2018年声優曲kieru的BAEST10

はじめに。
個人用メモ。これは2018年の声優曲の記憶を保存しておくメモです。
①~⑩は発売順で並べました。
2018年07月13日に長年使用していたデスクトップのPCがお亡くなりになりました。
そこからノートPCにメインPCを移行したため、それより以前の楽曲に漏れがあるかもしれない。
通常はiTunesに取り込んだ順で良さげな楽曲を20曲くらい選曲した後、
BEST10の絞り込みを行っていた。
今回はPC復旧した時点で楽曲が取り込んだと判断されたため
2018年1月以降で楽曲の絞り込みが正確にできなかった。
また、兎に角2018年は声優楽曲の守備範囲をあまり広げられなかったため、
2019年はもっと声優楽曲を積極的にインプットしていきたい。
楽曲の良さもあるが、
個人的に感じたその声優への気持ちもかなり含まれている。

■2018年声優曲kieru的BAEST10
①ここから、ここから/玉木マリ(水瀬いのり),小淵沢報瀬(花澤香菜),三宅日向(井口裕香),白石結月(早見沙織)
②SHIFT/Wake Up, Girls!
③Harvest Moon Night/ミコチ(下地紫野),コンジュ(悠木碧)
④ネバギバ音頭/東山奈央
⑤Truth./TrySail
⑥カオティック・ラッシュ・ナイト/小松未可子
⑦パレイド/夏川椎菜
⑧そんなの僕じゃない。/下地紫野
⑨Wonder Shot/安野希世乃
⑩夏目と寂寥/早見沙織

========================

①ここから、ここから/玉木マリ(水瀬いのり),小淵沢報瀬(花澤香菜),
 三宅日向(井口裕香),白石結月(早見沙織)
発売日:2018/2/21(TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」エンディングテーマ)
作詞:ヒゲドライバー
作曲:ヒゲドライバー
編曲:ヒゲドライVAN

ここから、ここから。
良いアニメのアニメ主題歌は良く聞こえる。好きになる法則。
アニメ視聴者の条件反射というか、元来アニメが持っているその法則に
単純に当てはまるのが「ここから、ここから」。
兎に角、個人的には「宇宙よりも遠い場所」は
2018年のアニメの中では生涯のベスト級アニメと言える。
ナニモノでもない少女たちがナニモノかになるために南極を目指す物語。
そのEDとしてながれてくる「ここから、ここから」が
なんとも物語の内容では語られない部分を補うように毎週EDで流れてくる。
===
長いトンネルの出口を探していた
微かな光の匂いがしてる方へ
間違っても 笑えるさ
ここから始めよう 僕は旅に出よう
汚れたまん丸のビー玉 握りしめて
言えなかった言葉も きっと見つかるよ
バカにされたって構わない 信じてゆこう
===
この”バカにされたって構わない”というのは物語の根幹で、
南極を目指している少女たちの世間や友達たちからの風当たりの強さ、
でもその強さに抗うかのように、でもそのバカにされていることを悲観せずに、
自分の道を信じでゆこう。そういう思いがぐぐっと伝わる。
それらの歌詞はそれぞれが歌手活動をしていて声優アーティスト界の第一線に立っているような
水瀬いのり、花澤香菜、井口裕香、早見沙織によって歌唱される。
歌声は非常にのびのびとしていて
日本という大地から南極への思いを馳せることができるような広がりを感じる。
このアニメを演じている声優たちだからこそ、この歌詞の意味をしっかり理解し、
表現者として歌唱表現している。
南極への道が困難だとわかっていても、
それでもポジティブに未来に期待する、自分に期待するようなことを匂わせる歌唱。
そういう地に足をついた声優歌唱表現もまたこの曲の魅力ではある。
それと「よりもい」アニメ中、CMでめっちゃリピートして流れていたのも非常に効果的ではあった。

アニメ主題歌を好きになるということも
いいアニメからはじまる。そう、ここから、ここから。
そういう思いを再認識した。

②SHIFT/Wake Up, Girls!
発売日:2018/2/28(収録:スキノスキルのカップリング曲)
作詞:只野菜摘
作曲・編曲:広川恵一(MONACA)

