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【仕事の流儀】そのチームに理念はあるか?ビジョン・ミッション・バリューの策定とその必要性

チームの初期段階において、リーダーの果たすべき最も重要な役割は何でしょうか。考えられることは色々あります。行動力、決断力、判断力、夢を語る力、カリスマ、etc.。
僕が思うに、それは、組織の指針をメンバーに示し、判断や行動の拠りどころとなる方向性を明確にすることです。ここで示された方向性のことを「理念」と呼びます。

そのチームの存在意義を語れるか

会社という組織であれば、全体方針である会社の理念は既に経営陣によって策定され、その理念に沿って運営されていることが多いでしょう。理念を浸透させるため、リーダーからの語りかけや研修などの取り組みも行われているかも知れません。
では、社内の各組織単位、チーム単位ではどうでしょうか。この単位では理念が策定されていないことが多いのではないでしょうか。

全社向けに語られる理念が、全役職員に同じ方向性を持たせるために必要であることはいうまでもありません。ただし、会社は様々な役割の集合体であり、事業部門もあれば管理部門もあります。各部門やチーム単位の視点で見たときには、その組織の属性に則した、より具体的でメンバーがイメージしやすい理念が求められるものと考えます。

どのような単位であっても、その中核には必ず情熱の炎がともっていなければなりません。ただし、その情熱とはもちろん、体育会系の気合いの類ではありません。
メンバーが行動を起こす動機付けとなり、行動指針が言語化され、メンバーひとりひとりの胸に刻み込まれるもの。そう、理念の策定こそ、リーダーが組織を率いるにあたり、初期段階でなされるべき一大プロジェクトです。

チームが目指すべき理想の姿、あるべき姿はどのようなものか。
チームが果たすべき使命、存在意義は何か。
チームの行動基準、行動する際の判断基準は何か。
これらをそれぞれ、ビジョン、ミッション、バリューと定義します。

あなたが所属する、または率いているチームにおいては、これらが明確に定義されているでしょうか。定義されている場合、その理念はリーダーによってかみ砕いて語られ、メンバーの胸に刻み込まれて、各人の行動に反映されているでしょうか。
チームは日々着実に理想の姿に近付いているでしょうか。

僕が見ているチームでは、その発足直後に理念を策定しました。
内容は、それまで様々な業務経験を積み重ねる中で感じたり考えたりしてきたことをもとに、自分の信じることを言語化したものです。
以下は、固有名詞が含まれる箇所の言い回しを一部変えていますが、実際に使われている理念そのものです。

ビジョン
会社全体に関わる事務のプロフェッショナルとして、当社及びグループ会社の基礎を作り、会社の発展を継続的に支援します。

ミッション
会社全体の情報を収集・整理して、必要とする人がストレスなく情報にアクセス可能な仕組み作りを推進します。

バリュー

  1. 会社として必要な事務手続きを迅速に進行し、適切に管理し、明瞭に整理する

  2. 広く全体を見渡す視点を持ち、積極的かつ責任ある行動によりトラブルを未然に防ぐ

  3. 他部署に属しない全社横断的な事務管理業務を対応し、課題解決に貢献する

理念策定の経緯

僕が所属するのは、いわゆるバックオフィスと呼ばれる管理部門であり、チームで対応している業務は、見え方によっては単なる事務手続きとも捉えられがちな面があります。
たとえば、あなたのチームの仕事はなんですかと問われたときにどう答えるか。
「必要な書類を揃えて役所に提出する事務です」というのもある意味正しく、間違いではありませんが、僕が信じることは、自分のチームは会社の基礎を作る仕事だということ。そして、そのことをメンバーひとりひとりが胸に刻み、同じように信じて業務にあたってほしいと考えています。

メンバーが自分の業務を「会社の基礎を作る仕事」だと捉えることができたら、そして自分たちが会社を作っているのだと本当に信じられたなら、その業務品質は単なる事務と考えているときとは全く違ったものになるはず。

もし、自分が単なる事務手続きの担当だと思っていたら、何がしかの書類を役所に提出した時点で仕事が終わりになるかも知れません。でも、自分の役割が会社の基礎を作る仕事だと知っていたなら、その提出した書類の持つ意味を考え、その情報を必要とする人のことが見えるでしょうし、次にどんな行動が必要になるかが分かるはず。
たとえば、社内でその情報を必要としている人がいつでもアクセス可能な社内wikiを更新して、必要な人に情報が届く仕組みを整えようという発想になるでしょう。
さらには、許認可の関係によっては、書類の提出完了後に初めてその事実を知ったのではタイミングが遅いということも出てきます。その場合は、もっと早い段階で情報を共有する仕組みが必要だと気付く。では進捗状況についてよりリアルタイム性や速報性をもったメルマガを発行しようというように、関係する部署や人を見据えた行動が自然発生的に生まれてくることになるでしょう。

チーム運営を始めるにあたり、会社の理念と矛盾しない範囲でチームを貫く理念が必要だと考えて、策定することを決めました。
ちなみにこのとき、チームは自分を入れてもたったの3名。そんな小さな組織でよく作る気になったなと思いますが、そのことに迷いはありませんでした。

理念とは、決して絵に描いた餅ではありません。行動の基礎となる羅針盤であり、具体的にイメージ可能なものです。理念がメンバーにしっかり腹落ちしていれば、具体的な行動や施策が理念に沿った形で実現されていきます。

逆に、理念が浸透していない組織では、物事の判断や行動が行き当たりばったりとなり、一貫性がなく矛盾を生じる事態が多くなっていきます。様々な考えが幅広く議論されることはよいことではありますが、方向性なくあらゆる角度から検討された結果、何も決まらなかったり毎回方針がブレていたりすると、組織としての機能を失いかねません。

理念の策定後

理念は策定して終わりではありません。
理念さえあればすべてが綺麗におさまるような、そんな簡単なおまじないではないのです。
策定時にメンバーへ語りかけることはもちろん、機を捉えてあらゆる場面で繰り返し伝え、チームの血肉に変えていくことこそ重要です。
あるときはうまくいっていても、気が付くとずれてしまっている場合もあり、常に理念とチームの状況を見据え、浸透しているかを意識しておく必要があります。
また、もしリーダー自身がその理念を信じてメンバーに語ることができないのであれば、その理念は正しくないか、チームにふさわしくない可能性があり、再考が必要かもしれません。

さいごに

有名なTEDのスピーチをひとつご紹介します。
「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」

サイモン・シネック氏の講義です。感動のあまり、数カ月間、毎日ひたすらシャドーイング(英語を聞きながら重ねるように発音)していた時期があります。
何をするかではなく、なぜ必要か。そのチームはなぜ存在するのか。

チーム運営の成功には様々な要素があり、理念の策定はあくまでそのひとつに過ぎません。それでも、血の通った理念があるかないかでは、チームによって生み出される成果に圧倒的な差が生じます。
チームの存在意義や使命をひとりひとりが自覚できるか。このことが成否に関わる重要な部分であり、丁寧に手当てしていく必要があります。


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