札幌に来るなら6月下旬。
5月の札幌は雨も少なく、湿度も低く、カラッとした晴れの日が続いている。照りつける太陽の光が肌を刺激することもなく、ただじんわりとほのかに暖かい空気が身体を包んでいて、上空を見上げると雲ひとつないうすい青が広がっている。
自転車をこいでいると、ガスマスクをつけたおっさんとすれ違った。あごの下に2つの通気口みたいなものがぶら下がっているガチのガスマスクである。
そんな人は見たことがなかったので「ダースベイダー? コスプレか?」と思ったのだけど、ガスマスクおじさんの服装は黒くもなく、当然黒いマントは背中になびいていない。なんなら「SPLASH」という英語が書かれている。
少しガスマスクについて考えて次の瞬間思ったのは、おそらく花粉対策であろうということで。よくニュースで「今年の花粉は〜」とか「花粉症が猛威を振るっている」みたいな報道が流れるけど、北国に住んでいると私だけかもしれないが、花粉症とは縁がない。北海道にはスギがないのだ。
でも最近はシラカバ花粉がうんたらかんたら、という報道がローカルニュースでもよくされるから、少しずつこの街でも花粉症を自称する人が増え始めているのも事実で、だからおじさんはガスマスクをつけていたのだろう。
街中で自転車に乗りながら信号待ちをしていると、2人の男性が隣に立っていた。ひとりは髪の毛のサイドをきれいに刈り上げていているものの、トップの部分には髪があり、それをオールバックのようにして、後頭部でチョンマゲのように結んでいる。チョンマゲおじさんはTシャツを着て体型はふくよかで、よく刈り上げられた髪の毛を見てみると少し白髪が混じっている。
もう1人の男性に目をやると、これまたTシャツなのだが、特に特徴はない。平日の日中にTシャツ姿で少しふくよかで、髪の毛をチョンマゲにしているおじさん。こういう人が本当の成功者なのだろうなと思ったりもする。
「いつ札幌に入られたんですか?」「昨日の昼なんですよ」「そうですかそうですか。にしても札幌は今の季節が1番いいですね〜」
やや長い信号待ちの間、隣にいる2人の会話が聞こえてきて、この2人は北海道の外からやってきた2人組なのだなと察する。
「湿度も低いですし、カラッとしててね。ほんとちょうどいいですなぁ」
現地にいる人間からすると、本当にいい季節はいまではない。本当に素晴らしい季節はもう少し先である。いまの札幌は晩春といったところで、夜になると肌寒い。個人の主観だが最も快適な札幌は6月下旬だ。6月上旬だと雨が多い。6月下旬ならば雨も少なくなるし、太陽の照りつけはもう少しだけ強くなるが、日柄日中Tシャツでいても不快感がない。
6月の札幌は「初夏」という言葉がよく似合う。
都道府県によって「初夏」という言葉から連想する温度や風の様子は異なるかと思うが、札幌の初夏は暑い日の最高気温が27、8度くらいで、湿度は低く、風はぬるりではなく、さらりと吹く。
大通公園では街路樹がすっかり真緑になり、紫色のライラックの花がこれでもかというほどに咲き乱れている。まるでぶどうのようだ。
ライラックの香りは特徴的で、甘くもなく辛くもない香りがするのだが、ライラックの花の香りを嗅ぎすぎるとたぶん花粉症になるんだろう。
もしも札幌に来るならば6月下旬と書いたけど、ぶっちゃけ言えば、いつ来ても最高の街だと現地の人間は思っている。
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