明日はどっちだWake Up, Girls!曲。
2018年のWake Up, Girls!と言えば「Polaris」であるということはわかっている。
のだけれど、個人的にはこの「SHIFT」が心にぶっ刺さった。
私自身がビックバンド調の声優楽曲、好きという自覚をしつつあるということもある。
コメディというか歌劇みたいな感じで、途中でセリフも入ったりしてかなり”遊び”がある。
歌詞の内容は「オーディションに受かりたい女の子」の心境を表現していて、
まず歌詞の頭から
”合格したい合格したい(オーディション)”で始まり、
サビ前では

まだまだやめちゃだめ その夢捨てちゃだめ
ねぇ期待してはだめ? シフトしちゃだめ?
”と
役者になるという夢を捨てて田舎に帰る選択をするかのような歌詞で構成されている。
Wake Up, Girls!解散という大きな出来事と重ねて感じずにはいられない。
これからのWUGちゃんたちの明日はどっちだ。
それがリアルにあって。
でもその空気感を吹き飛ばすかのようなこのビックバンドの曲。
そのギャップがあまりにも心に刺さる。
2018年11月17日(土)の「ANIMAX MUSIX 2018 YOKOHAMA supported by ひかりTV」
では「SHIFT~恋?で愛?で暴君です!メドレー 」からの
「Polaris」というセトリだったのも印象深い。
横浜アリーナという大きな会場でSHIFTのパフォーマンスをみせる彼女らの姿は、
本当にライブを楽しんでいる姿そのものがあって。
夢を諦めるといったようなニュアンスの歌詞を自信を持ってパフォーマンスする姿がそこにはあって。
そういう彼女らの姿を心の中で感じる一曲となった。

③Harvest Moon Night/ミコチ(下地紫野),コンジュ(悠木碧)
発売日:2018/3/7(TVアニメ『ハクメイとミコチ』ED主題歌)
作詞・作曲・編曲:ミト

2018年ヒーリング効果抜群声優デュオ曲。
「ハクメイとミコチ」も非常に好きな部類のアニメだった。
その好きさというのも相まってなのだけれど、
2018年の超弩級の声優曲としては挙げるとしたら「Harvest Moon Night」はあると思う。
この曲を聴きたさに 2018年6月10日(日)の「ハクメイとミコチ 感謝祭の日」に参加した。
下地紫野さんと悠木碧さん、背丈も同じくらいでとても小さくて、
その時は髪の毛も黒髪でお互いにショートカット。
そのそっくりな二人から発せられる美声に聞き惚れて、
そのびっくりするほどの心地よさに癒やされる。
フィーリング効果が半端ない。
キャラクターソングの延長として、お互いのキャラ特性も含めて優れている声優曲でもあると思う。
アニメ作中内の碧ちゃんのキャラ/コンジュは美声の持ち主で吟遊詩人。
作中で歌を披露する場面もあり、高慢かつ美声キャスティングの碧ちゃん。
いっぽうでミコチ/下地紫野は、
”歌も祭りの歌姫に選ばれるほど上手だが、本人は自覚がない。”というキャラ特性。
自覚のない歌姫というキャスティングはなんだか下地さんの天性のお芝居のナニカと通じるものがある。
(そのナニカを言語化できる感じはしないのではあるが)
その二人の特性も相まって、かつ、碧ちゃん下地さんともにベストアクト級のアニメであるとも言えて。
EDは碧ちゃんパートからの歌い出しがもう毎週鳥肌モノで
”心地良い風吹いたら外でご飯食べよう”の歌声の綺麗さ。
そこに連なるように下地さんの歌声が続いていって、心地よいリズムと歌声に包まれていく感覚。
「Harvest Moon Night」のカップリング曲/挿入歌の
「水底のリズム/コンジュ (悠木 碧)」も会心の声優曲。
アニメの世界観とも合わせることで、真価を発揮するタイプの声優曲であった。

④ネバギバ音頭/東山奈央
発売日:2018/5/30(収録:灯火のまにまにのカップリング曲)
作詞:山田裕介
作曲:山田裕介・金井奏馬
編曲:金井奏馬

東山奈央を中心としたみんなで馬鹿になるための音頭。

多くは語らずに東山奈央ちゃんのブログを見るのがよい気がする。
ネバギバ音頭でネバギバろう!!(2018/7/25 21:08)
https://lineblog.me/toyamanao/archives/9338634.html

