本阿弥光悦の芸術と出版事業
本阿弥光悦は書画から漆芸、陶芸に至るまで声望の高い総合芸術家である。先の「本阿弥光悦の大宇宙」展(東京国立博物館)で購った玉蟲敏子・内田篤呉・赤沼多佳『もっと知りたい 本阿弥光悦 生涯と作品』(東京美術)を読んで、とくに「出版事業と宗達との共作」の章に刮目した。以下、その出版活動のあらましを抜き書きしておきたい。
〈日本の出版文化史上において、文禄二年(一五九三)の『古文孝経』と慶長十三年(一六〇八)の『伊勢物語』の刊行は記念碑的な出来事とされている。(中略)近世初期の出版