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【ライブレポ】「BUMP OF CHICKEN TOUR ホームシック衛星2024」初日2.11@Kアリーナ横浜

※5000字超あります。ネタバレを含みますのでご注意下さい。

2024年2月11日、「BUMP OF CHICKEN TOUR ホームシック衛星2024」初日。横浜Kアリーナで開催された結成28周年記念日となるライブは、2008年「ホームシック衛星」のリバイバル公演。
まさしく時を超えて開催されたorbital period(公転周期)であり、ホームシック衛星であり、星の鳥だった。


総評

今回の印象を一言でいうならば、とにかく演奏が素晴らしく見事だった。
4ピースのバンドが長い時間をかけて練度と純度を上げ、醸成されてきたものが改めて再構築され、極上のフルコースとなって一つひとつの音が奏でられる。藤くんの伸びやかな歌声を会場の素晴らしい音響設備と照明が効果的に引き立てて、僕ら観客の五感に届けてくれた。

今回の座席は7LEVEL(7階)でした

前回、「orbital period」アルバム制作時に彼らが感じた「28」という特別な数字とテンションを、バンド結成28周年記念にリバイバルとして再演する。時を経て演奏されるバンドとしての完成度の高さに、全身で浴びるように聞き惚れた。

この日演奏された音楽は、僕が観てきた過去のライブの中でも特に秀逸だった。各パートによって紡ぎ出される一音一音の精度や一体感はもちろんのこと、藤くんの声が冴え渡っていて、体調も喉の調子もベストコンディションに整えてきた印象。
Kアリーナは音響が素晴らしいこともあるとはいえ、本当に自然体で各楽曲を自在に表現されていることは、会場のよさだけでは到底説明できない。アンプでミキサーをどんなにいじったとしても、もとの楽器本体が鳴っていなければ適切に増幅することは不可能なのだから。
ライブ初日という特別な状態にありながら、すべてが丁寧かつハイレベルで、心に響く歌声を届けてくれた藤くん、ヒロ、チャマ、秀ちゃんには真のプロフェッショナルを感じる。
音楽の純度の際立った高さ。これは、チャマがMCを担当することによって、藤くんがそちらにパワーを割くことなく歌うことに集中できたのもひとつの要因ではないかと考えている。

リバイバル公演について

ツアー初日の前夜に公開された藤くんの文章で今回のツアーの趣旨が語られており、その中でこの公演はリバイバル公演であることが初めて明確に記された。

それまで、今回のツアータイトルが16年前と同じツアータイトルを使った「ホームシック衛星2024」と決まっても、リバイバルという言葉は使われてこなかった。前回と同じタイトルだからといっても、前回公演と同様の演目となるかどうかは当日蓋を開けてみないと分からないと思っていた。
前年のツアー「be there」以降に発表された新曲「sleep walking orchestra」もあるし、そういった最近の曲も演奏されるのではないかという気持ちもあった。

でも、明言されたとなると話は違う。
リバイバルであるならば、演目は基本的に「orbital period」のアルバムを中心に構成されるだろうし、逆にいうとその世界観からは入りえない曲目も出てくる。選曲基準としては、公転周期や星の鳥の物語と親和性があり、宇宙、銀河、流星に近いところにあること、さらには2008年前後に演奏された楽曲が中心に選ばれるだろう。

数日前に公開された公演グッズラインナップからも、このツアーがリバイバル公演であることが強く裏付けられた。というのは、本公演グッズでは「orbital period」アルバムのブックレットに収録された物語「星の鳥」に登場する「王様」や「家来」などがモチーフとして多く使われているからだ。
ツアー前日には「orbital period」のブックレットまでツアー特設サイトで公開された。このツアーを本当に楽しむためには欠かせない要素でありつつ、最近BUMP OF CHICKENを知ったリスナーも置いてきぼりにしないための配慮と受け取った。

これらの情報を踏まえてのツアー初日。その答え合わせをしながら世界観に浸りつつ、28周年の記念ライブを堪能した。

今回あえてリバイバルの形でツアーを行うということは、周囲からは2008年との比較がなされるということ。16年の時を経てバンドの成長した今の姿をリスナーに見せたいという気持ちも、彼らの中には当然強くあると思う。
僕は2008年当時のライブには参加していないので比較できるものではないけれど、今回のライブが最高だったことだけは断言できる。

