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Labの与信組織ってどんなとこ?

はじめに

こんにちは!Money Forward Labの太田兼資です。
以前、うぇるだんさんが紹介してくれたLabの紹介記事の続編、第二弾です。

今回はLabの与信分野の研究者へのインタビューを通して、チームの雰囲気や仕事内容をご紹介します。
インタビューの登場人物は、私含めこの3人です!

自己紹介

ーまずは、みなさんのマネーフォワードへの入社時期やその前の職歴・研究歴について教えてください。

久井
入社してもうすぐ4年になります。今まで所属した企業の中で一番長いんじゃないかな。
前職は金融機関で、個人向けローンのリスク管理、いわゆる予測モデルを作っていました。ローンを申し込まれた人に、お金を貸せるか貸せないか・貸せるとしたらいくらまでお貸しできるのかを、機械学習と数理最適化を使って予測するようなモデルです。
前々職では、金融や与信とは関係が薄いのですが医療機器を作っていました。

ー機械系からどうやって金融の分野にきたんですか?統計と関係があったとか?

久井
統計は関係ないですね、全然使ってなかったです。どちらかというと、機械工学や物理の方に近かったです。

太田
久井さんは大学では物理を研究されてましたね。物理学の世界からどうやって、与信の世界に来たんですか?

久井
機械設計は専門性がとても高くやりがいのある分野だったのですが、長く関わっているうちに、別の新しい分野にも挑戦してみたいという考えを持つようになったんです。また、新しい分野に挑戦するとしても、技術を活かす仕事をしたいという想いがありました。そこで思いついたのがクオンツで、金融領域になら別の技術の仕事があるんじゃないかということで、業種を変えました。
熱心にアピールした甲斐あって、未経験・異業種でも採用してもらってこの業界に飛び込みました。

ーなるほど、常に新しいチャレンジへの高い意欲をおもちの久井さんらしい考えに納得です!そんな久井さんのマネーフォワードへの入社のきっかけも気になります!?

久井
経験を重ねていくうちに、自分の成長の鈍化を感じはじめたのが主な要因です。仕事をしていく中でも常に成長実感を大事にしたいという気持ちがあり、更にチャレンジできる環境にいこうと、転職活動を始めました。
転職活動をする中で、マネーフォワードが募集している事を知り、今までの自分の経験を活かすことが出来そうな事業内容だと思ったんです。
入社当時は社員数が600人ぐらいでしたが、データ分析を担当している社員はまだ多くはなかったです。Labという組織自体もできたばかりで、わたしが初めての社員だったのにはびっくりしました。初期メンバーとは伺っていましたが、まさか1人目だったとは(笑) 

ーものすごいチャレンジですね、わたしも見習っていきたいです!さて、次は太田さんに聞いてきたいと思います。入社時期や前職でのご経験について教えてください。

太田
わたしは半年ほど前に入社しました。前職は新卒で入った会社で、地方銀行さまや貸金業者さま向けの与信モデルを作ったり、与信モデルを使ったコンサルタント業務を担当させていただいていました。
大学では文系の学際的な学部で、経済や統計について学んでいました。興味のベースは統計学にあったのですが、派生して政治や経済についても色々と勉強しました。

ー大学で勉強したことをそのまま仕事でも生かしたいと思ったんですか?

太田
そうですね。大学時代PythonやRをつかってデータ分析をやっていたので、その経験を活かして分析やデータサイエンスに携わることのできる企業で働くことを希望しました。その結果、採用していただいた企業の主要領域である与信分野に関わることになったという感じです。
僕が就職活動をしていた当時、「データサイエンス」という言葉はまだ注目されはじめたばかりで、もちろん求人も多くはありませんでした。
新卒で入社してすぐにデータサイエンスに関われることは稀で、数年間別の業務を経験したうえで、希望をすればそういう仕事もできるというような条件の会社がほとんどでした。そのため、自身の希望するキャリアを考えたときに、最初の数年をデータ分析以外の業務に費やしてしまうのはもったいないなと思い、入社直後からデータサイエンスに関われる企業を選びました

ーマネーフォワードへの入社の決め手は?

太田
実は、当初は別の部署の求人をチェックして応募したんです。しかし、経験的にはLabの与信チームが向いているのでは?と採用担当の方から提案いただいて、タイミングと自分の希望がすごくマッチしていたので、与信チームのメンバーとして入社を決めました。

久井:
長幡さんは、経歴がすごく面白いと聞いているのですが、とりあえず経歴を時系列で教えてください(笑)

長幡
実は、博士課程に在籍していた期間を含めて学生期間が長いんですよ。
大学だけで10年間、小学校とか入れると25年になりますね。キャリアをまとめると「学生」になっちゃう、みたいな話を友人としたことがあります。

