札幌の空き地に映画が流れる。
札幌には狸小路商店街がある。
古くからあるアーケード街で、東西にまっすぐ、狸小路1丁目から7丁目まであり、もうすこし足を伸ばすと狸小路8丁目、9丁目という幻の場所も存在する。
たしか北日本でもっとも大きなアーケード街だと、どこかで聞いた。
狸小路には居酒屋、お土産屋、ゲームセンター、ラーメン屋、雑貨屋などが並び、まぁ、よくある商店街という、イメージ通りの商店街。
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この狸小路には「空き地」と呼ばれるスペースがある。
むかしは場外馬券売り場だったビルがあった場所のはずだが、その建物を取り壊し、現在は空き地になっている。四方をビルで囲まれた、正方形に近いフリースペース。50m×50mくらいのものだろうか。
土地価格などはよくわからないが、不動産屋さんならば、この場所の価格がおおよそ推定できそうなものである。
この「空き地」というのは、ドラえもんに出てくるような、あの土管があるような雑多なスペースではなく、そこを訪れる人々がくつろげるように、座椅子がたくさん置かれている。憩いの場である。いわゆる土地の有効活用だ。
狸小路の空き地は通称ではなく、公式で「空き地」と名前がつけられている。札幌の土地開発企業が企画しているようだ。
思うにここは、札幌市民でも知る人ぞ知るオシャスポットになりつつある気がする。知る人ぞ知るだから、この空き地がぎゅうぎゅうの満杯になっている様子はあまり見たことがない。
なぜ「知る人ぞ知る」なのかというと、
この空き地ができて、まだ2ヶ月ほどしか経過していないからだ。
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私はここをよく通るのだが、まだ中に入ったことはない。
オシャスペースすぎて、ちょっと気が引けるわけだね。
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さて、先日2023年9月8日(金)と9月9日(土)の夜から、この狸小路の「空き地」で映画が上映された。いわゆる青空映画館である。入場は無料ときた。
どんな映画が上映されたかというと、スタジオジブリ『平成狸合戦ぽんぽこ』である。狸小路で『平成狸合戦ぽんぽこ』だ。
おしゃれすぎる。
狸小路150周年を記念して、スタジオジブリから許可をとり、この企画が成立したらしい。運営事務局の行動力に感服である。
むかし、ニューヨークかどこかでの海で、青空映画館が開催されている様子を何かで見た。外に置かれた大きなスクリーンに映画が上映され、フリースペースにみんなが寝っ転がっている。
さすが、海外。おしゃんだ。
狸小路、いや、札幌で同じことが行われるとは。すばらしい。
空き地の大画面でスタジオジブリ作品を流す。入場料は無料。
この広告効果は、すごいなぁ。アイデアの勝利だ。
いや、広告効果とかは考えていないと思う。狸小路が大好きな人たちが企画したことは容易に想像できるじゃないか。
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私はたまたまこの空き地を通りかかり、映画が上映されることを知った。「マジかよ」と思った。すばらしい取り組みじゃん。狸小路で『平成狸合戦ぽんぽこ』だなんて、シャレが効いてて好きだ。
実際に上映されている時間帯に通りかかってみた。
いつもはまばらな「空き地」には立ち見客までいて、満員御礼であった。いやぁ、いいなぁ。好きだなぁ。
こう考えると、何かを無料で提供する、良質なコンテンツを無料で提供する、ということはGoogleを筆頭とした企業がよく行うものだ。
先義後利とはちょっと違うんだけど、素晴らしいコンテンツを無料提供して、お客さんに喜んでもらう。
この、映画を無料放送して、認知度を上げるというアイデアは他の地域や国ではとっくにやっているものなのかもしれない。「東京では当たり前ですよ」と言われても仕方がない。
でも、
いいなぁと思う(語彙力)。
札幌でも通用してるのだから、他の地方でも使えそうだ。
見習いたい。
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これを書いていて「そういえば」と小さなころの思い出がよみがえった。
育った町の子ども会館で、タイタニックをみんなで観たことがある。ヒロインのローズが全裸になるシーンで、子どもたちみんなで「わーきゃー」言いながら目を隠したものである。
きっと昔の映画館って、いまと違ってもっとわちゃわちゃした雰囲気だったんだろうな、と思う。ニューシネマパラダイスに出てきそうな映画館だ。
私が愛する狸小路を、もっと楽しい空間にしてくださってありがとうございます、って思っちゃう。ほんといい。
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