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続・10/6の謎

ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』第7章の帽子屋にまつわる私見。

前回の記事はこちら↓

このとき私は「Write in thisはwriting-deskの洒落かも」などと書いていたのですが、何とその先がありました。
···半分冗談のはずだったんですが。

帽子の札に書かれた'In this style 10/6' のthis styleは「この書体」即ち筆記体を指し「10/6を筆記体で」の意味。
実際に書いてみると、10/6がtableに化けるという驚きの仕掛けでした。

10/6がtableに

今回はその続き。
Writeを加えて10/6をtableに変換し、さらにstyleをs-と-tyleに分割する(※1)と新たな意味が浮かんできます。

①Write in this→writing-desk(洒落)
②s-→'s→is
③-tyle→like(洒落、少し苦しい※2)
④10/6→table(筆記体)
これらを合わせると
'Writing-desk' is like 'table'に。

つまり、'In this style'を2重の意味で使ってみせる2段構えのパズルだったというわけですね。

※1. 単語の分割はJabberwocky第1連でも用いられた手法
※2. [t]≒[r]≒[l]、暗い[l]≒語尾の[k]で
[スタイル]→[スライゥ]→s+[ライク]

帽子屋が出題したのは「ravenと掛けてwriting-deskと解く、その心は?」という謎掛けでしたから、「writing-deskはtableに似てるよね(じゃあravenの方はどうかな?)」というのは99.9%答を言っているようなもの。
(あくまで出題者側から見てですが)

だとすれば、帽子屋の"I haven't the slightest idea."は「僕は100.0%の答は言わないよ(99.9%のヒントは出すけどね~)」くらいのニュアンス。
全く···。
この、おふざけ帽子屋め♪

あと、1897年版の序文にキャロルが付けた「作者による回答」にも「このときは本当に答は無かったのです」とありましたよね。
もしかすると、2つの台詞は繋がっているのかもしれません。

帽子屋の台詞と作者による回答。
文言は異なっても文の意味はほぼ同じと考えると「帽子屋は作者の分身」というほのめかしも含まれているような気がするのですが。

···さすがに深読みし過ぎですかね?




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