舞台セットについて

「ホームシック衛星2024」舞台セット

舞台を彩る世界観が素敵すぎた。
惑星の地面に建てられた交信用アンテナのような鉄塔。
舞台上手寄りの楕円形の照明群は宇宙ステーションを思わせる。時折高度や角度をゆっくりと変化させるその姿は、まるで宇宙空間に浮かんでいるよう。
中央のメインスクリーンには星の鳥がゆらゆらと羽ばたいて見える演出。

ライブ本編

特に記しておきたい個別の楽曲とライブ中のトークをいくつか。

「メーデー」

「星の鳥」から「メーデー」、そして「才脳人応援歌」に続く流れは激アツ。この3曲で心が完全に鷲掴みされた。楽曲のテンションの高さだけでなく、バンドの強い意思が提示され、それに観客が応えていく。
僕が前回彼らのライブに参加したのは2023年5月のさいたまスーパーアリーナ、「be there」ツアー最終公演。7カ月ぶりの再会への感動で、喜びに打ち震えた。
イントロが流れただけでどうして涙が出ちゃうんだろう。しびれるよ。

チャマのMCとメンバートーク

今回のライブでは、近年には珍しくMCがほとんどなかった。それでも特筆すべきこととしては、短いながらもMC回しをチャマが務めたこと。このことは記しておきたい。
MCは「ダイヤモンド」の後だったかな?
ここ数年、バンドの前面に出ることが少なく、ライブでは中間部の盛り上げ役であることが多かったチャマ。彼が今回のライブでMCを担当したことは、ついに「元通り」になったことが感じられて純粋にうれしかった。
その中で宣言されたのは、「ガンガン演奏をしていきたい」ということ。そしてこのライブは本当にその通りになった。

短いながらも、いくつかあったメンバー同士のトークを思い出せる範囲で残しておきたい。

チャマ「ヒロ、どう?」
ヒロ「あのね、初日は初日しかないんですよ」
チャマ「お、いいこと言ってる」
ヒロ「まあそれだけなんですけどね」
藤くん「ほら、会場が段々になってて彩り弁当みたいって話するんだろ?」
ヒロ「全部言っちゃったじゃん」

藤「チャマ、あんなに張り切って喋ってるけど、昨日ホテルの鍵失くしてて。可哀想だなぁ〜と思って、俺の鍵見せてあげた」
チャマ「それ何の意味もないから!」

次の曲の演奏後のやり取り。
藤「それで鍵あったの?」
チャマ「スタッフが楽屋の近くの廊下に落ちてたよって」
藤「よかった〜。俺も鍵見せた甲斐あったわ」
チャマ「だからそれ何の解決にもなってないから!」

「ハンマーソングと痛みの塔」

ヒデちゃんが刻む深いバスドラムから始まって演奏されたのは「ハンマーソングと痛みの塔」。
初めてストリーミングサービスでこの曲を聴いたときは、アルバム「orbital period」との関連を知らず、ブックレットの存在も知らなかったので、なんだか不思議な歌詞と雰囲気を持つ曲だなと思っていたが、ブックレットを読んでから改めて聞くと、全く異なる印象になる。
星の鳥に届くように箱をひたすら積み上げる王様の姿がこの楽曲に投影されている。自分勝手で滑稽に見える王様はどこまでも本気で、最初は動物たちの協力も全く得られなかったが、王様はやがて自分のプライドを捨て、頭を下げて協力を請い、動物たちは自分の得意な領域で力を発揮し始める。
王様が動かなくなってからもその意思は森全体に共有され、長年に渡り作業が引き継がれていく。単なる絵本では片付けられない壮大なお話。
物語と強烈にリンクするこの楽曲を初めてライブで聴くことができた。響くバスドラが体の芯にずんと刻まれる迫力で、演奏も歌声も最高のサウンド。

「アリア」

イントロの和音が鳴らされた瞬間、驚きのあまりツレと顔を見合わせた。
音圧の凄さや照明の切り替わりの迫力ももちろんあったけれど、とにかく最初の印象は、「えっ、アリアやるんだ!」という素直な驚き。
「アリア」のリリースは2016年で、「Aurora Arc」アルバムの収録曲。今回のライブで演奏されるにはちょっと新しすぎると思ったから。
ちなみに、2日目のセトリでは「望遠のマーチ」と入れ替えだったとのこと。いずれも「Aurora Arc」繋がり。「望遠のマーチ」も聴きたかったな~。

