山ケ

山ケ(やまけ)といいます。どうぞよろしく!

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その後出会うべき人

気付けば、道は深い藪に覆われていた。 薄い月の灯りだけが、私の指先を造形する。 自分を信じて前へ進むか、勇気を持って撤退するのか。 磁石のように対極する虚な栄光は…

山ケ
5か月前
14

焦燥の詩

追跡者よ 聞こえるか 怖いおとが 聞こえたんだ 不思議なおとだ 賞賛の拍手と 憤怒の銃声が ぶつかりあって うたを歌っているんだ 川底に沈んだ包丁 その重い濁りと金切り…

山ケ
6日前
1

今日の全て

お前にあげるよ なみのおと やまのかぜ すべてのゆびが かなでるおと すべてのあしが よびだすかぜ あたまのなかに まきおこるんだ おと と かぜ が こえにならな…

山ケ
6日前
1

夕方のこと

夕方のことさ 薄紫の雲は まるで 私の心の壁を はるばると越えるように 高く高く 遠く遠い 明日で 人生が終わると 考えていた 私は あれを見て ああ 死にたいと 思った な…

山ケ
7日前
3

引出しに寄せて

幼いころ 宝物だった たくさんの シールたちが 今も引出しに 飾られていて それは 破れていても 日焼けしても 昔と変わらず 特別に 光を放つ それはまるで 世界で最も 優し…

山ケ
2週間前
2

スランプの詩

思い浮かばない 重くて浮かべない 言葉が出てこない 本も頭に入らない ねえどうして 気持ちがわるい 足元にはえた黴 通り過ぎてゆく 善意の人影 おかしいな ここはどこ 遠…

山ケ
2週間前
1

神社とパスタ

お賽銭より大切なのは 手を合わせ祈ることだ 乾麺のようにバラバラの 私という存在を 大きく一つに束ねるために

山ケ
2週間前
2

ゆめ

ゆめ せかいはふたつ それとも ほし いし きし あし しっているのかな ゆめのひみつを ねむり けむり こおり くすり りくつじゃないよ いたみはいらない まばたき と…

山ケ
1か月前
1

ほっきょくせいのうた

そらのおくで かぜがよんでる ゆうやけぐもが わたしをよんでる どんどん ららら どんどん ならせ どんどん ららら どん ららら とおくのほうで みているひとが わ…

山ケ
1か月前
2

ラベンダー

とある庭先に咲くラベンダーが とある星雲のように佇んでいるのを とある夕方の溜め息が見つけた そのとなりの さらにとなりの家の 庭の隅っこに 同じラベンダーがひとつ…

山ケ
1か月前
1

電話

(トゥルルルル... トゥルルルル....) ダイヤル音がよろめく誰かを探している 打ち上がった魚のように跳ねた 一つ眼のあなたの心電図を (トゥルルルル..... ガチ…

山ケ
1か月前
3

捧げもの (再編版)

一つの「歌」を捧げよう 鼻唄から始まる出鱈目のリズム コーラスもないスコアもない 生まれては消える刹那のメロディを 坂道の上の公園に捧げる 一つの「数式」を捧げよう…

山ケ
1か月前
2

ひとつ

ひとえ ひとつ ひらく ひみつ ひかり ひとつ ひらり ひかる ひとり ひとつ ひとみ ひみつ

山ケ
1か月前
3

30

30秒のカウントをくれよ ゴビ砂漠に埋もれた砂時計も計れよ ツンドラに凍れる水時計も計れよ 溜め息と決意を肺臓から取り出して リズムと興奮に心臓を強く叩かせよ 残り10…

山ケ
2か月前
7

全ての寝不足

深海へ潜るコンパスは革命を夢見る 息づく切り株の年輪は碑銘であり手紙 キリンのたてがみ、少女の三つ編み 平均値と平均律と平均台と全ての後悔 過剰と平常と冪乗と天井と…

