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書く仕事をしなくても、覚えておきたいこと|『書く仕事がしたい』読書感想文

この本は、文章術の本ではありません。
この本を読めば、みるみる文章力がついたりもしません。
プロローグより

「書く仕事っていいなあ」と思い始めた頃。

自分は文章が上手いのかわからなかった。だから、その道のプロから添削してもらいたい、ライティング講座とか受けてみようか、と調べ始めていた。でも、大きなお金を払う勇気が出ない。

その時、ビューティーライターのAYANAさんが、Instagramでこの本を紹介されていた。
書いて生きていくとはどういうことなのか。読めば、“ライターのリアル”のような部分を知ることができそうだった。
そもそも私は、書く仕事についてもっとちゃんと知る、そこからスタートしたほうがいいんじゃないか。そう思って、ずっと読みたいと思っていた本。

著者は佐藤友美さん。やわらかくて読みやすく、時折クスッと笑えたり、はっとさせられたりするところもある。
たしかに「文章術の本」ではない。
ライターとはどんな仕事で、どんな人と関わり、どんな生活を送るのか。仕事はどうやって取ってくるのか。続けていくために必要なこと。
特にchapter4『書く仕事に必要なマインド』、chapter5『とどまらずに伸びていくこと』は、ライターに限らず、さまざまな職業に通じる内容だと思う。


佐藤友美さんはこの本の最後に、文章を書くとはどういうことなのか、思いを綴られていて、
そこには、書く仕事をしなくても覚えておきたいことが山ほど書かれていた。

人は「表現すべき言葉を持っている」ことで、初めてそれを体験できるということだろうか。
エピローグより
その一方で私は、文章を書くことは、確実に「世界を狭める」ことだとも思っています。
エピローグより

自分の体験や考えを文章にする、つまり言葉で表現することで、より鮮明に記憶に刻みこみ、忘れないでいられる。それが「自分のもの」になる。
だから私は、何でも言語化したいと思っていた。

でも、言い換えるとそれは、実は怖いことなのかもしれない。

言葉にすることによって整理され、ぼんやりしていた輪郭はくっきりする。
一方、その輪郭からこぼれてしまったものたちは、おそらく、もう思い出すことはできないから。

それでも私は、ぼんやりしたままなんとなく忘れていくより、くっきりさせて、できるだけ覚えておきたい。
だから、情景を写真におさめるように、気持ちを細かく描写できるように、表現力を豊かにしたい。そういう文章が書きたい。


一通り考えて、私は「ライターになりたい」わけではないのかもしれないなと思った。

私は、好きなことを自由に、好きなタイミングで書くことが好き。
あわよくば、顔も知らない、でも、優しい人たちに少しだけ読んでもらいたい。反応をもらえたら嬉しい。
それくらいの気持ちかもしれない。

文章を書くこと、より良い表現を求めて言葉にしていくこと。それが好きなのは、たぶん間違いないのだけど。

ただ、ライターとして、自分ではない他の人の経験や考えも言語化すること、その責任まで考えていなかったし、それは私のやりたいこととは違うなあ、と思う。少なくとも今は、の話。


私は、漠然と「ライター」という職業に憧れていただけだった。
でも同時に、どうして文章が好きで、書きたいのか、自分の考えも整理された。

書くことが好きなのと、仕事にすることは違う。
この本を読んで気づくことができてよかった。

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