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DJブース構築奮闘記 〜10年に渡る試行錯誤の末路〜 ❶DJブースに求める6つの条件

 DJブースにはロマンがあります。
 所狭しと並べられた機材群。それらの電源を一つずつ入れていくと、きらびやかなLEDがまたたきだし、それは宇宙船のコクピットさながら。そして、その宇宙船はDJの巧みなオペレートによって動き出し、どこまでも飛んでいけるのです。
 そんな夢のマイDJブースを自宅に構築したい…。DJなら誰しもがそう思うのではないでしょうか。
 しかし夢むなしく、ほとんどの場合は日本の住宅環境と同居人がそのロマンを許しません。
 ただでさえ狭いリビングに広大なデッドスペースの塊を鎮座させ、深夜にはそこから妙な音楽が鳴り響き、そっとドアをのぞいてみるとニヤニヤしているだけの男がひとり立っているのです。
 DJに全く興味のない同居人が発狂するのは時間の問題です。

 DJブースはロマンです。
 しかしロマンだけではDJブースは実現しません。そこに高度な知識やアイデア、そして同居人との交渉術が加わり、ようやく構築されるのです。
 これは10年に渡る私のDJブース構築にまつわる奮闘記。
 まだ見ぬDJブースに思いを馳せるあなたも、今あるDJブースで悩めるあなたも、是非一度は目を通してみてください。 
 必ずどこかに役立つヒントがあるはずです。



 私のDJブースに求める条件は6つあります。逆に、この6つの条件が全てクリアされたDJブースは、自宅用DJブースとしてはかなり最強の部類になるといえます。

❶拡張性 〜機材は必ず増殖する〜

 昨今のDJ機材は非常にコンパクトです。極端なことをいえばiPhoneが1台あればDJができてしまいます。
 かくいう私も当初は「幅30cmのDJブース」を売りにしていました。
 一昔前の大がかりなDJ機材を知っているだけに、「省スペースでDJができる」ということが、新時代を感じられる喜びだったのです。

Traktor Kontrol Z1とノートPCだけの30cm DJブース

 しかしそれもつかの間、すぐにプラッターのあるコントローラーが欲しくなりブースの幅は60cmほどに広がります。

Vestax VCI-400でブースの幅は約2倍に

 ところが、回らないプラッターやmidiコンのおもちゃ感に馴染めず、結局ターンテーブルを使ったDVSシステムに移行します。
 なんと約2年でブースの幅は30cmから120cmに。恐ろしいほどの増殖力です。

ターンテーブルを2台並べたDJブース

 機材は放っておいてもどんどん増えていきます。それに対応すべく、拡張性のあるDJブースが1つめのポイントです。

❷分解性 〜引っ越しや模様替えにも即対応〜

 私の経験からすると、「引っ越し」と「模様替え」はある日突然やってきます。理由は急な転勤であったり、結婚や育児など様々です。また、同居人からの「怒りのブース移動勧告」や急な「気まぐれ模様替えの提案」なども、長く生きていれば当然起こり得ることでしょう。
 その際、DJブースが完全に分解できると非常に便利です。
 もちろん、分解せずに運ぶ方法はいくらでもあります。大きな車をレンタルし、友人などを呼び寄せればいいのです。作業後に寿司でも食べさせれば大抵は満足して帰っていきます。
 しかし分解ができるのであれば、小さな車で自分一人で移動ができます。同居人から突然のブース移動勧告を受けても即座に対応できます。
 長くDJを続けるなら避けては通れない「引っ越し」と「模様替え」に気楽に対応できる分解性も重要なポイントです。

❸堅牢性 〜ブースも己もタフであれ〜

 上述した分解性は、実は堅牢性とセットでなくてはなりません。
 有名な話ですが「IKEAの家具は引っ越し業者に断られる」という都市伝説があります。私の経験でも、組み立てたのだからバラせるはず…と分解してみたらビスが折れたり穴が広がったりで、瞬時に粗大ゴミが作られました。
 分解しても復元できないのであれば全く意味がありませんので、パーツの堅牢性は重要なポイントです。
 また、組み上がったブースが歪んでいたり、簡単に壊れるようではお話になりません。高額の機材やノートPCなどを設置するわけですから、年月がたってもガタつかず堅牢なDJブースが理想です。

