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【エッセイ】心配事に火をつけろ(900字)

今回もラジオネタ。最近ラジオネタが多い。マスメディアの中でラジオは新聞と並ぶましな媒体だ。だからよく利用する。

昨日NHKの「ちきゅうラジオ」という海外の最新文化をポップに紹介するものを聴いた。生憎聞き逃し配信なし。おそらく音楽中心なので著作権の関係と思われる。その中でパキスタンの音楽番組から人気に火がつき、今やYouTubeで7.2億回も再生されているというウルトラヒットのPasooriという曲が取り上げられた。

何がいいのかパキスタン人やインド人じゃないから言葉がわからんので全くわからない。パキスタン人やインド人が日本のメガヒットである米津玄師のLemonやKing Gnuの白日がわからないのと同じだ。

米津玄師のLemon 視聴回数8.5億回(2024/3/31現在)、6年前公開

King Gnuの白日 視聴回数4.7億回(2024/3/31現在)、5年前公開

(こういう才能ベースの評価だけは再生数の価値がある)

しかしその番組中の曲の解説に心打たれた。

この曲は男女のデュエットで男性の方がこの曲を作った。ある日その男性がドライブ中に「心配事に火をつけろ」と書かれたトラックを見かけこの曲のインスピレーションを得た。彼はそれを失恋や人生の失敗などに頭悩ませるのではなくありのままを受け入れて進もうという前向きなメッセージと捉えた。

これを聴きながらこの一週間ずっと聴いている「絶望名言」に似ていると思った。絶望名言の本を少し読んだ。著者の頭木弘樹さんによると、たとえば失恋した時には失恋ソングが聴きたくなるように絶望した時には絶望に寄り添う言葉の方がしっくりくる時があることからこの番組をはじめたというようなことが書かれていた。

なんだかシェークスピアが悲劇ばかり書いたこともこれが原因じゃないかなと思う。先述の米津玄師のLemonは祖父へのレクイエムだし、King Gnuの白日は失恋歌だ。メガヒット曲が悲しみを題材にしているのは悲しみは共感を得やすい上にファジーだからだろう。過去の自分の悲しみと重ね合わせ易い。

悲しいことや辛いことは起きない方がいい。みんながずっと幸せな方がいいに決まっている。でも人生って全くうまくいかないものだ。それは理想が高すぎるからだろう。絶望は我々の理想というハードルを下げる役割があるのかもしれない。

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