不思議なお財布。
お財布はできるだけいいものを使おう、それもきちんとした愛着をもって大切に大切に使おう。
どんなお財布を使うか、ということに対してこだわりを持っているのは私の妻で、なぜそういう考えにいたったのかはわからない。
が、ある意味でスピリチュアルなのだけれど、普段から持ち歩くものにはこだわりを持ったほうがいい。特にお金が絡むものに対しては一層のこだわりを持ったほうがいい。
お財布はその最たる物だ。
…
今年の春、お財布を変えた。私も妻も一緒に変えた。どんなお財布を使うべきだろうか、と思って色々と探した。
探した結果、私は札幌市内のデパートで「これだ!」と思えるお財布を見つける。黒の長財布。お財布の金額は、大学生が週4のアルバイトを1ヶ月間やったくらいの金額だ。妻も色々と巡り探して、これまた長財布に決めた。
買ったお財布はすぐには使わなかった。一粒万倍日とかなんかよくわからない縁起のいい日から使い始めることにしたのだ。春先だった。
よくある話、お財布を使い始めるのは「春」がいいとされる。お財布の中がいっぱいのお金で「張る」ように「春」におろす、という例のやつだ。
そのお財布を買ってからしばらくのあいだ、木箱の中にしまって寝かせた。お財布の中には福沢諭吉をたくさん入れて寝かせておく。そのお財布に、たくさんの福沢諭吉の厚み、重さを記憶させるためだ。
スピっているのだが、妻がそうしようというので私もそれに乗っかった。なんだか良さそうな気がするからだ。こういうことをやるかやらないかで何かが変わるのなら、やっておいたほうがいい気もする。
妻にそう言われると弱い。
ついでに、お財布の中には、もしもそのお財布を失くしてしまったとき用に、これまた縁起物の小さくうすい金色の「白鳥」グッズを入れた。小指の爪より小さいサイズだ。万が一このお財布を失くしてしまっても、いつかまた渡り鳥のように戻ってくるように、という願いを込めた縁起物。
…
おととい、仕事で北海道のある地方へ行った。車で片道約3時間をかけて行った。ある街の市長に会うために行ったのだ。
私は車を持っていない。
いつも決まってカーシェアを使う。
もう何年も使っている。慣れたものだ。
市長に会いに行って、さまざまな話をした。うん、いい感じ。市長との会談が終わったあとも、その街の企業へ訪問した。
うんうん、いい感じ。ありがたい。お財布をきちんとしたおかげかな。どんどん色んなところに呼ばれる。妻に感謝。
帰り、また車を走らせて3時間。
事故もなく家に帰った。
これはおとといの話だ。
…
昨日はひたすら打合せだった。お昼ご飯を食べる時間もない。室内にこもって次から次へとやってくる打ち合わせをさばいていく。
うん、いい疲労感。なかなかにいい。noteは全然読めていない。Twitterも見る時間がない。あぁ、少しヒマがほしい気もする。スタエフをやる余裕もない。
朝から何も食べず、夜の21時に家に帰った。夜ご飯を食べながら、今日のできごとを妻に報告する。妻は「ほーう」と聞くけど「ちょっと疲れてるだろうから週末1日くらいは休むのよ」と言ってくるので「ほーい」と言って眠る。
…
今日。
朝9時半から15人の前で話した。仕事に関する話。資料を作って分かりやすく話す。約20分話した。話終わると拍手がわいて、まずまずの達成感。
もっと、もっとやらねば。
なにか強迫観念にも似たものに追いかけられている気はするけれど、絶対立ち止まらない。
10時になったので次の企業との打ち合わせのため移動する。10:30に商談がスタートする。70代の経営者らと1時間ああでもない、こうでもないと話す。
11:45。
ふとスマホを見てみると、取引先でお世話になった同い年の男性、佐々木さん(仮名)からLINEがきていることに気づいた。ちなみにで言うと、彼は来月、異動で千葉県に行ってしまう。
ええっ!?
商談そっちのけでカバンの中をまさぐる。たしかにお財布がない。マジか。そうかおととい、カーシェアで使った車の中にお財布を置き忘れたんだ!
昨日は1日中、お財布を使わなかったんだ!
失くしたことにすら気づかなかった!
というか!
拾ってくれた人が私の関係者であるという奇跡!
うれしい!
今日の14時。
札幌市内で佐々木さんに会った。
彼の手には私のお財布がにぎられていて「ダーキさん、ミラクルですねぇ」と笑顔だから私も「マジでミラクルすぎてエグい!」と満面の笑みだ。
お財布を受け取った私は、ふと彼の異動話を思い出した。
「そういや佐々木さん、千葉に異動だそうで」と言うと「そうなんです、ダーキさんにはお世話になったのに」と悲しそうだ。
「いつ札幌に戻られても大丈夫なように、こっちはバッチリやっときますから、マジでがんばってください」と言うと「また絶対に戻ってくるんで、必ず会いましょう」と言うので「このお財布みたいですね」と笑う。
こうして、
お財布は私のもとに帰ってきた。
まるで白鳥のようだった。
…
佐々木さん、いつか北海道に戻ってきたら。
また必ず一緒に仕事をしよう。
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