JW580 屯倉誕生
【垂仁経綸編】エピソード2 屯倉誕生
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
紀元前3年、皇紀658年(垂仁天皇27)。
ある日のこと・・・。
ここは、纏向珠城宮。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(以下、イク)は、兄弟たちに、直轄地を設置したいと打ち明ける。
その時、久米押志岐毘古(以下、オシキ)が乱入してきたのであった。
オシキ「こういう時だからこそ、忠義の一族、久米の出番なんすよ!」
のまお「聞いておったのか?!」
イク「オシキ? 出番って、どういうこと?」
オシキ「何、言ってんすか? 俺が、第一号になるって、言ってるんすよ。」
ニカ「ちょっと! 本気なの?」
オシキ「当たり前じゃないっすか。領地の一部を割いて、大王に捧げ奉るっす!」
チック「なんで、そうなるの?」
オシキ「実はですね・・・『日本書紀』において、今年、来目邑に、初めて屯倉が定められたと書かれてるんすよ。ちなみに、来目邑っていうのは、奈良県橿原市の久米町のことっす。」
イカッピ「屯倉? 屯倉って、何なの?」
オシキ「大王の直轄地のことっす。ここで採れた米は、全て、大王の物になるってことっすね。」
イク「来目邑か・・・(´;ω;`)ウッ…。」
オシキ「えっ? どうしたんすか?」
イク「エピソード494から496のことを思い出したんだよ・・・(´;ω;`)ウゥゥ。」
倭彦「大王・・・。亡き大后、狭穂姫こと『さっちん』様のことを・・・。」
ヤサク「謀反が発覚したのは、来目邑でござったな・・・。」
イク「悲しい思い出の地が、初の屯倉の地なのか・・・(´;ω;`)ウゥゥ。」
オシキ「ちょっと、待ってくださいよ。大王を泣かせるために、名乗り出たんじゃないんすけど・・・。」
イク「分かってるよ。オシキの忠義が、本物だということも、涙の理由だよ。」
のまお「されど『日本書紀』には、オシキが献上したなどと、書かれておらぬぞ?」
オシキ「たしかに、そんな風には書かれてないっす。初の屯倉を設置したとしか・・・。」
倭彦「作者オリジナル・・・ゴホンッ・・・設定ということか?」
オシキ「あれ? 倭彦様? 病に罹ってるんすか?」
倭彦「障りない・・・。して、捧げ奉った設定となったのは、如何なる理由じゃ?」
オシキ「よく考えてください。来目邑は、俺の領地っすよ? そこに、いきなり、屯倉が出来るなんて、おかしな話だと思いませんか?」
イカッピ「おかしくなんて、無いわ。オシキから、領地を召し上げれば、いいだけのことじゃない?」
オシキ「そんなことしたら、豪族たちが反発して、謀反を起こしますよ!」
チック「言われてみると、そうよね・・・。じゃあ、一部だけ、召し上げたってことなんじゃない?」
オシキ「なんで、召し上げる方向で進めるんすか? そもそも、召し上げる理由が無いっすよね?」
ニカ「たしかに・・・。」
オシキ「そうじゃなくて、領地の一部を献上して、大王から、褒美をいただいた方が、平和的で、現実的だと思いませんか?」
ニカ「褒美って、何なの?」
オシキ「それは、よく分かんないっすけど、特権を与えられるとか、鏡のような、宝物をいただくとか、美味しい食べ物をいただくとか・・・。」
ヤサク「されど、いきなり、オシキが献上すれば、他の豪族たちが、訝しがるのではないか?」
オシキ「もしかしたら、俺の方から、鏡が欲しいとか、大きな前方後円墳を造りたいとか、御願いして、その代わりに、領地を捧げたのかもしれないっすね。」
のまお「なるほど・・・。オシキの方から、申し出たとあらば、訝しく思う者も出て来ぬな・・・。」
オシキ「そして、それは、あらかじめ、大王と示し合わせたことだと思うんすよね。」
イカッピ「なんで、そうなるのよ!」
オシキ「だって、久米っすよ? 忠義の一族、久米っすよ? 神武天皇のお膝元、橿原宮の傍に、領地をいただいた、信頼できる家来っすよ? そうっすよね? 大王?」
イク「そ・・・そうだね・・・(;^_^A」
こうして、なにはともあれ、屯倉が初めて設置されたのであった。
つづく
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