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Freedom's Cup が素晴らしすぎた件

私がダンスを始めて3年以上が経った。
初めて垣間見たダンス業界はとても異質で独自の文化が発展しすぎていて、文字通り「未知との遭遇」だった。3年の間に元号が令和に変わったが、え、いま昭和時代?みたいなことにたびたび遭遇した。それでもこの3年くらいはどうやら過渡期だったらしく、SNS(主にTwitter)の活用が活発化して変化はあった。ポスターにチケット代が掲載されるようになったり、コンペのチケットがネットで買えるようになったり(改めて書くとすごいな。紙そのものが絶滅危惧種の時代なんだけど)。

でも、実際にパーティーや競技会を支えているのは古くからいる年配の生徒さんたちで、私はそういう場に行くたびに、SNSがいかに狭く小さな世界なのかを思い知った。とはいえ個人的にはSNSの力をそこまで信用していないので、ほぼ内輪で盛り上がっている(ように見える)ダンス界ならなおさら、SNSでは変わらないだろうと思っていて、現実は現実で楽しいことがいろいろあるからそれでいいやと思っていた。諦めも半分あるけどね。
業界のことはその世界でご飯を食べている人たちが考えればいいことで、私は基本的には趣味として自分が楽しいと思うことだけするというスタンスでいる。

ただ、SNS内で業界人が、一般社会からみればしごく当たり前の進化(?)を「私たち頑張ったよね」的に当事者同士でやたら褒め合ったり業界の愚痴を垂れ流したりしているのを見て、サークル活動じゃないんだからそういうの飲み会でやってください、と思ったことは何度か…結構あった。
それがすごく顕著に表れたのがコロナ禍だ。特にオンライン配信。それはダンス界にとっては、とても画期的なことだったのかもしれない。でもその状況は、他の業界にとっても多分同じだった。自前の粗雑な配信を「運営すごい!頑張った!」と自画自賛する姿をスマホの向こうから私はずっと冷めた目で見ていた。その頃私は仕事で、かなり大規模な業界初のオンライン化作業を夜を徹してやっていて、それは絶対に完璧なコンテンツでなければならず、ミスれば訴訟にも発展しかねない仕事だったのだけど、それでご飯を食べているからには当たり前だと思っていたからだ。
だから、業界のことは業界の人が考えてください、というスタンスの私でも、そのときは正直思いました。
「そういうとこだよ」って。(まあ疲れてたしね)

そして昨今の団体分裂問題。まあこれも業界でなんとかしてくださいよ、と思っているわけだけど、最近の、内情や不平不満を「意見」と称してSNSに垂れ流す業界人にはいい加減辟易した。この小さなサークルのSNSに何を期待してるの?同情?哀れみ?一緒に怒ってほしいの? そういうのを顧客の目にさらしてなんのメリットがあるの、サイマジョかよ、というのが私個人の率直な感想だった。いやサイマジョは大好きだけど、あれはあくまでもエンタメでフィクションでファンタジーだからね。(サイマジョというのはサイレントマジョリティーの略で欅坂46のデビュー曲です。『沈黙するのは総意と同じ。勇気を出してNOの声を上げろ』ってアイドルちゃんたちが歌ってるやつ。)
これについては異論は多々あるだろうけど、少なくとも私は「勘弁してくれ」と思った。あなたたち、夢を売る商売をしてるんじゃないのか。声を大にして言いたかった。

「そういうのは飲み会でやってください!!」

つくづく思いましたね。この業界は、生徒の、顧客の、「善意」を搾取していると。

そんなわけでようやくFreedom's Cup です。前置き長くてすみません。
ダンスでは好きなことしかしない主義の私も、さすがにJDC…というか自分の先生がかわいそうになった。どんどん選手が離脱していく団体の中で、他団体に締め出されて、あの飛天という大きな舞台で、それこそ身内だけで、どんな競技会をやるんだろう。想像しただけでガラッガラのスッカスカの会場を思い浮かべてしまう。自分が選手だったらと思うとつらい。つらすぎる。
なので、私史上初、自分が楽しむためではなく、先生のために観戦することにしました。(ちょっと私、えらくないですか?チケット3万円近くするんすよ…)

何ひとつ期待はしていなかった。なんなら、今回は非常事態だから甘んじて搾取されておこう、くらいの気持ちだった。1日目のライブ配信を観るまでは。(2日目のチケットだけ取ってました)
配信のクオリティも、コンテンツの中身も完璧だった。ずっとずっと無理だと言われていた著作権問題をクリアして配信されたショーダンス。これまで一握りの選手しか出られなかったセグエ選手権と違って、この選手がこんな踊りできるのか!という驚きもあったし、どの選手もここにすべてをぶつけてきた渾身の作品というのが画面越しにも伝わってきた。それを伝えきった配信もすごいよ。さすがプロだ。

私は団体の本気を感じました。顧客の善意に甘えず、不当に搾取せず、スポーツとして、エンタメとして完成された競技会を開催する、という強い意志を。ダンスを始めて、そういうものを感じた競技会が初めてで、いやもう侮ってて、ほとんど諦めてて、この業界もう駄目やなとか思っててごめんなさいと手をついてお詫びしたい気持ちです。

そりゃあね、スポンサーがついたから、お金があるからできたという人もいるでしょう。だけど大学祭でさえ学生がスポンサーを自分たちで探して開催してますからね。長い長いコロナ禍の中、雑で中途半端なことを一切せずに、ここ一番で勝負をかけてきたその気概に、私は敬意を表したいと思います。

願わくば、すべての選手が一堂に会するコンペをいつかまた観られますように。

おわり

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