ー四半世紀...すごい(笑)小学生時代のエピソードもすごく気になるんですが、今回は後半部分について掘り下げさせてください。

長幡
わたしは大学では、数学科に在籍していたんですが、数学科って就職にあまり道がなくて、数学の先生になるかシステムエンジニアかみたいな選択肢しかありませんでした。
結局長い学生生活を卒業して、システムエンジニアの道を選んだのですが、数年後には営業職に就いていました。システムエンジニアの仕事は社会のインフラ構築に関わることができ、縁の下の力持ち的なやりがいを感じられるものでした。一方で、同じ部署の法人営業は全社の中でもトップクラスに厳しい場所だと知られていたので、じゃあそこにも挑戦してみたいと手を挙げて異動希望を出しました。実際に、引きちぎれちゃうよっていうくらい揉んでいただきました(笑)。営業という仕事を通して学んだのは、コミュニケーション能力には、「社交性」と「情報伝達力」とがあり、仕事ではその両方を備えていることが重要だということです。わたしは学生時代から友人が多く、コミュニケーション能力が高い方だと思っていましたし、それが営業という仕事でも活かせると思っていました。しかし、実務において重要となる情報伝達力についての訓練は不十分で、結果的にかなり苦労することになりました。それでも、この経験から得られたことは、今の仕事にも非常に役立っていると思います。
このようなキャリアをつんでいた2015年ごろ、AIやデータサイエンスが世間で広く話題になりはじめました。統計学に明るく、エンジニアリングもできる人材が重要になってくる、という話が当時勤めていた会社内でもにわかに聞こえてくるようになりました。そこで、そういったスキルを学術的なレベルまで遡って身につけるのを狙って、学生に戻り、2016年には統計数理研究所(統数研)に入所しました。金融業界向けにSEの仕事をしていた経験があり、しかも数理統計を勉強している貴重な人材ということで採用してもらえました。

ーここまでの期間の中で与信に関わっている期間はありましたか?

長幡
博士論文を書いた2019年の2月、3月ぐらいまでは、理論寄りばかりで、モデリングやデータクレンジングをするような、いわゆる現場仕事の機会はあまりなかったですね。

ーどういったきっかけでマネーフォワードと出会ったんですか?

長幡
最初は、転職先の候補に入っていなかったんですよ。金融機関を中心に転職活動を行っていたので、転職エージェントがマネーフォワードを紹介してくださって、出会うことができました。
当時のわたしは、ずっと夢に思い描いてた研究結果の社会実装がなかなかできていないことに焦りを感じていました。また、社会実装する過程で、もっとも難しいのは実装やモデリングではなくて、人間同士の合意形成であると痛感することがあり、所属する組織選びにはとても慎重になっていました。マネーフォワードの皆さんと出会って、今後自分の理想を実現する組織として、ここならいける。という確信が得られたのでここで働くことを決めました。

左:長幡さん、右:太田

現在取り組んでいる課題

ーマネーフォワードの中で、今与信チームが取り組んでいる課題について教えてください。

久井
わたしたちが取り組んでいるのは、toB領域の新しい事業の中で、データを活用した新しい与信や審査技術を適用していくという仕事です。より賢くより良い審査ができるようにしていくことが大きなモチベーションですね。
そこで大きな課題となっているのはデータの少なさです。他の分野でももちろんなのですが、与信の研究を行ううえでも、データが少ないとやろうとしたことに対して制限がかかってしまうんですよね。
また、審査の通過基準をどうやって作るかという根本の課題もあります。
現在の審査基準が適正なのか、そもそも最初に審査基準をどうやって作るのかという議論もあって、「0から1」を生み出す必要がある点は与信研究の一番大変なところですね。

長幡:
そうですね。審査モデル構築を機械学習を用いてやったとしても特徴量の大部分は人間が作らなくちゃいけないですし、自分でその目的変数・説明変数を定義して、特徴量とそのターゲットの定義をどれだけうまくできるかでモデルの良し悪しが決まってしまうので、自分でうまい・自然な仮定を課していいモデルを作らないといけない、そういう世界ですね。

ーいろいろ課題が出てきましたが、チームとして、それらの課題に対してどのようにに取り組んでいるのでしょうか。

久井
より良いモデルを作るために、実際に審査している人と話をして、どういうことを見てるのか聞き、人が感覚的に処理しているものをどうやって定量的に落とし込んでいくのか、ということを行っています。

長幡
これはすごい正しいアプローチで、「人のモデリングをしたいのであれば、その人からまずヒアリングせよ」というようなことを仰っている先生もいらっしゃいます。徹底的にヒアリングして、自分が熟達者と同じくらいの密な情報を得なければいいモデルができませんよっていうことですね。

太田
そうですね、それは結構実践できていると思っています。審査を担当されている方も積極的に協力して下さっていて、両方の理解協力もあるから上手くすすめられています。

ー与信は、モデルを組めばすぐ実現できるでしょうとか、数学とか市場リスクのようにシミュレーション環境で簡単に実験・モデリングができそうだというイメージを持たれることも多いのではないかと思いますが、そこにすごく人の力が入ってるよという話は大変興味深いです。

久井
たしかに、データを機械学習に突っ込めば、いくら貸せるかという最終結果まで出てくるというようなイメージを持たれることも少なくないですが、現実はそう簡単にはいかないですね。
デフォルト予測のような予測をモデルでして終わりではなく、そこからどうやって審査プロセスに落とし込むのかというところが複雑です。予測結果を適用しようと思ったら、絶対に人がやってる審査の部分をきちんと理解する必要があります

