たちは少なからずショックを受けたかもしれない。選手も運営も意気消沈しているように見える。
弱さは奥底まで染み込み、たやすく拡散する。SNSをネガティブな言葉が侵食していく。
そうだ、B-ROSEは? 皆を鼓舞するB-ROSEは心が折れていないだろうか?
けれどもベッド・ミドラーは歌う
大丈夫。弱さに心が押しつぶされそうになっても、あたたかな愛に背中を押され、いずれ花咲く時が来る。
In the spring Become the ROSE
来シーズンの春、CSで躍動するビーコルの姿が、変わらぬ笑顔で皆を鼓舞するB-ROSEの姿が目に浮かぶ。
ラスト2試合。このメンバーのチームを、そしてB-ROSEを試合で観ることができるのはこれが最後だ。
弱き海賊には薔薇の花がよく似合う
意地を見せろよ海賊たち! 最後まで咲き誇れB-ROSE! ゴービーコ―
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?