その後出会うべき人
気付けば、道は深い藪に覆われていた。
薄い月の灯りだけが、私の指先を造形する。
自分を信じて前へ進むか、勇気を持って撤退するのか。
磁石のように対極する虚な栄光は、すでに
自分が詰将棋の玉であることを知らせはしない。
遠近感の無い声が内臓から囁く
《においを嗅ぐのだ…オマエハケモノダ》
《踏みしめなさい、あなたは既に木と成りつつある》
《差し出すのだ、歪みと羞恥が貴様の対価だ》
《ああ愚かなやつ!!声も出せないのか!!》
砂嵐と驟雨と太鼓と鐘の音が、ムカデのように雪崩れ込む。私は地を這いながら震える。
気付けば私は、右手を伸ばしていた。
《さあ、さいごに握手をするのだ...》
その手を握った瞬間、私は海の上にいた。
朝焼けの澄んだ赤紫が私を黒く映し出す。
漣が足首を揺らす。
北極星を見つけると、疲れた身体で
よろよろと
再び
行進を始めた。
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