「銀河鉄道」

「銀河鉄道」は、ずっとライブで聴きたかった曲。
切なさが込められた名演。
演奏中、その音楽が自分の身体中に染み渡ってほしくて、すべてを受け止められるよう、意識的に身体の力を抜き、両手をだらりと下げ、手のひらを正面に向けた。
この大切な時間をすべてとどめておきたくて。藤くんが鳴らすギター、歌声、バンドのすべての音をどうにか全身で受け止めたくて。
この曲で語られる一連の物語は、映像が脳内に流れるような感覚があるよね。リボン付きのクマ。「僕」を見て怖気付く女の子。舌打ちする後ろの人。自転車を漕いで手を振る人。真っ赤なキャンディー。
それぞれの映像が見えた気がした。

アンコール前のMC

「バンドが28年続く理由ってひとつしかなくて。それは君が聴いてくれたからです。本当にありがとう。」
ありがとうは、こっちのセリフなんだわ…!

「BUMP OF CHICKENのテーマ」

アンコールを1曲終えて、藤くん。
「もう1曲付き合ってもらえる?今日しかできない曲みたいになっちゃってるんだけど」
そう言いながら始まったのが「BUMP OF CHICKENのテーマ」。
もともとそういうつもりで作ったわけではなかったと思うけど、「へなちょこバンドのライブに行こう」と歌われるこの曲は、これまでも周年記念日でたびたび演奏されてきた。
1年前の「be there」のとき、有明アリーナで初めて聴いたこの曲は、Kアリーナではなぜかもう何度も聴いてきた曲であるかのように、自分の身体に完全に馴染んでいた。楽しい~!

アンコール後のお話

アンコール2曲が終わり、メンバー3人がはけた後、藤くん最後のコメント。
「汗かいたでしょう。帰ったらお風呂入ってよく休んでね。おれもそうするから。バイバイ。またね。おやすみ。」
優しい声ではあるものの、今夜は短かった。
よくアンコール後に、藤くんが今回のツアーについてとか今の気持ち、最近考えている想いについて語ってくれることがある。でも今回のライブではそういった余韻はほぼなし。どんなに曲数を多くやってくれても、それとは別に藤くんの言葉を生で聞きたいと願う自分がいる。本当に欲深いよ。
「Aurora Ark」で、そういう魔法のような時間を知ってしまったからね。
でもライブは夢のような素敵な時間だったし、それは全く疑いようのないこと。

ホームシック衛星2024@Kアリーナ初日(2/11)セトリ

<本編>
星の鳥
メーデー
才悩人応援歌
ダイヤモンド
ハルジオン
ハンマーソングと痛みの塔
プラネタリウム
花の名
arrows
東京賛歌
真っ赤な空を見ただろうか
かさぶたぶたぶ
アリア
天体観測
銀河鉄道
supernova
星の鳥reprise
カルマ
voyager~flyby
<アンコール>
くだらない唄
BUMP OF CHICKENのテーマ

by BUMP OF CHICKEN

最後に

新しいとはいえない楽曲ばかりであるにもかかわらず、少しも古臭さを感じさせない、色褪せることなくキラキラした楽曲群。
初日にして、このリバイバルツアーの成功は確約された。
これからホームシック衛星2024ツアーに参戦される方は、アルバム「orbital period」を聴き、そのブックレットを熟読しておくことを強くお勧めしたい。もちろん、演奏そのものの力で楽曲に浸るだけでも十分に素晴らしいことには違いない。その上で前知識があれば、それで気付けたり楽しめたりすることが増え、このライブをより深く楽しめると思う。

前年のツアー「be there」がそうだったように、BUMP OF CHICKENはツアー中にバンドが進化を遂げていく印象がある。
僕が今回の「ホームシック衛星」に当選したのはこの初日のみなので、その進化を見届けられないことに残念な気持ちはあるものの、貴重なorbital periodに居合わせたことが無上の喜び。
4月の最終公演まで、どうか無事に駆け抜けられますように。


おまけ。
過去のライブレポはこちらからお読みください。


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