「せっかくだから、全体に配信する?」 上司の鶴の一声で配信解除率だけが上がった話
メールマーケティングエバンジェリストの安藤と申します。
世間はお盆という事で、ひとつ涼しくなるようなお話をお届けいたします。
「配信リストの中に ”クリックする人(潜在顧客)” の数が一定数いるのならば、セグメント配信でターゲットを絞るよりも、ターゲットを絞らずに一斉配信をしたほうが成果は最大化されるのではないか」というご質問をいただくことがあります。
確かにこの図の通りだった場合、セグメント配信では一部の潜在顧客の取りこぼしが発生しているように思えます。
”潜在顧客がすべてセグメントAに属するようにセグメントの見直しを行う" というのは当然正しいのですが、現実的にはそのようにきれいにセグメントを分けることは難しいでしょう。
では、なぜ一斉配信よりもセグメント配信のほうが成果が上がるのか、その答えは「メッセージの出し方」にあります。
ある自動車ディーラーの悲劇
ある自動車ディーラーを例に出します。
このディーラーでは家族向けのミニバンから、流行りのSUV、そして少し高価なスポーツカーと幅広いラインナップを取り揃えています。
このディーラーでは、今度の週末に新しく販売されたミニバン「サント」の試乗会を行うこととなったので、メルマガで告知をすることにしました。
この試乗会に参加した多くの方がその後商談に進むため、ディーラーも気合いばっちりです。
さっそく担当のAさんは顧客リストの中からミニバンに関心がある方をピックアップしてメルマガを配信しようと思ったところ、上司のBさんから「せっかくなんだから全部のお客様に配信しようよ。もしかしたらSUVとミニバンで悩んでる人もいるかもしれないしさ」と言われ、一斉配信へ切り替えることとしました。
出来上がったメルマガをBさんに見せたところ、「うーん、これだとサントを知らない人に興味が持たせられないんじゃないかな?もう少し具体的な方がいいと思うよ」と指摘を受けたので、以下のように修正することとしました。
BさんのOKも出たので配信したところ、開封率・クリック率ともに以前よりも下がってしまい、試乗会への参加者も前回より少なくなってしまったのです。。。
曖昧なメッセージはターゲットに届かない
この例自体は架空のお話ですが、実際に良くあるお話です。
Aさんが当初に書いたメルマガでは、ターゲットがミニバンに興味がある方だったためセールスポイントをダイレクトに記載することが出来ました。
しかし、上司であるBさんの指示によりターゲットを広くしたことで、メッセージの内容は「興味がある人」から「誰でも通じるもの」にする必要が出てきたため、新型サントの変更点をダイレクトに伝えるのではなくミニバン自体のメリットを訴求することとなったのです。
これにより、メッセージ自体の "とがり" がなくなってしまったことが成果が下がってしまった要因です。
もっと具体的な点で言うと、メールの件名の長さの問題です。メールを受信するソフトウェアではメールの件名は15~25文字までしか表示されず、以降の文字は省略されてしまいます。
特にBtoCサービスの場合、メルマガ読者はほぼスマホで閲覧しており、スマホのメールアプリで表示される件名は15文字前後とさらに短くなります。
つまり、「誰でも通じる」件名にしてしまったことで、件名は説明的になり伝えたいポイントが曖昧になってしまったのです。
実際に件名を15文字で区切ると、当初のメルマガと修正後のメルマガの件名は以下のようになります。
誰にも通じるメルマガは、誰にも響かないメルマガになってしまうのです。
そして更なる悲劇
今回のメルマガは開封率・クリック率ともに数値は前回より下がってしまったのですが、唯一上がった数値があります。
それは「購読解除率」です。
今回、配信リストにいる全体に配信したことで、スポーツカーのメルマガを受け取っていた層から多くの購読解除が出てしまいました。
自分に興味のないメルマガが来ていたら購読解除をするのは当然ですよね。
本来であれば、セグメント配信に戻すところですが、上司であるBさんの下した判断はまったく別物でした。
「配信リストが減っちゃうから、配信頻度を落とそう」
そしてこれまで週1回配信していたメルマガを月1回に頻度を落とすことになり、成果はどんどん落ちていくのでありました。。。
セグメント配信はメッセージを明確にするためのもの
なぜセグメント配信が重要なのかという理由はお判りいただけましたでしょうか。
今回の例のようにジャンル(ミニバン・SUV・スポーツカー)が明確に別れるものの場合は、一斉配信よりもセグメント配信を選択して、メッセージを明確にすべきです。
一方で、ジャンルは同じだが顧客の温度感でセグメントを分けているというような場合については、セグメントの分け方自体の成功パターンを見つけていないうちにメッセージの出し分けをしてしまうと、取れるはずだった成果を落としてしまうことにもなりかねません。
この場合は、セグメントの分け方が確立するまでは、成果に直結するメッセージは出し分けずにどのセグメントにも配信した方がいいでしょう。
大事なのは、「もしかしたら」や「念のために」と言った曖昧なものから成果を求めることではなく、確実にメッセージが響く相手に対して伝えるべき内容を配信することです。
今回の自動車ディーラーのお話は架空のお話ではありますが、本当に多くの企業で同じ罠にはまっているのを見てきました。
ぜひ、みなさんは同じ罠にはまらないようご注意ください。