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春学期時間割 - Texas大学ロースクール (2/2)

前回、履修登録に関するルール・ストラテジー・プロセスを見ましたので、今回ようやく具体的な時間割について書いていこうと思います。前回記事は以下をご参照下さい。

今学期も、先学期同様に、ただ単に時間割を確定するためだけに、結構な労力を割いており、そのことは、本記事の字数にも現れているのですが、LL.M.はたった1年と期間が短いため、一個一個の科目の持つ意義が大変重く、かつ、一度選んでしまうと学期の途中で変えるのはかなり困難なので、最初にしっかりストラテジーを組んで賢い決断をするというのは大事なことだと思います。

最終的な履修登録

既述のプロセスを経て、最終的には以下の科目を履修することにしました。

時間割風に並べると以下のような感じです。[1]

木・金がリラックスしているのは先学期同様です。3月の終わりにProfessonal Responsibilityが終了したあとは、水曜の夜から週末ムードをエンジョイすることができました。おそらく、ロースクール一般の傾向がそうなのだと思います。他方で、週の頭の月曜に3コマ入っており、毎週、月曜が山場だったような印象です。

各クラスの紹介

詳細については別途振り返りの記事を書こうと思いますが、簡単に履修科目を紹介しておきます。選択した理由についても、なるべく各種要件・ストラテジーとの関係でどのように捉えたかを中心に書いていきます。

Energy Finance Transactions (2 credits)

EnergyとFinanceが交錯する分野ということで、実務上の親和性がありそうだったので、選びました。Energyといっても、主なターゲットは、Renewableではなくて、Hydrocarbonです。米国におけるFinancial CenterがNew Yorkであることは疑いはないのですが、Oil and Gasの文脈においては、TexasをはじめとするOil Producing Statesで独自なファイナンス手法(様々な形のAsset backed lending)が発展してきたという歴史があります。このようなTexasらしさも魅力的でした。先学期に書いたPaperが、Oil and Gasを対象とする担保物権に関するものだったのですが[2]、この辺の現在進行形での興味関心をさらに深掘りすることも期待できました。講師は、Haynes and Booneというローファームの弁護士2名で、当地エネルギー業界でのネットワーキングに繋がりそうな気もしました。

なお、本科目は、Energy Law関連として、Concentrationの認証要件にカウントされます。

Bankruptcy (3 credits)

Bankruptcyは、Financeとの親和性はまあまあありますが、元々倒産自体に強い関心を持っていたわけではありません。むしろ、同じProfessorのSecured Creditを先学期とっていたところ、このProfessorであれば、新しい世界を見せてくれる、また、米国倒産法に関する知識体系を会得することができる、という強い信頼感から選んだ形です。また、先学期学んだSecured Creditとの連続性を意識できるため、勉強の成果をさらに飛躍させる効果も期待できます。加えて、先学期Bankruptcy Workshopに参加したあたりから認識していましたが[3]、最近の倒産実務では、TexasがNew York、Delawareあたりに続いて人気の倒産裁判所になっており、Texasだからこそ学べるという要素も期待できたように思います。

各種要件との関係では、Bar受験資格にカウントされる科目はかなり限られているところ、Bankruptcyはカウントできるので[4]、そのことも大きかったです。

他方で、先学期のSecured Creditの経験から相当の予習(Reading Assignment)を求められることは予想されており、春学期における手持ち時間の大部分をこの科目に持っていかれるという危惧はありました。ただ、逆に言うと、Reading Assignmentさえしっかり食らいついていけば、現場で途方に暮れるといういことはなさそうですし、時間をかけた分だけ得られるものも大きいということだと思います。また、私は倒産の専門家では全くありませんが、それでも完全にゼロから始めるというわけではなく、大学、司法修習、実務を通じて多少は倒産に触れてはいるので、そこまでストレッチ感もないように思いました。

Wind and Solar Law (2 credits)

こちらは、授業内容がもろに実務に影響しそうなので、先学期のときから狙っていました。先学期中に、他の学生の意見も聞きましたが、概ね高評価だったのでそれも大きかったです。また、ペーパーを書くことになるので、アウトプットも期待できました。講師(弁護士)が2人とも、Texasにおける再エネ実務の大家なので、そこからネットワークを広げていくことも期待できました。

要件との関係では、Concentration認証にカウントされます。

Professional Responsibility for LLMs (2 credits)