太田
与信に対するとっつきにくさは、そういうところから出てくるのもあるのかと思います。ただ数学を知っていて、モデル組をめるだけでは不十分で、背景や業界の知識がないと、本当に機能するものは作れません。これが、審査をしている人としっかり連携する必要があるという話に繋がっています。

久井
もう少し具体的な取り組みをご紹介すると、わたしたちは現在、データを使ってどれくらいの企業リスクがあるのかを定量的に判断できないか、という問題にトライしています。企業リスクの近未来予測ですね。

長幡
その手段として、統計モデルや機械学習を活用しています。
わたしは、データ構造化というテーブルデータをどう作るかというアプローチでこの問題に取り組んでいます。データ構造化には目的変数であるYと説明変数X、それらを結ぶ関数Fの三つが大きな要素としてあります。
統計モデル・機械学習ではある関数Fを導き出し、その関数を通して予測値を得るのですが、先ほど話にあったように、与信分野ではこの関数を導き出すために使えるデータ(つまり説明変数Xや目的変数Y)が非常に少なく、データ数で関数Fを解決することはとても難しいんです。そのため、まず問題を解くために効果的なXとYを揃えるのがめちゃくちゃ大事。そうしないと話が始まりません。逆に、そこを揃えちゃえばほぼ勝ちという感じで考えています。
目的変数Y(つまりモデルの予測結果に当たるもの)を実問題に対してどれだけ上手に定義できるかで、インパクトや実現可能性がほぼ決まると考えています。
日本では貸倒れも起きにくいし、貸す側もリスクの少ない安全な判断をしがちなのでデフォルトが発生するケースがとても少ないです。
安全策をとりすぎて、本当はお金が巡ってもいいところに届かないという側面もあって、実は少し問題視されているんです。企業金融の円滑化は、日本としての課題と言われています。

左:久井さん、右奥:長幡さん、右手前:太田

今後の展望

ーみなさんで協力しながら、積極的に課題に取り組んでいらっしゃって素敵です!事業としてだけでなく、日本経済における課題解決に通ずる部分があることがよくわかりました。チームとして、マネーフォワードの与信領域で今後こんなことができると、もっとよくなるよね、というようなイメージもありますか?

久井
マネーフォワードには会計・請求書などいろんなジャンルのデータがあります。さきほど長幡さんが仰った説明変数Xになる候補はいっぱいあるので、それをうまく使って、短期的な予測ではなくて、もう少し先の未来に企業がどうなるかを予測できると良いんじゃないかと考えています。

太田
上位のissueとして、そもそも貸したお金は返ってくるのかという観点もありますよね。
人の手でやってるものを数式を使って効率化するというのもやりたいことの一つです。理想で言えば、全部モデルで解決できるっていうのがゴールだと思います。
Labの目標にもあるAutonomous Backoffice(バックオフィスの自律化)は、与信チームも上位概念として持ってますね。

長幡
ぼくは山岸さん(Labの自然言語処理の研究者)との共同研究を企画してみたいですね。分野を越境した研究者と一緒に研究してみたい。そういう体制で研究できると、異なる分野からきたXYを揃えた上でFまで導く。XとYの揃え方、からFの作り込みまで、分野を越境できたら他の研究者には真似できなくなると思っています。

太田
それこそ、様々な分野の研究者がコンパクトに集まっているLabの強みですね。

ー チームの雰囲気としてもLab内外の他のメンバーとコラボレーションしやすい雰囲気を感じますし、協業はとても良さそうですね。

久井
このチームは、雑談はそんなに多くないですが、議論はめちゃくちゃ発散します。

太田
ジャストアイデアでもどんどん話が膨らむ感じですね。ずっと話すことがあります(笑)
年齢が離れていても、すごく話しやすいっていうのが要因なのかな。

長幡
チームの雰囲気が固くないのは一つの特色かなと思っています。金融系のR&Dチームとしては珍しいなと思います。R&Dをやっていくうえで健全な状態だといえますね。役職とかそのバックグラウンドを気にせず、アイデアとしてどちらがいいかを議論すればいいだけっていう、それは非常に良い関係性かなって思うんですよね。

ー 最後に、与信チームの今後の展望をお伺いできますか?

久井
マネーフォワードは今、今後の成長戦略として、Embedded Financeという、金融サービスを単体で提供するのではなく、全てのSaaSに金融サービスを埋め込んでいくという方針を掲げています。まだマネーフォワードの中ではチャレンジし始めたばかりの領域ですが、そこにうまく適用できて、より幅広いサービスに使ってもらえるような与信、金融リスクを計量化する技術を着実に開発していきたいなと思っています。

前列:久井さん、右奥:長幡さん、左奥:太田

編集後記

記事作成者の太田は記事作成の初めての経験であり、何もわからない状態から書き始めました。こちらの記事を作成するにあたってインタビュアーから記事作成のご指導まで、Money Forward Lab の川上さん(うぇるだんさん)に多大なご協力をいただきました。こちらにて感謝を述べさせていただきます。


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