オタクたちによる楽しいコールアンドレスポンス曲。
いや、私は別に東山奈央ちゃんにこういうテンション感の曲を求めているわけではないですが、
本人が楽しそうだし、そもそもコンセプトが馬鹿になって騒ごうという音頭なので。
そういう意味で合いの手入れながら、ライブで楽しんだもの勝ちみたいな曲なのだろう。
はっきりいって冷静に考えれば、TOP10には入らない感じでしたが、
やっぱり頭の中で引っかかる曲でもありました。
まだ生で聴いたことないのが残念ではありますが、
この曲の第一印象はすごく圧倒されて。
久々に声優電波ソングちっくなやつが来たな……みたいにワクワクした気持ちになったのは嘘ではない。
ライブで未体感ではあるため、この声優曲が自分にとっていいか、悪いかの判断はできないが、
2018年の声優曲を選ぶ上では避けられない感じはしました。
また本人のラジオで、収録当日に「もっと合いの手いっぱい入れましょう」みたいな話になって、
急遽考えて、沢山合いの手いれて曲制作をしたみたいなことを語っていた。
そういう瞬発力も合わさって完成されたという背景も中々に楽しい。
そのときの語りもなんとも楽しそうで、東山奈央本人、そして制作スタッフ、声優ファン。
これらが渾然となって楽しめる曲なことはきっと間違いないのだろう。
またさらによく言うと、常識を超えて時代を掴んでいるような一曲なのだろう。

⑤Truth./TrySail
発売日:2018/6/6(テレビアニメ「BEATLESS」2クール目のオープニングテーマ)
作詞:メイリア(GARNiDELiA)
作曲・編曲:toku(GARNiDELiA)

SF小説家/ライトノベル作家長谷敏司原作「BEATLESS」の主題歌で
TrySail的には難易度が高いダンサブルなEDM。

個人的に長谷敏司作品とは縁があり、
またTrySailも応援している一つの声優ユニットである。
そういう軌跡のような出会いから生まれた一曲。
別に個人的に奇跡のように感じて、それに対する気持ちが深いため、
そこは普遍的な声優楽曲の良さとはあんまり関係ないだろう。
特に、この曲のここがいいという説明はできないレベル。

2018/07/22 TrySail「Truth.」リリースイベント(一般財団法人全電通労働会館ホール)
でのこの楽曲に対するモチョの一言が印象的だった。
そもそも人生で一度は訪れてみたいイベント会場という約束の地-電通労働会館というのもエモさあった。
Truth.は「BEATLESS」の物語を多く歌詞に汲み取っている。
歌詞の中での一人称がボクであり、以下ではじまる。
===
何がニセモノで 何がホンモノ?
ホントのことはわからないけど
キミにふれたい キミ守りたい
それだけで十分だから
===
もちょ的にはこのボクという一人称と「君を守る」などの王子様的な単語から
少女漫画脳が刺激されるの!と語っていた。
だがしかし、原作小説/アニメの主人公・チョロチョロのちょろいアラトくんとギャップがあるよね、
とも語っていて、会場に笑いを起こしていた。
長谷敏司先生の小説の主人公の性格に対して、
声優が感想を述べるという一生に一度あるかないかの体験ができた。
もはやそれだけで嬉しいという感じがある。
また天氏がEDMの楽曲に対して、ダンス要素はいらない、みたいなトークも印象的で、
逆にナンスはEDM系が好きらしいので、三者三様のトークが面白かった。

⑥カオティック・ラッシュ・ナイト/小松未可子
発売日:2018/7/11(収録アルバム:カオティック・ラッシュ・ナイト)
作詞:小松未可子, Q-MHz
作曲:Q-MHz
編曲:Q-MHz, Tom-H@ck
Bass:田淵智也 / Drums:SHiN / Guitar & All Other Instruments:Tom-H@ck

小松未可子作詞・夜曲。
小松未可子には夜の曲/雑踏/街が似合う。再々認識。

2015年:トウキョウ・ミッドスカイ。作詞:國土佳音。
2017年:真夏の夜のパレード。作詞:小松未可子。
2018年:カオティック・ラッシュ・ナイト。作詞:小松未可子。
これを例えば、小松未可子夜曲三部作とすると、
その集大成がカオティック・ラッシュ・ナイトといえる。
三部作の集大成として相応しい感じで、
演奏はベース田淵、ドラムスSHiN、ギター&その他はTom-H@ckという豪華な布陣。

