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捧げもの (再編版)


一つの「歌」を捧げよう
鼻唄から始まる出鱈目でたらめのリズム
コーラスもないスコアもない
生まれては消える刹那のメロディを
坂道の上の公園に捧げる


一つの「数式」を捧げよう
人生は後ろ向きに歩いている
過去は積分 未来は一寸いっすん先すら見えぬ
今日を微分して外挿がいそうした 祈りの座標を
家へと帰る かぜかんむり達に捧げる


一枚の「絵」を捧げよう
心の中に秘めた草原と太陽と勇気が
時代の波濤はとうに削り取られていく
しかしなお色褪せない表現のつばさを
世界を宿し 熱く光る筆先に捧げる


一つの「ことば」を捧げよう
朝を歌い 昼を食べ 夕べに歩き 夜に安らぐ
老いも若きも 男も女も 海も山も
 歌い上げよ 魂を叩く喜びの歌を!
 歌い上げよ 魂を開く哀しみの歌を!
ついに巡り合った、喉の震えを
さりげなくこぼれる雫に捧げる


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