心配なのはアナタ

 小学部のある学年の担任をしているとき、お子さんの人数が多かったので学年担任も7名いました。

 お子さんの中に見えにくくて聞こえにくい、盲ろうで肢体不自由のお子さんがいたので、記号としての言語を伝える手がかりとして指文字を担任全員で使えるようにすることを提案しました。

 「覚えると(盲ろうのお子さんにために)役立つよ」では、なかなか仲間のモチベーションを上げることはできませんでした。そこで、学年の時間に「指文字タイム」を作って、「お題」のカードを子どもにひいてもらって指文字で表すというコーナーを作ることにしました。連続して5問正解で「卒業認定」にしたら仲間のモチベーションが急上昇。毎週、学年の時間の時に「指文字」に取り組むことが定着していきました。

 しばらく続けていくうちに、半分くらいの担任がめでたく卒業になりました(それでも毎週、子どもたちの前で「お題」の披露は続けていました)。

 そこで気がついたこと。担任が「お題」に答えているとき、まだ「卒業」に到達していない担任の担当のお子さんが明らかに心配していることがその表情からわかってきました。心配と応援の両方かもしれません。

 子どもたちの多くはお話ししたり指さすなどのコミュニケーションが困難でした。でも見て取れるのは心配そうな表情。あぁ心から心配して応援しているんだということが担任の間でも話題になりました。

 表情から読み取ることが難しいお子さんもいました。そのお子さんは自分の担任が「お題」に答えるためにみんなの前に出ると、全身を緊張させていることがわかってきました。担任がうまく答えることができると緊張が緩むように見えました。

 もちろんその様子を目の前で見ていた当の担任は、そのお子さんのことがより愛おしくなりました。

 私たち大人が子どもを支えていると思い込んでいましたが、子どもたちも一所懸命に心配したり支えてくれていたんだなと心から感じて、この仕事がより好きになりました。

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