自分が見ている世界と、誰かへの優しさを疑う|『流浪の月』読書感想文(ネタバレなし)
『事実と真実は違う』
何度も語られるそのテーマに、私は自分のことが信じられなくなる。
序盤を読んでいて、自分がいかに幸せ者で、知らない世界のことは何も見ていないんだということを思い知らされ、つらかった。
物語の中で紐解かれていく、人の痛み、絶望、やるせなさ。自分が経験してきたものとはあまりにかけ離れた彼女の人生に、胸を痛める。けれど。
「これは自分が生きている世界とは別の話だ」と思うことで、私は胸を痛めるフリをして、つらさから逃れようとしているだけ。
途中からそう気づいたと