歌詞も小松未可子らしい悩みと葛藤の中で
今の安定している自分を変化させねばならないみたいなほどよい焦燥感がある。
その焦燥感の中で”夜の気配を数えながら””踏み出してみよう”という気持ちで行動を起こす。
夜の気配は不安な未来であり、それでも未来へ踏み出して覚悟を決める意思が感じられる。
疾走感ある曲調もQ-MHzの得手であり、
それを小松未可子の焦燥/未来を連想させる夜の歌詞。
いつかのライブで
トウキョウ・ミッドスカイ→真夏の夜のパレード→カオティック・ラッシュ・ナイト
という三連続のセトリを聴くのが夢、みたいになってきている。

⑦パレイド/夏川椎菜
発売日:2018/7/18
作詞:ワタナベハジメ
作曲・編曲:山田竜平

消極的な思考をその思考をしてしまっている人たちの心に届ける一曲。
”ああ うまく笑えてたら
今の僕は こんなじゃない”
このサビの歌詞にすべてが詰まっている。
消極的な思考をしてしまいがちな人に向けたナンスからの応援歌とも言える。
夏川椎菜の音楽性として、こういうネガティブだけれど、
そこに一定以上の共感を与えて、不器用ながらも、イバラの道を歩きながらも、
未来へ向かって歩くしかない。
まさに夜から未来へ向かってナンスがあるきだす姿をナンス自身が歌い上げることにより、
その感情に共感した人たちがその有志を感じ、
それが応援歌となる。そういうメソッドが隠れていると思える。
”ああ きれいな言葉とか
言えるほどの 自分じゃない
だけど この夜の孤独を
越えるために
手放せないんだ

私は、
小松未可子の夜の曲にも象徴されるかのような、夜=孤独。
それを抱えて前向きに生きる、
というメッセージ性に弱いということを再認識してしまった。
TrySailの三人のソロ活動という視点で比べるてみると、
モチョは明るくて可愛くてラブリーな曲調で売り出していて、
天氏はかっちょよい疾走感のある曲調が多く、
それに引き換えナンスは等身大のナンスという切り口のようで、
その差分もナンスの音楽性を引き出すスパイスになっている。
"
ああ 誰かのためになら
歩けるかな その先へも
今は自分しか救えない きれいなうた
くちずさみながら
ああ ああ ああ ああ あー
"
このさいごの「ああああ」の叫びまで含めて、
最後までナンスの良さに溢れている。

⑧そんなの僕じゃない。/下地紫野
発売日:2018/8/1
作詞:岩里祐穂
作曲・編曲:白戸佑輔
(TVアニメ「すのはら荘の管理人さん」エンディングテーマ)

下地紫野の歌声の理解への手がかり的楽曲。
下地紫野さんの歌声。言葉にできない良さがある。
それとともに「そんなの僕じゃない」の曲調や演奏もまた言葉にできない。
言葉にできない尽くしである。
第一印象はあんまりわからなかった。
この曲を理解する脳みその状態ではなかった。
でも気がついたときにはこの曲を購入して、1stシングルも購入していた。
この下地紫野さんの歌声を理解したいという一心で。でも理解はできていない。
しかし今でも言葉にはできないのだが、なぜか聴くごとに脳みそに浸透していった。
つまりその過程や論理は兎も角として、
2018年の声優曲に選出するべきみたいな直感が働いた。
そういうことでしか説明ができない。

⑨Wonder Shot/安野希世乃
発売日:2018/11/7(収録アルバム:笑顔。)
作詞・作曲:堂島孝平
編曲:北川勝利

安野希世乃×堂島孝平三部作の最終形という一曲。
2017年の声優曲に安野希世乃の「悲劇なんて大キライ」を選曲した。
どれも作詞・作曲:堂島孝平。
・戦術音楽ユニットワルキューレ「涙目爆発音」
・安野希世乃1stミニアルバム「涙。」収録曲「悲劇なんて大キライ」
・安野希世乃2ndミニアルバム「笑顔。」収録曲「Wonder Shot」
どれもアップテンポの曲調で非常に聴いていて気持ちいい。
安野希世乃さんが隠れ持つ、力強さ。
涙の後に、その涙に立ち向かい、感情を爆発させ、笑顔になる。
そういうストーリー性もあり、その最終形が「Wonder Shot」のように思えた。