山ケ
2か月前
2

よろしく人の

親の顔など知る余地すらない そんな生き物は世に多い 昆虫、魚貝類などは代表的だ 蟹や蟷螂は親の顔を知らぬ 兄弟は数千数百いるだろうが 皆同じ顔をしているのだ だから僕…

山ケ
2か月前
3
その後出会うべき人

その後出会うべき人

気付けば、道は深い藪に覆われていた。
薄い月の灯りだけが、私の指先を造形する。

自分を信じて前へ進むか、勇気を持って撤退するのか。
磁石のように対極する虚な栄光は、すでに
自分が詰将棋の玉であることを知らせはしない。

遠近感の無い声が内臓から囁く
《においを嗅ぐのだ…オマエハケモノダ》
《踏みしめなさい、あなたは既に木と成りつつある》
《差し出すのだ、歪みと羞恥が貴様の対価だ》
《ああ愚かなや

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焦燥の詩

焦燥の詩

追跡者よ
聞こえるか
怖いおとが
聞こえたんだ

不思議なおとだ
賞賛の拍手と
憤怒の銃声が
ぶつかりあって

うたを歌っているんだ
川底に沈んだ包丁
その重い濁りと金切り声

私の中で反響するんだ
顔の脂を流す早朝
その浅い呼吸と金切り声

今日の全て

今日の全て

お前にあげるよ

なみのおと
やまのかぜ

すべてのゆびが
かなでるおと

すべてのあしが
よびだすかぜ

あたまのなかに
まきおこるんだ

おと と かぜ が
こえにならない

しずくとなって
こぼれおちるもの

お前にあげるよ

夕方のこと

夕方のこと

夕方のことさ
薄紫の雲は
まるで
私の心の壁を
はるばると越えるように
高く高く
遠く遠い

明日で
人生が終わると
考えていた
私は
あれを見て
ああ
死にたいと
思った
なぜか堂々と
そう思った
心は不思議と
かすかに
晴れ晴れとして

引出しに寄せて

引出しに寄せて

幼いころ
宝物だった
たくさんの
シールたちが
今も引出しに
飾られていて
それは
破れていても
日焼けしても
昔と変わらず
特別に
光を放つ
それはまるで
世界で最も
優しい
勲章