❹耐振動性 〜ブースが揺れれば気持ちも揺れる〜

 上述した堅牢性の延長線上に耐振動性があります。つまり揺れないDJブースです。
 例えば、私はターンテーブルでスクラッチの練習をするのですが、ブースが揺れると針が飛んでしまいます。「揺れ」はスクラッチには天敵です。
 また、昨今はPCDJスタイルが増えております。その場合、ノートPCをラップトップスタンドに載せてDJをする方が多いと思いますが、ブースが揺れるとノートPCがぐらつきます。
 「揺れ」は非常にストレスになるし、また常に不安な気持ちがつきまといます。ブースもDJ本人も、やはり安定が大事。
 DJブースを構築するには耐振動性堅牢性をセットで考えます。

❺調節機能 〜ブースの高さは必ず変えたくなる〜

 欲をいえば、DJブースの高さは自由に調節ができると二重丸です。
 ブースの適切な高さは80〜100cmといわれていますが、最初は自分に合った高さがわからないので色々試します。よくプレイをするクラブのDJブースと同じ高さに揃えたい、そんなニーズもあるでしょう。
 また、個々の機材の高さは意外にもまちまちなので、機材を入れ替えた際、高さが変わってやりにくくなるということもあります。
 DJブースの高さ調節機能は、こだわりのあるDJならあって損はありません。

❻安価であること 〜DJブースにそんなにお金かけたくないです〜

 DJであれば誰しもが思うことですが、資金は極力機材に回したいものです。もしくはレコードやCDの購入費用。または高級ウイスキーがないとDJができない…という方も実は世の中にたくさんいるのです。
 「DJブースごときに数万も出すぐらいなら机でいいや」が「なんだそんなに安くできるならブースを導入してみよう!」となるような価格が望ましいです。
 できるだけ安価にブースを構築し、残った資金でお酒を買いましょう。

6つの条件を満たすもの、それはスチールラック

 上述した条件をもう一度見てみましょう。
・拡張性
・分解性
・堅牢性
・耐振動性
・調節機能
・安価

 つまり、DJブースたるもの、せっかく構築するのであれば…

機材が増えた時にはブースを拡張でき、引越しの時にはサッとバラせて、再度組み立ててもパーツはヘタらず、スクラッチをしても揺れたりせず、ブースの高さを自由に調節でき、そんな夢のようなブースなのに安く作れる

ということになります。
 この条件に見合う便利なモノはないか…と色々考えた結果、割と早い段階で「スチールラック(メタルラック)」に行きつきました。

 スチールラックは基本的にポールと棚板で構成されています。ブースを拡張したければ後から大きめの棚板に変更する、もしくは新たに棚板とポールでブースを連結・拡張させることができます。これでまず拡張性はクリア。
 当然、バラせるので分解性もクリアです。

 スチールラックの各パーツはメーカーのものを選べばかなり丈夫にできています。例えばルミナスラックの場合、棚板の耐荷重は250kgです。これで堅牢性もクリア。

 スチールラックには転倒防止用の突っ張りポールがオプションパーツとしてあります。これを使って天井から突っ張るとブースが完全に固定されます。耐振動性もクリアです。

 スチールラックのポールには約2.5cm間隔で溝が掘ってあります。つまり2.5cm毎に棚板を高さ調整できるので、調節機能もクリア。

 最後に価格ですが、幅120cm奥行き46cmの棚板3枚と、高さ179.5cmのポール2本、90cmのポール2本、突っ張りポール2本という、私がおすすめするセットで合計が25,340円です(パーフェクトスペース本店のルミナスラックで試算)。

私がお勧めするルミナスラックの最低限セット

 一見すると高いように思えますが、同等のクオリティーのDJブースをサウンドハウスで探すと4万円はします(2万円程度のものはグラつきがひどいです)。
 また、スチールラックは中古パーツがリサイクルショップやメルカリなどにたくさん出品されています。これらを上手に使えば、かなり安価にブースが構築できます。

 以上のことから、自宅にDJブースを構築するならスチールラック(メタルラック)が最適です。

 第1回目はDJブース構築における様々な条件を整理しました。
 次回はスチールラックをメーカー別に4社取り上げ、細かく分析・比較をします。

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