というわけで2017年、2018年と安野希世乃さんの楽曲に非常に興味が出てきていて
・2018年11月17日(土)「ANIMAX MUSIX 2018 YOKOHAMA supported by ひかりTV」(横浜アリーナ)
・2018年11月18日(日)「笑顔。」リリース記念イベント 『~ぼくたちのヴィーナス~』(ゲートシティ大崎アトリウム)
・2018年12月22日(土)安野希世乃 1st LIVEツアー2018「きっと、ふわふわとしてる。」 【追加公演】 (舞浜アンフィシアター)
とライブイベントに足を運んでしまった。
横アリでのANIMAX MUSIX 2018での熱気もつかの間、
翌日にリリース記念イベントへ行ってしまうという声オタの性。
アルバム購入者にはハイタッチができる券がついていたため、
ほいほいとハイタッチまでしてきてしまった。
そこでのやり取りメモ。
====
「Wonder Shotとても良かったです。最高でした」といったら、
笑顔。のまま手を銃のようにかまえて小さく「Wonder Shot!(ズキューン)」と返されました。
====

そこで初めて聴いた「Wonder Shot」(3)。やはり生バンドで聴いてみたい欲がぐんとあがる。
「笑顔。」に収録されている
「ぼくのヴィーナス」(1)「ふわふわとしてる」(2)「ロケットビート」(4)
もリリイベでは披露していた。
むしろこっちのテンポ感のほうが彼女の雰囲気にマッチしているのは言うまでもない。
だがしかし、彼女にちょっと不釣り合いなように感じる「Wonder Shot」の曲も歌ってくれるのが
なんだかんだいって嬉しいのである。そういう嬉しさの感情がある。

「きっと、ふわふわとしてる。」 の追加公演ライブで、
以前のライブでファンたちに対して「あなたの好きな安野希世乃曲」をアンケートしたところ、
半数以上が「悲劇なんて大キライ」と答えたとMCで語っていた。
ファン層的にはやはり、ワルキューレ好きとアイカツ!好きで80%みたいな空気感があった。
そういう意味で「涙目爆発音」→「悲劇なんて大キライ」→「Wonder Shot」
の流れはファン層を意識しての楽曲であるのだろう。
今後、この流れを続けていくかは不明であるが、商業的には続けていくのだろうことが想像できる。
その反面で個人的には、
もっと挑戦的に安野希世乃さん自身のことを拡張してくれる楽曲を期待してはいる。
そういうポテンシャルはある気はする。
「ぼくのヴィーナス」や「ふわふわとしてる」は本当に聴いていて心地よい。
それと「ぼくのヴィーナス」のMVのビキニ姿の安野希世乃さんは必見なので、
そういう方向もなくはないだろう。(挑戦的で革新的で拡張的だった)

ライブの感想として、
個人的には「悲劇なんて大キライ」で一番好きなところは
”悲劇なんて大キライ あぁ~Getback!"の
”あぁ~”からの”Getback!”の”Getback!”の安野希世乃さんの歌い方。
その箇所のすべてを客席にマイクを向けて自分は歌わなくて観客に歌わせるスタイルだったのは、
なんかとってももったいないな、と思ってしまった。

「Wonder Shot」の話に戻ると、
堂島孝平作詞作曲曲の源流を残しつつ、安野希世乃さんの隠れた魅力を拡張している。
安野希世乃さんに「目を開きな、ちゃんと開きな、コンマ一秒見逃さないで」
「ワンダフルな場面を一緒になって作りたい」「こっちをみて、笑ってみせて」
と言われたら、そりゃ笑って笑顔。を魅せるしかない。
その風景をWonderなShotで心に焼き付けるから。
かなりライブ感を意識した楽曲で、そういう成長が感じられる。
「ライブは一体感!」というアイカツ!の文脈も混合させてきたことが
ライブを体感することで実感した一曲であった。

⑩夏目と寂寥/早見沙織
発売日:2018/12/18(収録アルバム: JUNCTION)
作詞:早見沙織
作曲:早見沙織
編曲:倉内達矢

早見沙織によるこの作詞力/作曲力。ひれ伏す。
「夏目と寂寥」に対して早見沙織はインタビューで以下のように語っている。

私の中では女の子の真っ直ぐさが秘める「ほのかな狂気」がテーマで、
裏タイトルは「狂気の沙汰」だったんです(笑)