引出しに
未来と過去が
隠れているのは
それが
生まれて初めての
創造性の目覚めで
それは
最期まで
誰彼の人生を
震わせる
喜びと哀しみの
振動である

スランプの詩

スランプの詩

思い浮かばない
重くて浮かべない
言葉が出てこない
本も頭に入らない
ねえどうして
気持ちがわるい
足元にはえた黴

通り過ぎてゆく
善意の人影
おかしいな
ここはどこ
遠くまで来た迷子
ポケットの中の
鍵穴のないかご

もうすぐです
リモコンは
役目を終える
手垢のついた
電源ボタンは
思い出して言う
毎日いつでも
ドラマだったと

神社とパスタ

神社とパスタ

お賽銭より大切なのは
手を合わせ祈ることだ
乾麺のようにバラバラの
私という存在を
大きく一つに束ねるために

ゆめ

ゆめ

ゆめ

せかいはふたつ
それとも

ほし
いし
きし
あし

しっているのかな
ゆめのひみつを

ねむり
けむり
こおり
くすり

りくつじゃないよ
いたみはいらない

まばたき
ときめき
かがやき
うそつき

きょうのあなたから
とどけものです

ゆめまくら
おもてうら
あさのそら
ぶたいうら

らららうたえよ
ゆめはおわらない

ささやきごえ
とびらのまえ
こうもりさえ
きこえるこえ

きょう

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ほっきょくせいのうた

ほっきょくせいのうた

そらのおくで かぜがよんでる
ゆうやけぐもが わたしをよんでる
どんどん ららら
どんどん ならせ
どんどん ららら
どん ららら

とおくのほうで みているひとが
わたしのともだち あしたもあえる
どんどん ららら
どんどん ならせ
どんどん ららら
どん ららら

おおきなドアが はてなくつづく
くぐりぬけると きょうがおわる
どんどん ららら
どんどん ならせ
どんどん ららら
どん ららら

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ラベンダー

ラベンダー

とある庭先に咲くラベンダーが
とある星雲のように佇んでいるのを
とある夕方の溜め息が見つけた

そのとなりの
さらにとなりの家の
庭の隅っこに

同じラベンダーがひとつあった

溜め息ではなく息を呑んでいた
何も言わず 夕日に照らされる
そのラベンダーは私自身ではないか

なんて頼りないのだ
どうしてそんな所に
降り立ったのか

紫と白の花が春風にゆれる
周りの草花と違う周

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電話

電話

(トゥルルルル... トゥルルルル....)

ダイヤル音がよろめく誰かを探している
打ち上がった魚のように跳ねた
一つ眼のあなたの心電図を

(トゥルルルル..... ガチャッ)

ぬるい風に乗せて腕を伸ばし続ける
どこにも繋がらない電話線
波の音が受話器から聴こえる

(ツー... ツー... ツー... ツー...)

コール音が奏でる一曲分の空間に
豚の腸のように詰めては膨

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捧げもの (再編版)

捧げもの (再編版)

一つの「歌」を捧げよう
鼻唄から始まる出鱈目のリズム
コーラスもないスコアもない
生まれては消える刹那のメロディを
坂道の上の公園に捧げる

一つの「数式」を捧げよう
人生は後ろ向きに歩いている
過去は積分 未来は一寸先すら見えぬ
今日を微分して外挿した 祈りの座標を
家へと帰る かぜかんむり達に捧げる

一枚の「絵」を捧げよう
心の中に秘めた草原と太陽と勇気が
時代の波濤に削り取られていく
しか

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ひとつ

ひとつ

ひとえ ひとつ ひらく ひみつ

ひかり ひとつ ひらり ひかる

ひとり ひとつ ひとみ ひみつ

30

30

30秒のカウントをくれよ
ゴビ砂漠に埋もれた砂時計も計れよ
ツンドラに凍れる水時計も計れよ
溜め息と決意を肺臓から取り出して
リズムと興奮に心臓を強く叩かせよ

残り10カウント
水平に脱力する鏡の湖面よ
そこに一つの月を浮かべよ
手を繋ぐ12進数と60進数の
親子が歩く足跡が月へと還る

残り2カウント
ぬるい虚空の風が頬を掠める
もはや身体は呼吸を要求しない
奇体にも大地を駆け悦ぶ鳥よ
私はい

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全ての寝不足

全ての寝不足

深海へ潜るコンパスは革命を夢見る
息づく切り株の年輪は碑銘であり手紙
キリンのたてがみ、少女の三つ編み
平均値と平均律と平均台と全ての後悔
過剰と平常と冪乗と天井と全ての寝不足

火よ、放つビリヤードの如き物理の変換よ
命に限りなく近い 燃える寸前の白髪よ
火の指先に隠された 朝の夢のにおいを
子どもたちは覚えているのだ
歌う代わりに目で歌う 動物のような視線
誰に教わらなくても 歌えよ その目の

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よろしく人の

よろしく人の

親の顔など知る余地すらない
そんな生き物は世に多い
昆虫、魚貝類などは代表的だ
蟹や蟷螂は親の顔を知らぬ
兄弟は数千数百いるだろうが
皆同じ顔をしているのだ
だから僕らの両親もきっと
同じ顔をしてるだろうと
思いながら春風を感じただろうか

本能の戒律に敬虔な彼らは
やがてメスは大きく育ち
オスは自らをメスの腹に捧げ
メスは自らの腹を子に捧げる
あらゆる水場が祭壇である
あらゆる葉っぱが褥である

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