Bar受験資格を得るための必修科目です。ちょうど3月にMPRE(Multistate Professional Responsibility Examination)があったのですが(このMPREで一定のスコアを修めることがBar Admissionの要件)、MPRE受験日までに全クラスが終わるようにデザインされています。なので、授業内容もMPREでスコアを伸ばすことを意識したものになっており、コンテンツ、スケジュールいずれの面においても、1月から3月まで一気通貫で大変マネジメントしやすかったです。なお、こう考えると、MPREがFinal Examに相当するのでそれで十分では、とも思われますが、このクラス独自のFinal Examもなぜかありました。

Global Energy Transactions: Legal, Financial, and Scientific Perspectives (3 credits)

授業内容がエネルギー関係であり、とりわけCCSというTexasが世界に先駆けていると思われる技術がメイントピックであることもさることながら、他のスクール(Business School, Engineering School, Geoscience School)からも学生が集まってグループワークする(特定のプロジェクトに関する投資決定を想定して、レポート・プレゼンする)という授業スタイルが面白そうでした。それに伴い、講師陣も、各スクールから集まります。

なお、Energy関連としてConcentration認証にカウントされます。

落選科目

以上が履修登録科目の紹介ですが、最後に、履修するが迷ったが最終的には落選した科目についても書いておきます。こちら側についても触れることで、最終的に選択された科目がなぜ選択されたかの理解がさらに深まるように思います。

SMNR: Inside Texas Government: How It Really Works (3 credits)

数ヶ月Texasの諸々の政策をウォッチしていると、自ずと政治に興味が湧いてきます。秋学期の時点でProfessorからSyllabusを個別に送ってもらって内容に関心があることは確認でき、また、春学期直前に詳細な授業内容が公開されたときも、Professorの教育熱を感じ取ったので、是非とも履修してみたかったのですが、最終的には、毎週のReading Assignmentがとんでもない量であることや、30 pages超のペーパーという負担に耐えられるとは思えなかったことから、断念しました。

Property (4 credits)

先学期Secured Creditを勉強する中で、Propertyを理解しておくことの重要性を感じました。また、Bar試験対象科目でもあります。ただ、4 creditsというのは嵩張りますし、Professorの素性が不明だったこともあり、やめました。

Business Association for LLMs (3 credits)

Bar試験対象科目で、Professorのことも他の機会(Bar Prep)を通じて知ってはいました。ただ、あんまり授業内容に興味が持てなかったのでやめました。

Merger and Acquisitions (2 credits)

なぜだかはわからないのですがBar試験対象科目に指定されています。あと、実務家が教えてくれるのは良さげです。ただ、今更M&Aの基礎を教わるのもなあ・・・という気もしたのでやめました。

Oil and Gas(3 credits)

Texas LawをTexas Lawたらしめている最たるものがこの科目だと思いますが、同じProfessorの授業を他に取る予定なので(Global Energy Transactions)、やめておきました。

その他

他にも以下の各科目が少なくとも一瞬は検討の俎上に上がりましたが、諸々の理由で落選しました。

Corporate Finance、SMNR: Financing the Clean Energy Transition、International Business Litigation、Managing the Clean Energy Transactions、International Business Transaction、Energy Law: Regulating Energy Markets、Energy Development Policy、Texas Energy Law、Law of the US-Mexico Border

まとめ

本記事執筆時点では、すでにもう春学期も終わろうとしています。今振り返ってみても、学期当初の選択に大きな誤りはなかったように思います。今学期は、実は、先学期よりもcreditsは少ないですが、各クラスへのコミットが強かった分(また、それに加えて、卒業後の進路探しやら、その他ネットワーキングイベントやら、今学期固有の負担もあった分)、今学期の方がはるかに忙しい印象です。個別のクラスについての振り返りや、卒業後の進路探しなどのサブイベントについては、5月11日の卒業後にでも別記事にて書こうと思います。



[1] 履修登録のシステムにSchedule Plannerという便利な機能があって、これを使うとカレンダー形式の時間割も出力できるのですが、本記事執筆時点では、既にアクセスできなくなっています。したがって、自分で作ってみました。

[2] 先学期書いたPaperについては、以下の記事をご参照下さい。

[3] Bankruptcy Workshopについては、以下の記事をご参照下さい。

[4] Bankruptcy自体は、Bar試験対象科目ではないのですが、Secured Transactionが対象科目なので、その関連で受験資格にカウントすることが認められているのだと推測されます。

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