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「お正月のお節」

師走は、恒例の大掃除からの餅つき、というルーティン。
わたしの大掃除の管轄は、キッチンをひたすらに。重曹スプレーを至る所に噴射して、金属タワシやボロ布で磨く。
子どもたちは2階とお風呂場の担当。夫は至る所を臨機応変に。
窓全開で布団も干して、おまけに犬も丸洗い。
この気持ちよさ&清々しさを、いずれ独り立ちした子どもたちは、きっとそれぞれ暮らす場所で味わうことになるんだろうなぁ。
「掃除するとしないんじゃ気持ちが全然違うね!」と、いっちょ前に、末っ子ですら青空を仰ぎながら言っている。

餅つきは毎年、馬の牧場で。餅米を蒸す、もうもうと湯気の立ち込む蒸篭で暖をとりながら、みんなぐるりと「縁起物だから」と1、2回はつく。大人と子どもを合わせると、ゆうに60人はいるだろうか。大所帯の餅つきだけど、現場をきちっと仕切るメンバーは手堅くて、心強い。そもそもの「役割」というものもあるのだろうけど、餅つき主要メンバーの気質性格に頭が下がる。

そのふたつの行事が終わると、ようやくお節の準備に入る。黒豆は30日から下拵え、あとはほとんど大晦日に一気に作る。

今年の献立
黒豆 黒糖を少し 丹波
柚子の入ったなます 島大根
パプアニューギニア天然海老のすり身たっぷりの伊達巻き
パプアニューギニア天然海老の酒蒸し
アフガニスタン在来アーモンドの田作り
山原鶏もも肉の鶏ハム 柚子胡椒
ドゥルワカシー 大宜味「あぜみち農園」の田芋
ターンムディンガク 生姜
軟骨ソーキ煮 八角風味
スーチキ (塩豚)
松前漬け
ミーバイ昆布〆
綱こんにゃく炒め煮 黒胡椒
たたき牛蒡
今帰仁グラの中華風
金柑蜜煮 金木犀の香り
坂越牡蠣のオイル漬け
栗渋皮煮 丹波篠山
どんこ椎茸旨煮

秋に作って置いたものを合わせると、以上の品数になった。
お節は、家族はもとより両親も友達も、みんなとても愉しみにしていてくれるので、こちらとしては作り甲斐がある。
内地の味に加え、田芋やソーキ、塩豚などの沖縄の味。さながらチャンプルーお節なのだ。
そして、年末に送って下さる出雲の王録酒造「丈径」と、別府の清水貴之さんの青竹のお箸が揃えば、「うちのお正月」が整う。
かれこれ二十数年変わらない風景。

にも関わらず、内心は「お正月」というままごと遊びをしているような気持ちになる。家紋の入った重箱にお節を詰める作業も、まだまだ恥ずかしい。
というのは、わたしの母は5人兄妹の末っ子なので、お節は全部、長男のお嫁さんやおばあちゃんが作っていた。重箱も、まったくの未使用のまま、一応長女であるわたしの手元にやってきた。すなわち、わたしのお節は自己流で、お節=受け継いでいる味、とは縁遠い。
所帯を持ってから(女もそう言うのかな)二十数年続いているお節作りとはいえ、回数にしたらたったの二十数回なのだ。
そんな、「年に1回」という希少な頻度が、「たどたどしさ」や「もどかしさ」を拭えない要因なのだろう。

「変わらないもの」や「受け継いでいるもの」への憧れはあるけれど、有形なものはいつかなくなることも知っているから、そうなると、やはりプロセスそのものが、「うちのお正月」なのだなぁ。

お節自慢から、とんだ与太話になってしまった。

沖縄は寒緋桜のつぼみがほころび始めている。旧正月には、花盛りとなるだろうか。




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