「疑いようのないまっすぐさに秘められた恐ろしさ」を意識しながら書いたんです。
コード感としても、〈言葉では多分無理〉からのDメロ部分は
マイナーからメジャーにパキっと転調して間奏に入っていったりと、
楽曲でもその喜怒哀楽を意識しました。

そして以下の私の記述は、
早見沙織のアルバム制作インタビューや歌詞から読み取った私の妄想になります。
私は「夏目と寂寥」をこのように理解したということを残しておくだけのものです。

基本的には私の妄想である。
なんというか早見沙織自身、聴いている人が様々な受け取り方をしていいように
あえて表現を曖昧にしている部分が感じられ、
そういう余白の部分を楽しんでもらうため(そして自身が楽しむため)に制作しているように感じた。
受け手への余白も意識しながらの創作活動なのだろうということも含めて、
早見沙織の懐の深さを勝手に感じてしまう。

まずはタイトルの意味を追ってみる。
「夏目」は夏目坂通り(東京都新宿区)を指している。
 ※文豪夏目漱石の生家がこの坂の途上にあったことことから命名。
歌い出しには「眼差しにお月様 転がり落ちて夏目坂」とある。
夏目坂の坂のふもとは東京メトロ東西線早稲田駅前にあり、早稲田大学にも近い。
きっと早見沙織の大学生時代に何か思い出があったのではないかと想像してみる。
坂の頂上は都営大江戸線若松河田駅となっており、
例えば坂の上にある若松河田駅から早稲田大学へ歩いていくと、
まさに「転がり落ちて夏目坂」という歌詞と重なることになる。
「眼差しにお月様」ということからこの歌詞の歌い出しの時間帯では夜であることがわかり、
大学時代の彼女が夜に早稲田大学付近への向かうために
若松河田駅から見える景色とこの歌詞の主人公の気持ちを重ね合わせたのではないかと思う。
歌詞の主人公=早見沙織とする妄想も楽しいのだけれど、
彼女はインタビューの中で
”自分の中で距離的には近めだなあ、
と思っている曲で、自分が色濃く出てるかなあ、と思ってたりします
あえて外したことをやろうっていう意識はなかったですね。
楽しい気持ちも込めつつ、
ちょっとポップでコミカルな毒っ気も入っていて、それが楽しかったです。
ただ、こういう土壌に種を蒔いてみたことはなかったな、という感じはします。”
と語っている。
つまりかなり心理的には早見沙織に近いものがあり、
そこにはポップでコミカルな毒っ気も含まれて、それが楽しいと語っている。
もうそう語られただけでも声オタ的には嬉しい気持ちで満腹になる。
なので、歌詞の主人公=早見沙織というのはあんまり考えなくてもいいのだろう。
まーある制作のインタビューでも

(夏目坂通りは)よく通っているとか、
そういうわけじゃなくて、地名を入れたかったんです。
夜空の月とも似合う名前かなと思って、夏目坂にしてみました。
”と語っているので、
単に歌詞の主人公=早見沙織と想像しながら聴くがよろし、
と早見沙織がファンへ向けての茶目っ気/毒っ気と受け取るのが妥当であろう。

そして「寂寥(せきりょう)」は、ものさびしい様子。
学生時代の夜に寂寥を覚えるということと「狂気の沙汰」という元のタイトル、
そして歌詞の内容を追っていくと思春期の狂気にも似た恋愛感情というのが、
その表層から読み取れる。

