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イースター(Páscoa)で思い出す悪夢〜スマホの盗難未遂事件


 本日、3/30(土)ブラジルは、三連休であるイースター休暇の中日です。ブラジルにおけるイースターの過ごし方については過去に記事にしたことがありました。

 パンデミックの最中に書いた記事でした。不自由な暮らしを強いられていたなんて、あの日々が今となっては幻のようです。

 今年のイースターは家族それぞれが思い思いに過ごしています。
娘はBFくん、そのご家族とサンパウロの街から60kmほどところにある海岸へ。

Guarujá,  SP(サンパウロ州のグアルジャの海岸)

 息子は朝から陸上の大会に出かけていました。夕飯はレストランで、GFちゃんファミリーとイースター&ご家族のどなたかの誕生日のお祝いがあるようです。よって夜は私たち夫婦二人きり。子供たちが大人になると休日の過ごし方も変わっていくものです。

夫が私に贈ってくれた、チョコレートの卵
空洞な卵の中身はこんな風になっています


 イースターというと、毎年思い出してしまうある出来事があります。独立した記事にはしていなかったと思いますが、コメント欄での交流でこのエピソードについては触れたことがあったと思います。既にご存知の方もいらっしゃるでしょう。今回は自分の備忘録的にその事件について書いてみようと思います。


***


 あれは6年前のイースター直前のことでした。例年のように、贈り物用のチョコレートを全て用意したつもりでいたのに、当時我が家に通ってくれていたお手伝いさん(の娘さん)の分をすっかり忘れていることに気づいたのです。

 普段の買い出しをする必要もあり、車で大型スーパーに向かいました。この時期のスーパーは、頭上の棚からいろいろなメーカーのチョコレートの卵が吊り下がっていて、カーニバルに続いて「お祭り」と云った様相です。

スーパーの陳列
どれにしようかな

 平日の昼間だったので、それほど店内が混み合っていたというわけではありません。車の運転が苦手な私が車を出すのは、駐車が簡単な平日にと決めていました。

 「どれがいいかな」と、娘さんの年齢を考えてチョコレート選びをしていた時です。私の後方から不自然に密接してくる女性がいたことに気づきました。振り返るとニコッ。「あら、ぶつかってごめんなさい」という感じでした。

 その女性も気になったのですが、私の目が釘付けになったのは、私の目の前に立ってチョコレートを選んでいた男性の方でした。まさに「お金に糸目を付けず」という感じで、信じられない数のチョコレートを頭上の棚から外していたのです。

 家族や友達が多いのかな、それにしてもすごい。レジでの支払いも大変そう、などとぼんやりと考えていました。私の方は一つのチョコレートを無事に選び終わり、別の売り場へと足を向けていたのですが、胸騒ぎがしました。バッグの中に手をやると、スマホがありませんでした。やられた、あの女性だった、と思いました。

 パニックになりながら入口の方を見ると、先ほど私に纏わりついていたあの女性が、例の男性と店を出るところでした。男性はもう大量のチョコレートの卵など抱えてはいません。女性はバッグすら持ってはおらず、注意深く見ると素手にスマホ二台を持っています。紛れもなく一台は私のものでした。

 咄嗟に飛び出して、その女性の腕を掴んでいました。「返しなさい!」と叫びながら。二人は脱兎の如く駆け出しました。女性は私のスマホを持ったままです。騒ぎを聞きつけて、スーパーの警備の方々も飛び出してきました。

「警察を呼ぶぞ!」

 その声を聞いて観念し、女性は私の方にスマホを投げつけて来ました。最後の抵抗でスマホのケースを剥ぎ取って。裸のスマホを地面に。全てスーパーの敷地内で起こったことです。

 まるで映画かドラマのような展開でした。二人では走って逃げるのではなく、仲間が横付けにしていた車に飛び乗りました。こうなったら急発進する車を見送るしかありませんでした。

 皆グルだったのです。異様な行動をとって自分に気を惹きつけ、周りを見張るもの、その隙にバッグに手を入れてスマホを盗むもの、逃走を手伝うもの。

 「スマホは返って来たのね、ならよかった。」スーパーの警備員の方たちはそんなあっさりとした対応でした。そんなことは日常茶飯時で、もう慣れっこなのかもしれません。私は怪我を負ったわけでもなかったし、被害は結局のところスマホケースひとつなのだし。

 茫然としながらやっとの思いで自分のカートの場所に戻ったらまた衝撃が。あの男性が両手いっぱいに抱えていたチョコレートたちが何故か私のカートに(泣)あの男性が放ったらかしにしたチョコレートを、同じく放置された私のカートに誰かが放り込んだのでしょうか。

 その後はその他の必要なものを買うことが出来たのかどうか。今となっては記憶も朧げです。チョコレートを持って帰ったことだけは覚えています。

 警備員の方には「あんな危ない真似をしてはいけないよ」と言われました。それはごもっとも。彼らはスリでしたが、武器を持つ強盗だった場合は命の補償もありません。その点は冷静になって反省しました。そして、どんなに安全な場所でも気は抜かず、バッグは自分の前に回すべき、ということを再認識しました。

 犯行の一部始終はお店の防犯カメラに映っているでしょうし、彼らが戻ってくる可能性は薄いけれど、カートを駐車場に運んで荷物を車に詰め込むまで、警備員さんにいてもらいました。あんなことをしながらもやはり怖かったのです。

 肝心のスマホは、コンクリートに投げつけれたのに奇跡的に壊れてはいませんでした。保護ガラスも無事だったし、側面にほんの小さな傷がついただけ。もちろん機械的にもダメージはなく問題なく使うことができたのです。

 最新の機種ではなかったとはいえ、購入してほんの数ヶ月しか経っていませんでした。ケースは盗られてしまったけれど、勉強代として諦めることが出来ました。


 この話には後日談があります。事件から3ヶ月ほどして、日本に帰国した時のこと。手頃なお値段で丈夫そうなスマホケースがあったので購入することにしました。この機会にと保護ガラスも新調しました。ケースを取り替えるときに、店員さんが「あれ?」という反応をされました。拭いても拭いても取れない汚れ。

「あ、それはキズですから」

「え〜、キズですか⁉︎」

 こんなところに?なぜ?と納得されない様子でしたが、もちろんあんな物騒なエピソードを話すことは出来ずに黙っていました。若いお姉さんを驚かせてはいけないですから。

お姉さん、それは汚れではなくてキズ

 あれから6年が経ち、スマホには次々と新機種が出ていますが、私のそのスマホは現役で働いてくれています。落下させることもほとんどないから(性能は他機種より劣っていても)見た目もきれいなままです。保護ガラスもあれ以来新調していません。

 ケースから透けて見えるキズを眺めては、今でもあの時の恐怖を思い出しています。特にイースターの日が巡ってくるこの季節には。


【追記】
 イースター当日(3/31 (日) )の今朝のサンパウロは快晴です。

イースターは春分(南半球では秋分)の日の後の、最初の満月のすぐ後の日曜日を指します


夫が初めて挑戦した、ポルトガルの干し鱈の料理
Bacalhau Gomes de Sá


Happy Easter!!
Feliz Páscoa!!



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