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実践コミュニティをレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで作りだす(1)潜在

 すでに20年以上も前の書籍となっている上掲書(原著と日本語訳と共に2002年)ではあるが、日本ではコミュニティを作り出し、地域や企業の活力にしようということへの関心や成功事例への着目度はまだまだ高い。

 本書では「共通の専門スキルや、ある事業へのコミットメント(熱意や献身)によって非公式に結びついた人々の集まり」を実践コミュニティと呼び、その実態とマネジメントについて論じている。

 この実践コミュニティについての理論を展開するにあたり、著者たちは「実践コミュニティの発展段階モデル」というものを提示している。
 これは以下の5つの段階からなる。

 1.潜在
 2.結託
 3.成熟
 4.維持・向上
 5.変容

 この発展モデルに従って実践コミュニティのマネジメントを考えるとともに、そこにレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドが関われるのかについて考察していきたい。

1.潜在の段階の活動ポイント

 この段階で重要なことは、人々がどのような問題に向き合って、どのような協働への障害を抱えているかということを探ることである。
 また、その問題についてすでに取り組んでネットワークを持っている人達がいる可能性がある。それを無視して実践コミュニティを立ち上げようとしても仕方ないのでその点のリサーチも重要となる。

 つまり、人々の間で解消されないままでいる問題を発見し、いままでにないつながりによって状況を打破できるかもしれないと、実践コミュニティのメンバー候補者に想像させる必要があるということである。

 特に企業組織の中に実践コミュニティを生み出す場合には、活動資金や参加奨励の確保も必要である。そのときには、新たなコミュニティでその問題を扱うことが、その組織(でコミュニティへの参加を奨励する上司)とコミュニティのメンバー候補者の両方にそれぞれ価値のあることだと示すことが重要であるという。

 また、メンバー候補者たちを引き寄せ、確実にネットワーキングを進めるために、前者のために「思考(ソート)リーダー」が、後者のために「コーディネーター」の役割を担う人がいることが望ましい。

 思考リーダーは、豊かな経験で尊敬を集めている実践者もしくは最先端の問題を力強い言葉で言語化できる人である。

 コーディネーターは人々の間を歩き回り、人々をつなぎ参加を呼び掛けることに長けた人である。

 これらの人に参画してもらうことによって多くの人がそのコミュニティへと参加を決めるようなことが期待できる。コーディネーターを任命してコミュニティ構築を進めることもあるが、その時にはコーディネーターがその役割に十分な時間を割き、専門性も高めるよう努力することが重要となる。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで「潜在の段階」のコミュニティをどう支援できるか

 潜在の段階から実践コミュニティの立ち上げにおいては、まず人々が感じている問題を顕在化させることがポイントとなる。
 本書では一人一人にインタビューをして回るという方法が紹介されているが、実践コミュニティが立ち上がらないのは、問題を言葉でなかなか表現できるほどに言葉で掴んでいないからであって、そこをレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドでモデル作りを通じて見える化し、ストーリーとして語ってもらうことが有効であろう。そのモデルの中では既存のネットワークの存在とその努力のストーリーなども語られるだろう(表現されていなくても質問で引き出すことはできるだろう)。

 もちろん、浮かび上がる問題は一つではないかもしれない。どの領域でも多くの問題が隠れていることは普通である。
 そのため、問題をモデルで作ってもらったのち、ランドスケープなどを行ってモデル(問題)間の相互関連性などを明確化することが重要かと思われる。そこから、新たな実践コミュニティが取り組むべき優先的な問題を見つけ出すことができるだろう。

 また、問題を解決した理想の状態をモデルで作ってもらい、それらを共有することによって人々のマインドを協力する関係へと導く方法もありそうだ。それは、実践コミュニティが何を成し遂げようとしているのかについて他の人に語るための素材となりそうだ。

 一方で、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドでは支援できない点としては「思考リーダー」や「コーディネーター」の選定の部分である。上記のワークを通じて参加者が新たな実践コミュニティへのコミュニティの期待を高めたのちに、ワークを終えてから、これらの役割にふさわしい人々について話し合ってもらう時間をつくるのがよいだろう。

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