このような妄想で歌詞を順番に紐解いていく。
”真っ直ぐに心を射抜かれて 色づいたの教えてあげたい”
 夜通しかけても まだまだ 表せない”
”もうあなたあなた 一番乗りごめんね どちらの道を向かいましょうか
 もう時は無情 過ぎ去るのが早いね 今晩はお別れよ じゃあねさようなら
 嗚呼 如何にしても二人これから”
で一番は終わる。
この歌詞の主人公は一目惚れして色づいて来ていることを
その意中の相手に教えてあげたい。
そういう恋心が芽生えてきている。
でも時は無情ですぐに人生の分かれ道がくるし、
すぐに”お別れ”が来てしまう。
そして別々の道を歩んでいくことになってしまい、
そこに「寂寥」が生まれていく。
二番の歌詞。
”そんな気はない
 気安く 触らないで
 色めき立つ狼藉者共”
”この道をお通し
 ちょっと 此処じゃない やだ やだ
 迂回しちゃうわ”
”もうあなたあなた
 邪魔しないでごめんね
 こんな姿で向かえましょうか
 もう何か違うの 噛み合わない関係
 調律し直しましょ ドレミファソラシド”
二番になると一転して、
今度は、気安く触って来てくる狼藉者たちを排除する歌詞となる。
その狼藉者たちとは同じ人生(道)を進みたくなく、迂回しちゃうわと語る。
そして彼女の人生にとってそれらの狼藉者共は邪魔な存在になってきている。
そう思うと意中の相手とも噛み合わない関係なのではないかと疑い、
でも歩み寄る気持ちがあり、調律し直しましょと語り、
世の色恋沙汰につきものな感情の起伏を感じられる。(誇大妄想)
それでも前向きに互いの気持ちを調律/チューニングしようという心持ちと
周囲の邪魔者を狼藉者共と罵る毒っ気はかなりの狂気さがあるように思える。
”言葉では多分無理
 この気持ち越えられない
 やぶれかぶれ 見切り発車”
しかしながら、お互いの気持を調律をしようとしても
狂気な色恋の気持ちが先行してしまい、
やぶれかぶれで見切り発車をしてしまう。
ここからピアノのリズムの良い間奏が始まっていく。
歌詞に感情のすべてを込めるのではなく、
ピアノの演奏でその感情の表現をしている。
まさに言葉にできない感情を音楽に乗せて表現しているとも換言できるし、
作曲:早見沙織の一つの表現技法と言えなくもない。
そして結末に向かっていく。
”愚かなこと わかっているのに”
”もうあなた あなた
 邪魔立てしてごめんね 違う道へと向かいましょうか
 もう千年先でも あなた 巡り会うわ きっとね
 今生のお別れよ じゃあねさようなら
 嗚呼 如何にしても一人これから”
結末は主人公の色恋沙汰に巻き込んで時間を使ってしまって(邪魔立てして)ごめんね、
という謝罪から入る。
そして「違う道へと向かいましょうか」と別れを切り出す。
だがそこは妙なポジティブさが働き
「千年先でも あなた 巡り会うわ きっとね」と謎の別れ文句を並べる。
だが、今回の人生では道は一生交わることはないと明言し、
「今生のお別れ」を告げるのである。
こう私の妄想で読み解いていくと、兎に角、
・「夏目坂」=大学時代
・「時は無情」「邪魔をする」=人生の時間を使う
・「どちらの道」「この道をお通し」
 「迂回」「違う道」=人生という道とその交差
という暗喩が多々にあふれている。
すなわち、
多忙な大学時代の早見沙織とその中の色恋沙汰と
そして道を分かち一人でその道を歩んでいくことを選択した人生
というのがファンの妄想として見えてくるようにも思える。
その想像の余白を残して楽しめる曲を仕上げてくることができるのが早見沙織なのである。

この歌詞と作曲からこれだけの妄想が想起されることは感嘆するべきだし、
称賛するべきだし、それが早見沙織なのであるという事実は受け止めなければならない。

この「夏目と寂寥」は「JUNCTION」のアルバムの中の
「メトロナイト」→「夏目と寂寥」→「夢の果まで」という曲順となっている。
「メトロナイト」はシティポップさがあり、
日常の断片的なことを軽快なリズムと共に表現している。
そこから色恋沙汰の日常の感情を切り取る「夏目と寂寥」が続いていき、
「夏目と寂寥」が「夢の果てまで」(劇場版『はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~』の主題歌で)
と続いていくよう。
そのため「夏目と寂寥」の"嗚呼 如何にしても一人これから”はまさに
歌謡曲っぽい歌い方を意識しており、
完璧に「夢の果まで」に繋がっていく。
これはきっと「メトロナイト」と「夏目と寂寥」の編曲を手がけた倉内達矢氏のアイディアではないかと思う。
「はいからさんが通る」と「道=人生」という親和性も高い。
「夏目と寂寥」は3分46秒と短めの曲ではあるが、
これだけ多くの情報量を一つの曲に込められる才能こそ早見沙織の作詞力/作曲力といえる。


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