大人になったなぁ


と、偶然再会した昔の知り合いに言われた。

うん、そうだね。
もう26だしね。
大人だね、お互いね。

自分ではあんまり自覚はないけれど、たまに「あぁ私大人になったなぁ」と思う時がある。

我慢を覚えたり、逆に無駄に我慢することをやめたり。
そういう風に、いつの間にか少しずつ大人になっていた。

だけど6年経ってもブラックコーヒーは苦手だし、わさびも食べられないし、嫌だ嫌だとわがままを言いたくなる日もある。

だけどそれをぐっと飲み込んで、出されたコーヒーはちゃんと飲み干すし、たとえお寿司にわさびが入っていてもちゃんと食べるし、聞き分けよく「分かった」と返事をする。

きっとあの人が言った「大人になったね」は見た目に関してなのだろうけど、中身もそこそこ大人になったよ。
思ってた26歳よりは子供だけど。

生足のJKを見ると「身体冷やしちゃいかんよ、、」と何より先に思う。
自分も昔は生足で短いの履いてたくせにね。
クルー丈のソックスと膝より上のスカートだったよね、あの頃のJKって。少なくとも私は。
25デニールのタイツなんて、履かなかったもん。


どうしてかは分からないけど、私にかけられた魔法が解け始めた。
魔法であり、呪いであり、泉であり、泥濘であり。

私はいつもどこか冷静な部分があって、それが強く出てしまうととても行動的になる。よくない意味で。
突発的に行動しては退路を断つ癖がある。
それは本当に冷静な状態なのかは分からないけど、多分絶対違うけど、私に対する私の監視の目が強まるといつもそう。
今もずっと、そうしてしまいそうな自分を必死で押さえ込んでいる。

清く正しく美しく、誠実に、清廉に。
そんな柄でもないくせに、そんな生き方してこれなかったくせに、私の無駄な生真面目さが顔を出して、強引に、骨を砕いてでも正しい道を歩ませようとする。

目を背けていた小さな違和感がどんどん大きくなって、見て見ぬふり、気づかないふりを続けていたけど、魚の小骨のように飲み込めず引っかかってしまったら、そればかり気になる。
本当にきっかけは些細なことなのに。
気になって、気になって、少しずつ魔法が解ける。
冷静な私が、気付いてるよね?分かってるよね?と私の肩を揺らし諭してくる。
初めから気付いていたし、分かっていたけど、気付きたくないし、分かりたくないし、今が楽しいから何も言わなかったし言えなかった。

知らないふりをしていれば、いつか本当に知らなかったことにできると思っていた。
できるわけないのに。
案の定、目を背け続けていたらとうとう背ける先さえ無くなった。
目の前にいるのに、何も見えないし何も聞こえないし何も分からなくなった。

大人になったから、昔みたいに我慢できない黙っていられない、ができなくなった。
そんなものよね、と自分の中で折り合いをつけて。
期待することが下手になった。



私は賢くないけど、そこまで馬鹿じゃなかったみたい。


残念。
私が1番そう思ってる。
「楽しい」に溺れていられたらよかった。


魔法が解けたら、私はどうなるんだろうか。

分からないけど、旅にでも出ようかな。



最初に書いた、再会したのは↓の彼です。

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